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イリーナのリム商会は追い詰められていた。

イマージュ皇女が、懇意にしている貴族や取引先に、リム商会の品を購入しないように伝えているらしい。急にキャンセルが増え、膨大な量の宝石が返品されてきた。このままだと、リム商会は立ち行かなくなる。

イマージュ皇女の嫌がらせだという事は分かりきっている。

噂に聞いていたはずだった。イマージュ皇女が、オージン・マクラビアンと婚約する予定だという事を知っていたのに、イリーナはオージンと何度も会っていた。

イリーナには、もう家族がいない。イリーナを追い出した母や妹、元婚約者の事を家族だと思う事ができない。

寂しかった。

ただ、オージンと過ごす時間が心地よくて、どうしても強く拒否する事が出来なかった。

リスクを感じながら、オージンと親しくしてしまった結果だった。







イリーナが、店舗兼借家で落ち込んでいると、店の呼び鈴がなった。

ここ数日は、誰も寄り付かなくなった店なのに、、、







「イリーナ。すまなかった。まさかイマージュ皇女がこんな事をするなんて、、、」

尋ねてきたのは、オージン・マクラビアン公爵子息だった。今回の事の原因が、彼と皇女様の関係にある事は分かっている。オージンとは縁を切らないといけない。そうでないと、帝国での商売は諦めるしかない。

イリーナは、オージンと会えなくなる事を想像して思わず、涙がこみ上げてきた。


(ああ、私は、いつの間にかオージンの事が、、、)


オージンは、そんなイリーナを見て慌てたように近づいてきた。

「イリーナ。君が涙を流すほど大変な事になるなんて、俺は君の力になりたい。実は今日は、提案があって来た。」

イリーナは、被りを振る。

(そうじゃない。私は、貴方の事が、、、、でも、この気持ちを伝えてどうするの。伝える訳にはいかない。彼も皇女様も、私だって困る事になる。)



オージンは、私の前に跪いて言った。

「俺のパートナーになって欲しい。愛おしいイリーナ。」


イリーナは、驚きオージンを見つめる。


(パートナー?結婚?こんなに急に?でもオージンとなら、ずっと一緒にいたい。グロッサー男爵家もリム商会の事も忘れて、オージンと一緒に、、、)














オージンは真剣な表情で、イリーナに言った。

「皇城舞踏会のパートナーになって欲しい。きっと君の商会を気に入ってくれる貴族が沢山いるはずだよ。俺に紹介させてくれ。」

イリーナは、顔に熱が籠るのを感じる。イリーナは両手で顔を隠して小声で言った。
「パートナーってそっちの?恥ずかしいわ。」


オージンは戸惑ったように言う。

「イリーナ大丈夫。熱でもあるのかい?首まで赤いよ。以前からイリーナに舞踏会のパートナーを申し込み、帝国貴族を紹介するつもりだった。でも、イマージュ皇女と君が仲良くなったと聞いてどうしようか迷っていた。何度も断られているのに、未練がましく感じるかもしれない。でも、舞踏会へ行くのは君や君の商会にとっても、メリットが高いはずだよ。お願いだ。イリーナ。」

イリーナは、少しだけ手の指を開き、その間からオージンを見ながら頷き言った。

「はい。お願いします。」

オージンは、満面の笑みで嬉しそうに微笑んでいた。

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