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愛を学習する
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誰か俺を気絶させてくれ! 俺もアルファの威嚇で気絶したい、頼む!
『…正直、テメェの無鉄砲さには呆れるぜ。なんだって一人で何処へでも突っ込んで行きやがる? 死にてェなら早くそう言いな』
怒ってる。怒りが、滲み出てる。
『バカには口もねェのか』
おい誰がバカだ。
…これでも、頑張ってるんだ。バランサーはその国の政府からの接触は最低限控えるように国際条約が存在する。政府が安易にバランサーに関わるなってことだ。
だけどそれは、逆も然り。
バランサーは危機に陥っても、容易く政府に助けを求められない。狙われる危険はいくらでもあるのに、何かあっても対処法は一般人と変わらない。
だから、常に自分の家族が心配だ。自分より家族を害される危険が高いから。
…今回も、本当に偶然蒼二が狙われただけか半信半疑だった。本当にただ運が悪かっただけみたいだが。
『す、み…ませ』
『謝罪なんか欲しかねェよ。理由を教えろって言ってんだろォが』
俺を、納得させろ。
そう悲しげに告げるボスに、俺は余計に混乱してしまう。何故彼がそんな顔をするのか理解出来ない。
『…? 俺の、家の…問題、だから』
『一人で解決出来るとでも?』
『ある程度、証拠…集めたら…警察、に』
俺たちゃサツ以下かよ、とプイと顔を背けるボスに益々意味がわからなくなる。なんでこの人はこんなにも不機嫌なんだ。
『申し訳、ありませんっ。平気っです…すぐに治るし、バイトも…出来るから。だから』
『…良い。
もう、要らねェ。萎えた。頼りになるサツんとこでも行って保護してもらいな。お前はもう来なくて良い』
…え。
多分、その場にいた全員の声が重なった。無言のまま歩くボスは気にも留めずに外に出ようとしている。
来なくて、良い…? え? それってどういうことだ、まさか…二度と来るなってことなのか、アジトにも?
身を起こしてボスに手を伸ばす。だけど、なんて言ったら良いかわからなくて唇が震える。頭の中が真っ白で何もわからない。
どうしようっ、どうしよう…!! 嫌だ、置いていかれたくないっやだ…!
『宋平』
優しく声を掛けて現れたのは、刃斬だった。突然目の前に現れて膝をついた彼は丁寧な手付きで俺を支えてから涙を拭う。
主人が呼び出す声を無視して、彼は俺に優しく問い掛けた。
『どうして俺たちに言わなかった? こういうことは俺らの専売特許だぞ』
『っだって、俺…もう、助けてもらった…。まだお金っ…払ってないのに。
それ、なのにっ…また助けてほしいなんて、言えない…』
下駄の音が、ピタリと止まる。
『…そうか。でも怖かったろ。兄貴が捕まって、変な集団の懐に潜り込んで。ボロボロだぞ。挙げ句の果てには他人まで助けやがって…』
何度も頷いて、泣きながら肯定する。刃斬はそんな俺の肩を優しく叩いてから再び声を掛けた。
『全部兄貴が大切だからしたんだよな?』
泣き声のようになった返事に刃斬は笑いながら頭を撫でてくれた。
『あのなぁ。
お前を最初に助けた時は、取引だからだ。あれはもうお前とボスの間で交わされたモンだ。んで。今回はそん時とは明らかに違う点があるだろ?
…いや、兄貴が違うとかじゃねぇからな』
違うの?!
長兄か三男かって差しかなくない?
『違う。
…お前がもう、俺たちの身内になってるって明確な違いがあるだろぉが』
…え。
え!!
