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運命の糸を宿した君へ
一番は僕
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軽々とオレを抱き上げ、そのままガゼボへ戻ると王子は座った自分の膝の上にオレを乗せた。肩にタオルケットを掛けられると寒くないように抱き寄せられ、胸にもたれる。
ハルジオンと、結婚…? 夢みたいだっ凄く嬉しい…!!
『少し話しておかなければならぬことがある。聞いてくれるか?』
『話…? ん。聞くよ』
話というのは世界について。
バルカラと神殿の調査により、各国や様々な組織が動いてオレを調べたり…或いは捕まえようとする集団が出てきたらしい。なんせ世界にたった一人しかいない異世界人であり、千年を生きた人間だ。しかも生命の危機により魔王という最強のカードを使えるイレギュラーな存在。
…まぁ、誰もが喜んで迎えてくれるわけじゃないよな。
『バーリカリーナはお前を必ず護ってみせる。同盟国を募り何人たりともお前には触れさせぬ…必ずな。だが、敵は未知数な上に誰かも不明。
…どれだけ僕が息巻いたところで、いつかお前が奪われてしまうことは明白だ。だから…タタラ。お前に複数の伴侶を得ることを許す。彼らの権力、地位、力…全てが合わさればどんな外敵すらも退けられるであろう。
お前の平穏のために、三人との結婚を認める』
『でもっ、ハルジオン…!』
王子が嫌なら誰とも結婚はしない。…彼らには、誠心誠意謝罪して諦めてもらう。
そんな気持ちを伝えたくて抱きしめれば、彼も同じように体に腕を回してしっかりと抱きしめてくれた。肩に沈めた額。王子はゆっくりとオレの頭を撫でて自分自身に言い聞かせるよう語る。
『ふん。どうということはない。お前が一番、最も愛する伴侶は僕なのだ。初めての口付けに…初めての初夜、全部全部…僕が一番最初。
そうだろう? …ああ、初めての恋の相手も僕なのだから…初恋まで貰ってしまったな』
『うっ…!!』
え、エッチはまだしてない…!!
そんな答えを予測していたように、王子はオレの胸に手を当ててから首を傾げる。
『僕には身を捧げられないと?』
『あ、あぅ…そんな言い方っ』
つまり初めての結婚も、王子。
…いや待て。つまり結婚するまでエッチはダメなのか? こっちではそれが普通なんだろうか…。
『…結婚するまでは、しちゃ…ダメなのか?』
『いや? 結婚の後には初夜が行われるものだが、婚約中であっても性行為を咎められることはない』
ならば。
『…でも…』
本当に、良いのだろうか。
よくよく考えてみれば王子が好きだったのはクロポルド・アヴァロア。彼の体格に一番近いのはリューシーだ。騎士として剣も扱い、鍛錬により筋肉もついた男らしい体。
客観的に見て…彼を抱きたい、よりも…抱かれたいと思うのではないだろうか…。
『…ぅ、』
そっと自分の貧相な体を見て…思わずガクリと項垂れてしまう。せめてもう少しオレが逞しい男であればと無い物ねだりをしてしまうのも仕方ない。
…プロテインをくれ…。
『うぅ…』
『な、何故そんな泣きそうな声を上げるのだ?!』
だってエッチ出来ないんだもん。
彼の理想とする体ではない、あまりにも違う肉体に心が折れてメソメソとその胸に寄り掛かる。訳がわからないまま…しかし王子は優しくオレを受け入れて大切なものを扱うように体を撫でてくれた。
『本当にどうしたのだ、お前は…。そんな悲しそうな顔をしないで僕に教えてくれ。何がそんなに悲しいのだ…申してみよ』
観念してポツポツと悩みを吐き出す。最初はうんうん、と素直に聞いていた王子が段々と表情を曇らせ…遂には天を仰ぐ。
ね?
一大事だろ?
『オレじゃ王子のこと、満足させられる自信…ないよぉ…』
せめてもう少し成長してからで良いですか? 肉体年齢が二十代後半くらいになれば少しは…マシになるかと信じたい!
…え? 今?
