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限界離婚

新たな出発

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今日は鈴奈の退院日だった。

良は、病院へ鈴奈を迎えに行く。

義父と息子も病院へ来ていた。

その場で良は、妻と相談をした。

「母さんとは縁を切るつもりだよ。」


鈴奈は、驚き言う。
「そんな事が出来るの?」

良は言った。
「今でも母さんとは連絡が取れない。向こうが行方を知られたくないのだろう。離婚し生家に帰った事になっているが、確認したら生家にいなかっよ。母さんは家から出ていく時に、通帳や貴金属を持ち出した。鈴奈や勇太への暴言もカメラに残っている。この後警察へ相談に行くつもりだよ。だから準備が出来たら迎えに来る。また一緒に暮らして欲しい。俺は鈴奈と勇太の事が一番大事だ。」

鈴奈は、少し笑って言った。
「うん。考えとくね。ありがとう。良くん。」






良は、警察署へ行った。

父が録画していた映像のコピーデータと、数十枚の印刷した写真を持って行った。

警察官は親身に話を聞いてくれた。

父が倒れた後母が貯金通帳や貴金属を持ち去った事、母の妻だけでなく、孫や祖母に対する暴言や無関心、母が原因で妻から離婚を要求されている事。父は母に害されたと今でも言っている事。

写真には、父が倒れた後、母が父を足蹴りにしている姿や、自分の食事だけを買ってきて、勇太がそれを食べようと近づくと、勇太を叩く姿、家の中を荒らし止めようとする祖母を突き飛ばしている姿が映っていた。

警察官は同情したように言った。
「大変でしたね。ですが家族間の問題ですから、逮捕する事は難しいです。今もお母様とは連絡がつかないのでしょうか?」

良は言った。
「そうです。正直預金通帳や貴金属を返して欲しい気持ちがありますが、それよりもう母とは関わりたくないという気持ちが強いです。父も妻、息子までそう言っています。実は、引っ越しする事を考えています。それで、証明書を頂きたいのです。」

警察官は頷いた。
「そうですね。ご家族が落ち着くまでそれがいいかもしれません。」





父は2カ月間入院して無事に退院した。

父と相談し、丸田家の自宅は処分する事になった。広大な敷地を持つ丸田家はそれなりの金額で売る事ができた。

祖母を引き取った麗奈が管理者を勤める高齢者用住宅に、父も入居する事になった。

祖母は、食事サービスや、入浴介護、家事援助等沢山の介護福祉サービスを利用し生活しているが、父は、毎月の入居料だけ支払い、自由に生活するつもりだと言っている。

倒れた時は、状態が悪く後遺症が残るだろうとの説明だったが、2か月間の入院で父はほとんど元通りの生活ができるまで回復した。運動麻痺や言語障害もなく、以前と変わらない父に見える。やや注意力が落ちていると高次脳機能障害の検査をしたリハビリのスタッフから説明された。念の為、車の運転は控える事になった。

良は鈴奈と勇太を迎えに行き、祖母と父が入居する高齢者住宅と同敷地内にあるマンションに引っ越しをした。その区域は、試験的に運用されている町になっている。

敷地内には、公園が広がり、町を取り囲む塀は許可証を持つものでなければ出入りができない。
駐車場は地下にあり、地上では交通事故にあう危険もない。

小さな子供達がいつも駆け回り、認知症がある人も安全に町の中を散歩ができる。

買物は宅配サービスが充実しており、必要なら妊婦や子育て世帯も家事援助サービスを利用する事ができる町になっていた。



良は鈴奈を迎えに行った。

元々一人暮らしの養父も仕事を止めたら、一緒の高齢者住宅への入居を検討しているらしい。

良は鈴奈に言った。
「鈴奈、もう一度一緒に暮らそう。」

なんどか新しい生活環境を一緒に確認し、母の京香へ、良が強固な対応を取った事で安心したのか、鈴奈は、良と再び暮らす事に前向きになっていた。


最近、また明るい笑顔を見せるようになった鈴奈は言う。
「ええ、良君。よろしくお願いします。」




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