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13.誰が王を殺したの①
しおりを挟むエーリヒの魔術は、全てを凍らせた。
ハイエルフの死体を飲み込み、湖を全て凍らせ、草原の草や地面を含め、魔獣が凍りついた。上空の飛竜にも冷気が届き、宙に浮いたまま氷像となり落下する。
ドガシャーン
ガシャーン
ドーンバラバラバラバラ
落ちた飛竜の氷像は、魔獣を巻き込みながら粉々に砕け散った。
メイナが草原を見ると、幻想的な光景が広がっていた。
キラキラ輝く凍りついた草。所々宝石が散らばるように粉々になった輝く氷冷物が散らばり、虹のように煌めいている。
中心の湖も凍りつき、湧き出る水も時を止めたように美しく静止していた。
「本当に、いつ見ても綺麗な魔術ね。」
ライザーの討伐の度に、ライザーの氷冷魔術に感動していたメイナはうっとりと、幻想的な光景をみる。
そのメイナの手をエーリヒが掴み握りしめた。
「やっぱり、メイナは平気なんだね?」
「エーリヒ?」
「なんでメイナは凍らないんだろう?俺が魔術を使う時に側にいて無事でいれる者はメイナだけだよ。」
エーリヒはメイナを抱きしめ、その感触を確かめるように頭を撫でる。
「髪も凍えない。嬉しいよ。メイナ。」
そういうエーリヒからは寂しさが伝わってきた。
残虐王と呼ばれ、大陸最強のエーリヒだが、実際は孤独なのかもしれない。
メイナはエーリヒを温めるように、抱きしめ返した。
暫くそうしていると、エーリヒがメイナに尋ねてきた。
「メイナ?どうして俺を殺しにきたの?」
少し迷うが、どうせエーリヒの暗殺は失敗している。キーベルデルク神国とランドルフ帝国の戦争を回避しただけでも、兄の生存率は高まるだろう。メイナは答えた。
「依頼されたの。キーベルデルクの元国王を殺した者を暗殺しろと。」
「マライ・キーベルデルク王か?」
「そうよ。17年前に死んだ。」
「彼は殺されたのか?最後にあった時は、死期を悟ったような事を言っていた。仮王が立ったから自殺でもしたかと思っていたよ。」
「えっ?そうなの?」
「ああ、印象に残る人だった。キーベルデルク神国は神の加護の原点だと言われている。キーベルデルク神国から加護が生まれたらしい。
あの時は父に連れられて、各国を回ったからね。他国の加護を奪いたいと考える国も多かったはずだ。
全ての国の神の加護持ちはキーベルデルク王を狙っていただろうな。加護を奪うなら水神の加護が最も魅力的だ。」
「貴方は殺していないの?」
「ああ、殺す理由がない。今ある加護も望んで得た訳じゃない。
なるほどね。俺がキーベルデルク王を殺したと疑われている訳か?複数の加護を持っているのは俺だけだしね。」
エーリヒが嘘を言っているようには見えなかった。
(じゃあ、誰なの?分からないわ。会ったことの無い王殺しを探すなんて。)
「ランドルフ帝国の帝都には、各国から後継者が集まってきている。彼らに話を聞けば何か分かるかもね?手伝おうか?」
驚いて、エーリヒを見る。
「いつも魔術討伐の時は、助けて貰っているからね。」
「ううん。いいの。時間は稼げているかはずだから、気長に調べるわ。」
「そう。でも、俺に黙っていなくなったらダメだよ。これがある限り出来ないと思うけど、メイナにはずっと側にいて欲しいんだ。」
そういうと、エーリヒはメイナの隷属の指輪に口づけをする。そのまま、メイナの指を咥え、舐め回した。
「うっ、エーリヒ。」
(そうだわ。隷属指輪もある。なんとかしないと。)
「可愛い。メイナ。」
エーリヒはメイナの指から口を離し、メイナの唇に深く口づけをした。
レイナは凍りついた世界で、エーリヒとの熱い口づけに酔いしれた。
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