『お前が。大切な兄貴を守りたくて、必死に走り出した時。同じように俺たちも走り出したお前を助けたくてその後ろから必死に手を伸ばしてたんだよ。
…大事な弟分だからな。当たり前だろ?』
笑顔で俺の頭を撫で回す刃斬。その後ろでは犬飼がうんうん、と頷き倒し…猿石は悲しげに俺を見つめていた。魚神兄弟も互いに手を振っている。
思い浮かぶ、彼らとの時間。一緒に過ごした時間はどれも楽しくて笑顔が絶えないもの。そこには確かに絆が生まれていた。
『だから、俺たちは…お前が傷付くと悲しい上に腹立たしい。
それともなんだ? お前は俺がもしも危険な場所に何も言わずに一人で突っ込むってなっても手も口も出さねぇって?』
『嫌ですっ、俺も一緒に行きま…ぁ、』
ああ。
…そう、か…俺は、なんて薄情なことを。
『わかんなかったんだよな。お前は、その体質と…まぁ家庭の事情もあって誰かに頼るってことを。こういう時、自分でなんとかしちまってきたから、出来なかったんだよな。
宋平。頼むから、これでわかってくれ。お前と同じ土俵に立って並べる奴がもういるってことを。
お前を大切に…大事にしたい奴等がいるってことを、学んでくれ。頼むわ。でないと心配でマジで身体にGPS仕込みそーだ』
『じぃぴぃえすは、やだぁああっ。ごめんなさいっ、一人で来てごめんなさいっ、ぅええ、! 酷いことして、ごめんなざいっ』
汚い嗚咽を漏らしながら刃斬の膝に突っ伏すと、背中と頭を撫でられる。
『手の掛かる弟分だ。…その分、可愛くて仕方ねぇんだがな』
ヒョイ、と持ち上げられると刃斬のハンカチで涙を拭われ鼻も拭かれる。服の汚れを軽く落としてもらうと靴を脱がされて、足の具合を見られた。
『…おい。まだ抜糸してねぇじゃねぇか。血ぃ滲んでんぞ。お前は本当に…、はぁ。マジで暫くは大人しくしてろ』
なにっ?! 最悪だ、また先生に怒られる!!
更なる追い打ちに落ち込むが、最大の山場が間近に迫っている。辰見の説教なんかよりよっぽど緊張してしまう。
刃斬は抱き上げた俺をボスの前に連れて来た。
『手放すのであれば、自分が今から連れて行きます。連れて来たのは自分なんで、最後も自分にさせてください』
…ああ、こんなお別れか。刃斬の肩に寄り掛かってぼんやりと二人の会話を聞く。だけど、そんな俺の身体をトントン、と指で突く刃斬に気付いて少しだけ身体を起こす。
『…チッ』
『短気はよくありません。手放したくなくてここまで来て、貴方が放り投げてどうするんです。
ほら。お前も、何か言いたかったら伝えとけ』
もしも。
貴方が今、怒っている理由が…刃斬と同じなら。そんな風に思っても良いのであれば…言うべき言葉は、ただ一つ。
手を伸ばして、乞う。
『ボス、
…ボス、助けて…。置いて行かないで』
顔を背けていたボスがこちらを向いて、重い溜め息を吐いてから歩いて来る。怯えて手を引っ込めそうになった俺の前に立ち、眉間に皺を寄せつつも手を広げた。
両腕を伸ばすと刃斬の元から離れ、ボスの腕の中へ移った。
『…遅ェんだよ。最初から俺の傍にいろ』
『ごめんなさいっ…、おれバカだから。皆のこと傷付けて、心配させて』
『は。バカだからじゃねェ。わからなかったバカ、だ』
どぉいう意味ぃ?? と泣きながら問い掛ける。なんだ、どういう違いだ? わからん!
