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グランの腕に手を添えて、ミラージュは謁見室に入って行った。

正面の奥の王座には、国王が座っている。国王は金髪の壮年の大柄な男性だ。国王の右隣には、長身で細身の王弟が佇み、左隣には王妃が座っていた。

謁見室の中央の朱金の絨毯をグランと一緒に進んで行く。

王妃の後方に佇んでいる女性は、侍女服に身を包んだルルアーナだった。

ルルアーナの顔色は、以前に比べかなり良くなったような気がする。薄紅色の頬にふっくらとした体格。ルルアーナは、ミラージュを見て微笑むと、国王の方を見つめていた。

グランは、王座の前で最敬礼を取り、国王へ挨拶をした。

「陛下にご挨拶申し上げます。ご帰還をお待ちしておりました。」

ミラージュもグランに合わせて礼をする。

「久しぶりだな。王太子よ。其方が婚約者のミラージュ嬢か?」

「はい。ミラージュ・ローニャと申します。」

「ははは。息子がこんな美人を選ぶとは思っていなかったな。どんな令嬢にも興味を示さないから、てっきりわしは……」

「父上!」

「今日は、喜ばしい日だ。やっと王国へ戻って来たと思えば、複数の祝い事が待っているとは。だが、問題もある。先に話しをつけなければな。」


その時、謁見室の重厚なドアが開かれた。






銀髪のギガリア公爵は、眉間に険しい皺を寄せて不機嫌を隠そうとせずに、謁見室へ入って来た。王妃の後ろに佇むルルアーナを凝視したかと思うと、王座へ向かって歩いてきた。

「陛下のお呼びで参上いたしました。それにしても王妃様。なぜ我が娘がここにいるのですかな!私が必死に探している事を知っておられるでしょうに。我がギガリア公爵家を欺くとは、いくら貴方様でも覚悟はしていただきたい。」

ギガリア公爵は、鋭い紫眼で王座を睨みつけた。

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