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旅立ちの準備
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イリーナは、雨が激しく降る中、グロッサー男爵領の町へ一人歩いて行った。
イリーナに残されたのは最後に父から貰った金貨だけだった。
グロッサー男爵家に滞在するときは、イリーナは貴重品を必ず身に着けるようにしていた。
屋敷には、旅行鞄に数着の衣服を入れたまま置いてきてしまった。
婚約者のリカルドは、イリーナの事を強欲だと言ったが、イリーナからなにもかも奪ったのは妹のルアンナの方だ。
あの屋敷には、イリーナの物はもう何も残っていない。
数時間かけて、着いた町でイリーナは、新しい服を買った。
着ていた喪服は、雨と泥に濡れ使い物になりそうにない。
洋服店の店員はイリーナに同情的だった。
「まあ、貴方どうしたの。こんなに濡れて。」
イリーナは言った。
「ごめんなさい。店が汚れますよね。服を頂けませんか?お金ならあります。」
店員は言った。
「いいよ。こっちにおいで、体を温めた方がいい。あんたに合う服を用意しておくから。」
店の浴室を借り、体を温める。店員は、紫色の旅行服を用意してくれていた。
それに着替えて、イリーナは目の前の鏡を見る。
長い銀髪で、大きな藍色の瞳、紫色の旅行服を身に着けたイリーナがそこにはいた。
もうグロッサー男爵家を名乗る事ができない。
嫡女でもなくなった唯のイリーナ。
家族も婚約者も失ったイリーナ。
イリーナが在籍するザンジ国立学園での単位は全て取り終えていた。
ザンジ国立学院には、優秀な生徒を選出し留学を促す制度がある。
イリーナも資格者に選ばれていたが、グロッサー男爵家の嫡女な為、断っていた。
今は、すべてが妹の物になったとしても、、、、
必ず返してもらう。
その為にも、イリーナは独自の地位を確立する必要があった。
店員へ代金を支払い、イリーナは雨が止んだ石畳の道を歩き、乗合馬車乗り場へ向かった。
帰ろう。
そして、いつかあの人達を見返してやる。
イリーナはザンジ国立学院へ向かう馬車に乗り込んだ。
ザンジ国立学院では、友人のナンシーが出迎えてくれた。
「お父様の調子は大丈夫。思ったより早かったわね。」
ナンシーは、イリーナの親友だ。隣国のジン帝国の侯爵令嬢だった。水色の美しい髪に澄んだ緑色の瞳の美しいナンシーに憧れている学院生も多い。
イリーナは言った。
「亡くなったわ。父が亡くなると同時に母と妹に家を追い出されたの。婚約も破棄されたし。」
ナンシーは言った。
「まあ、イリーナ程優秀な人はいないのに、そんな事が!」
イリーナは被りを振る。
「もう、諦めたわ。だけど、このままじゃ終わらせない。」
ナンシーは言った。
「貴方には私がついているわ。それに、イリーナが婚約破棄したと聞いたら、オージンが喜びそうね。」
イリーナは言った。
「オージンが?どうして?」
ナンシーは呆れたように言う。
「あら?気がついていなかったの?オージンもまだまだね。それより、留学を引き受けるのでしょう。一緒にジン帝国へ行けるのよね。」
イリーナは言った。
「ええ、地位を確立させて、帰ってきたら妹を追い出すつもりよ。これからもよろしくね。ナンシー。」
イリーナは、父が亡くなってから初めて笑った。
イリーナに残されたのは最後に父から貰った金貨だけだった。
グロッサー男爵家に滞在するときは、イリーナは貴重品を必ず身に着けるようにしていた。
屋敷には、旅行鞄に数着の衣服を入れたまま置いてきてしまった。
婚約者のリカルドは、イリーナの事を強欲だと言ったが、イリーナからなにもかも奪ったのは妹のルアンナの方だ。
あの屋敷には、イリーナの物はもう何も残っていない。
数時間かけて、着いた町でイリーナは、新しい服を買った。
着ていた喪服は、雨と泥に濡れ使い物になりそうにない。
洋服店の店員はイリーナに同情的だった。
「まあ、貴方どうしたの。こんなに濡れて。」
イリーナは言った。
「ごめんなさい。店が汚れますよね。服を頂けませんか?お金ならあります。」
店員は言った。
「いいよ。こっちにおいで、体を温めた方がいい。あんたに合う服を用意しておくから。」
店の浴室を借り、体を温める。店員は、紫色の旅行服を用意してくれていた。
それに着替えて、イリーナは目の前の鏡を見る。
長い銀髪で、大きな藍色の瞳、紫色の旅行服を身に着けたイリーナがそこにはいた。
もうグロッサー男爵家を名乗る事ができない。
嫡女でもなくなった唯のイリーナ。
家族も婚約者も失ったイリーナ。
イリーナが在籍するザンジ国立学園での単位は全て取り終えていた。
ザンジ国立学院には、優秀な生徒を選出し留学を促す制度がある。
イリーナも資格者に選ばれていたが、グロッサー男爵家の嫡女な為、断っていた。
今は、すべてが妹の物になったとしても、、、、
必ず返してもらう。
その為にも、イリーナは独自の地位を確立する必要があった。
店員へ代金を支払い、イリーナは雨が止んだ石畳の道を歩き、乗合馬車乗り場へ向かった。
帰ろう。
そして、いつかあの人達を見返してやる。
イリーナはザンジ国立学院へ向かう馬車に乗り込んだ。
ザンジ国立学院では、友人のナンシーが出迎えてくれた。
「お父様の調子は大丈夫。思ったより早かったわね。」
ナンシーは、イリーナの親友だ。隣国のジン帝国の侯爵令嬢だった。水色の美しい髪に澄んだ緑色の瞳の美しいナンシーに憧れている学院生も多い。
イリーナは言った。
「亡くなったわ。父が亡くなると同時に母と妹に家を追い出されたの。婚約も破棄されたし。」
ナンシーは言った。
「まあ、イリーナ程優秀な人はいないのに、そんな事が!」
イリーナは被りを振る。
「もう、諦めたわ。だけど、このままじゃ終わらせない。」
ナンシーは言った。
「貴方には私がついているわ。それに、イリーナが婚約破棄したと聞いたら、オージンが喜びそうね。」
イリーナは言った。
「オージンが?どうして?」
ナンシーは呆れたように言う。
「あら?気がついていなかったの?オージンもまだまだね。それより、留学を引き受けるのでしょう。一緒にジン帝国へ行けるのよね。」
イリーナは言った。
「ええ、地位を確立させて、帰ってきたら妹を追い出すつもりよ。これからもよろしくね。ナンシー。」
イリーナは、父が亡くなってから初めて笑った。
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