ボスはそんな俺を笑いながらしっかりと抱きしめてくれた。
『離れるな。手でも、服でもなんでも握ってちゃんと傍にいろ。何があっても絶対ェ守ってやる。お前が助けてくれとさえ言えば、何だってしてやるから。
だから、俺たちを頼れ。俺を信じて、無茶をするな。…良いな?』
コクンと頷けばボスは愛おしいものを見つけたように目を細めてからしっかりと俺を抱きしめた。言われた通りちゃんとボスの服を握りしめれば、よく出来ましたとばかりに額と額を合わせて笑い合う。
『バカにしちゃァ上出来だ』
『うん。ちゃんと出来るように、頑張る』
そう言うとボスの顔が近くに来てギュッと目を瞑る。頬にキスをされた感覚がしてボッ、と熱くなる顔。クスクスと笑うボスに物申してやろうと口を開こうとした瞬間。
『ちょぉっと、待てええ?! 待っ、ちょ、っアンタ!! アンタ今、俺の弟に何した!! 変態かコラァ、弟を返せ!!』
サッ、とボスと俺を隠すように刃斬が立ち塞がるが問題はない。それは残っていた敵でも起き上がった敵でもなく、心配で様子を見に来た…蒼二だ。
『未成年淫行で御用だ変態め!! 豚箱行きじゃあ!!』
確かに。と周囲からボスの罪を認める声がするが、ボスの合図で蒼二は一瞬で犬飼によって地面に押さえ付けられた。
『ギャーっ、助けてぇえ!!』
『…随分と似てねェ兄貴だな、おい』
すんません。本当にすんません、そんな可哀想な生き物を見るような目で…あ、俺も?
解せない。
『どうしましょう…』
『説明しとけ。丁度良い、その間にこっちはやることがある。
覚。ちょっとこっち来い』
【御意。すぐ向かいます】
ボスが耳に付けた無線を起動して覚さんを呼ぶと、彼に俺を預けて建物の中へと入って行く。思わずクン、と着物を引くとボスは優しく笑ってから俺の頭を撫でる。
『終わったらすぐ戻るから待ってろ。…覚、犬飼。後は任せるぞ』
その辺に転がっていた敵も全て回収し、静かになった搬入用の駐車場。取り敢えず外に出ることになって壊れたシャッターを潜って外に出た。
地面に座る蒼二と、その背後に立つ犬飼。蒼二の前には俺と、俺を抱っこした覚さんがいる。
『で?! この人たちは誰! 知ってる人なの、宋ちゃん?!』
…まぁ、いつかはバレてたか。
そう開き直った俺は蒼二にバイトのことや彼らについて散々説明をするのだった。
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『…正直、テメェの無鉄砲さには呆れるぜ。なんだって一人で何処へでも突っ込んで行きやがる? 死にてェなら早くそう言いな』
怒ってる。怒りが、滲み出てる。
『バカには口もねェのか』
おい誰がバカだ。
…これでも、頑張ってるんだ。バランサーはその国の政府からの接触は最低限控えるように国際条約が存在する。政府が安易にバランサーに関わるなってことだ。
だけどそれは、逆も然り。
バランサーは危機に陥っても、容易く政府に助けを求められない。狙われる危険はいくらでもあるのに、何かあっても対処法は一般人と変わらない。
だから、常に自分の家族が心配だ。自分より家族を害される危険が高いから。
…今回も、本当に偶然蒼二が狙われただけか半信半疑だった。本当にただ運が悪かっただけみたいだが。
『す、み…ませ』
『謝罪なんか欲しかねェよ。理由を教えろって言ってんだろォが』
俺を、納得させろ。
そう悲しげに告げるボスに、俺は余計に混乱してしまう。何故彼がそんな顔をするのか理解出来ない。
『…? 俺の、家の…問題、だから』
『一人で解決出来るとでも?』
『ある程度、証拠…集めたら…警察、に』
俺たちゃサツ以下かよ、とプイと顔を背けるボスに益々意味がわからなくなる。なんでこの人はこんなにも不機嫌なんだ。
『申し訳、ありませんっ。平気っです…すぐに治るし、バイトも…出来るから。だから』
『…良い。
もう、要らねェ。萎えた。頼りになるサツんとこでも行って保護してもらいな。お前はもう来なくて良い』
…え。
多分、その場にいた全員の声が重なった。無言のまま歩くボスは気にも留めずに外に出ようとしている。
来なくて、良い…? え? それってどういうことだ、まさか…二度と来るなってことなのか、アジトにも?
身を起こしてボスに手を伸ばす。だけど、なんて言ったら良いかわからなくて唇が震える。頭の中が真っ白で何もわからない。
どうしようっ、どうしよう…!! 嫌だ、置いていかれたくないっやだ…!
『宋平』
優しく声を掛けて現れたのは、刃斬だった。突然目の前に現れて膝をついた彼は丁寧な手付きで俺を支えてから涙を拭う。
主人が呼び出す声を無視して、彼は俺に優しく問い掛けた。
『どうして俺たちに言わなかった? こういうことは俺らの専売特許だぞ』
『っだって、俺…もう、助けてもらった…。まだお金っ…払ってないのに。
それ、なのにっ…また助けてほしいなんて、言えない…』
下駄の音が、ピタリと止まる。
『…そうか。でも怖かったろ。兄貴が捕まって、変な集団の懐に潜り込んで。ボロボロだぞ。挙げ句の果てには他人まで助けやがって…』
何度も頷いて、泣きながら肯定する。刃斬はそんな俺の肩を優しく叩いてから再び声を掛けた。
『全部兄貴が大切だからしたんだよな?』
泣き声のようになった返事に刃斬は笑いながら頭を撫でてくれた。
『あのなぁ。
お前を最初に助けた時は、取引だからだ。あれはもうお前とボスの間で交わされたモンだ。んで。今回はそん時とは明らかに違う点があるだろ?
…いや、兄貴が違うとかじゃねぇからな』
違うの?!
長兄か三男かって差しかなくない?
『違う。
…お前がもう、俺たちの身内になってるって明確な違いがあるだろぉが』
…え。
え!!
『お前が。大切な兄貴を守りたくて、必死に走り出した時。同じように俺たちも走り出したお前を助けたくてその後ろから必死に手を伸ばしてたんだよ。
…大事な弟分だからな。当たり前だろ?』
笑顔で俺の頭を撫で回す刃斬。その後ろでは犬飼がうんうん、と頷き倒し…猿石は悲しげに俺を見つめていた。魚神兄弟も互いに手を振っている。
思い浮かぶ、彼らとの時間。一緒に過ごした時間はどれも楽しくて笑顔が絶えないもの。そこには確かに絆が生まれていた。
『だから、俺たちは…お前が傷付くと悲しい上に腹立たしい。
それともなんだ? お前は俺がもしも危険な場所に何も言わずに一人で突っ込むってなっても手も口も出さねぇって?』
『嫌ですっ、俺も一緒に行きま…ぁ、』
ああ。
…そう、か…俺は、なんて薄情なことを。
『わかんなかったんだよな。お前は、その体質と…まぁ家庭の事情もあって誰かに頼るってことを。こういう時、自分でなんとかしちまってきたから、出来なかったんだよな。
宋平。頼むから、これでわかってくれ。お前と同じ土俵に立って並べる奴がもういるってことを。
お前を大切に…大事にしたい奴等がいるってことを、学んでくれ。頼むわ。でないと心配でマジで身体にGPS仕込みそーだ』
『じぃぴぃえすは、やだぁああっ。ごめんなさいっ、一人で来てごめんなさいっ、ぅええ、! 酷いことして、ごめんなざいっ』
汚い嗚咽を漏らしながら刃斬の膝に突っ伏すと、背中と頭を撫でられる。
『手の掛かる弟分だ。…その分、可愛くて仕方ねぇんだがな』
ヒョイ、と持ち上げられると刃斬のハンカチで涙を拭われ鼻も拭かれる。服の汚れを軽く落としてもらうと靴を脱がされて、足の具合を見られた。
『…おい。まだ抜糸してねぇじゃねぇか。血ぃ滲んでんぞ。お前は本当に…、はぁ。マジで暫くは大人しくしてろ』
なにっ?! 最悪だ、また先生に怒られる!!
更なる追い打ちに落ち込むが、最大の山場が間近に迫っている。辰見の説教なんかよりよっぽど緊張してしまう。
刃斬は抱き上げた俺をボスの前に連れて来た。
『手放すのであれば、自分が今から連れて行きます。連れて来たのは自分なんで、最後も自分にさせてください』
…ああ、こんなお別れか。刃斬の肩に寄り掛かってぼんやりと二人の会話を聞く。だけど、そんな俺の身体をトントン、と指で突く刃斬に気付いて少しだけ身体を起こす。
『…チッ』
『短気はよくありません。手放したくなくてここまで来て、貴方が放り投げてどうするんです。
ほら。お前も、何か言いたかったら伝えとけ』
もしも。
貴方が今、怒っている理由が…刃斬と同じなら。そんな風に思っても良いのであれば…言うべき言葉は、ただ一つ。
手を伸ばして、乞う。
『ボス、
…ボス、助けて…。置いて行かないで』
顔を背けていたボスがこちらを向いて、重い溜め息を吐いてから歩いて来る。怯えて手を引っ込めそうになった俺の前に立ち、眉間に皺を寄せつつも手を広げた。
両腕を伸ばすと刃斬の元から離れ、ボスの腕の中へ移った。
『…遅ェんだよ。最初から俺の傍にいろ』
『ごめんなさいっ…、おれバカだから。皆のこと傷付けて、心配させて』
『は。バカだからじゃねェ。わからなかったバカ、だ』
どぉいう意味ぃ?? と泣きながら問い掛ける。なんだ、どういう違いだ? わからん!
ボスはそんな俺を笑いながらしっかりと抱きしめてくれた。
『離れるな。手でも、服でもなんでも握ってちゃんと傍にいろ。何があっても絶対ェ守ってやる。お前が助けてくれとさえ言えば、何だってしてやるから。
だから、俺たちを頼れ。俺を信じて、無茶をするな。…良いな?』
コクンと頷けばボスは愛おしいものを見つけたように目を細めてからしっかりと俺を抱きしめた。言われた通りちゃんとボスの服を握りしめれば、よく出来ましたとばかりに額と額を合わせて笑い合う。
『バカにしちゃァ上出来だ』
『うん。ちゃんと出来るように、頑張る』
そう言うとボスの顔が近くに来てギュッと目を瞑る。頬にキスをされた感覚がしてボッ、と熱くなる顔。クスクスと笑うボスに物申してやろうと口を開こうとした瞬間。
『ちょぉっと、待てええ?! 待っ、ちょ、っアンタ!! アンタ今、俺の弟に何した!! 変態かコラァ、弟を返せ!!』
サッ、とボスと俺を隠すように刃斬が立ち塞がるが問題はない。それは残っていた敵でも起き上がった敵でもなく、心配で様子を見に来た…蒼二だ。
『未成年淫行で御用だ変態め!! 豚箱行きじゃあ!!』
確かに。と周囲からボスの罪を認める声がするが、ボスの合図で蒼二は一瞬で犬飼によって地面に押さえ付けられた。
『ギャーっ、助けてぇえ!!』
『…随分と似てねェ兄貴だな、おい』
すんません。本当にすんません、そんな可哀想な生き物を見るような目で…あ、俺も?
解せない。
『どうしましょう…』
『説明しとけ。丁度良い、その間にこっちはやることがある。
覚。ちょっとこっち来い』
【御意。すぐ向かいます】
ボスが耳に付けた無線を起動して覚さんを呼ぶと、彼に俺を預けて建物の中へと入って行く。思わずクン、と着物を引くとボスは優しく笑ってから俺の頭を撫でる。
『終わったらすぐ戻るから待ってろ。…覚、犬飼。後は任せるぞ』
その辺に転がっていた敵も全て回収し、静かになった搬入用の駐車場。取り敢えず外に出ることになって壊れたシャッターを潜って外に出た。
地面に座る蒼二と、その背後に立つ犬飼。蒼二の前には俺と、俺を抱っこした覚さんがいる。
『で?! この人たちは誰! 知ってる人なの、宋ちゃん?!』
…まぁ、いつかはバレてたか。
そう開き直った俺は蒼二にバイトのことや彼らについて散々説明をするのだった。
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