…十代半ばくらいですが、何か。
『真剣に悩んでくれているところ申し訳ないがな、正直あの者との行為のことなど深く考えておらんかった…。ただ手に入れたいという子ども染みた欲求だな』
初めて会った頃より逞しく成長してしまった王子は、オレの両脇を持って抱えると彼の足を跨ぐようにして座らせる。そのまま隙間なく抱きしめられ、密着した上半身に興奮すら覚えてしまう。
『だが、お前は違う』
グッと抱きしめられ、王子の背中に手を回して必死にしがみ付くと甘い笑みを浮かべた彼が…色っぽく言うのだ。
『お前は抱きたい』
ズクン、と甘い刺激が腰を貫く。言葉だけで達してしまったようにビクビクと蠢く腰をガッチリ掴まれては困惑する。
『きっと甘く蕩けるような声で鳴いて、何度も何度も僕の名を呼び僕に縋り付くんだ』
『ぁ、あっ…やぁ!』
『タタラ』
名前を呼ばれて、顔を合わせる。スッとオレのお尻に回った手に大袈裟に体を揺らして反応すればなんとも嬉しそうな笑い声がした。
『…本来なら、まだ手を出すところではないんだが…お前がそうやって可愛く強請るのが悪いのだ。そんな風に関係を迫られて断れるほど出来た男ではない』
それって…!
それって、まさか!
『誘惑するのが上手だな?
…抱かせてくれるか、婚約者殿?』
意地悪で生意気な顔。だけどすぐに愛おしさに溢れたような甘い顔で強請られればオレみたいな単純野郎はイチコロだ。
キュンキュンと騒ぐ体を…大好きな人に弄ってもらえる。既に反応したそこに気付かれないように取り繕うが、要らぬことだったかもしれない。
『ほしいっ、エッチ…なこと、したいっ…我慢出来ない!』
だってオレたちは未来を約束したんだから。
『っ優しくして、くださいっ…!』
『馬鹿…何処で覚えてきたのだ、そんな台詞…
優しくする。だから…たくさん乱れるが良い』
.
ハルジオンと、結婚…? 夢みたいだっ凄く嬉しい…!!
『少し話しておかなければならぬことがある。聞いてくれるか?』
『話…? ん。聞くよ』
話というのは世界について。
バルカラと神殿の調査により、各国や様々な組織が動いてオレを調べたり…或いは捕まえようとする集団が出てきたらしい。なんせ世界にたった一人しかいない異世界人であり、千年を生きた人間だ。しかも生命の危機により魔王という最強のカードを使えるイレギュラーな存在。
…まぁ、誰もが喜んで迎えてくれるわけじゃないよな。
『バーリカリーナはお前を必ず護ってみせる。同盟国を募り何人たりともお前には触れさせぬ…必ずな。だが、敵は未知数な上に誰かも不明。
…どれだけ僕が息巻いたところで、いつかお前が奪われてしまうことは明白だ。だから…タタラ。お前に複数の伴侶を得ることを許す。彼らの権力、地位、力…全てが合わさればどんな外敵すらも退けられるであろう。
お前の平穏のために、三人との結婚を認める』
『でもっ、ハルジオン…!』
王子が嫌なら誰とも結婚はしない。…彼らには、誠心誠意謝罪して諦めてもらう。
そんな気持ちを伝えたくて抱きしめれば、彼も同じように体に腕を回してしっかりと抱きしめてくれた。肩に沈めた額。王子はゆっくりとオレの頭を撫でて自分自身に言い聞かせるよう語る。
『ふん。どうということはない。お前が一番、最も愛する伴侶は僕なのだ。初めての口付けに…初めての初夜、全部全部…僕が一番最初。
そうだろう? …ああ、初めての恋の相手も僕なのだから…初恋まで貰ってしまったな』
『うっ…!!』
え、エッチはまだしてない…!!
そんな答えを予測していたように、王子はオレの胸に手を当ててから首を傾げる。
『僕には身を捧げられないと?』
『あ、あぅ…そんな言い方っ』
つまり初めての結婚も、王子。
…いや待て。つまり結婚するまでエッチはダメなのか? こっちではそれが普通なんだろうか…。
『…結婚するまでは、しちゃ…ダメなのか?』
『いや? 結婚の後には初夜が行われるものだが、婚約中であっても性行為を咎められることはない』
ならば。
『…でも…』
本当に、良いのだろうか。
よくよく考えてみれば王子が好きだったのはクロポルド・アヴァロア。彼の体格に一番近いのはリューシーだ。騎士として剣も扱い、鍛錬により筋肉もついた男らしい体。
客観的に見て…彼を抱きたい、よりも…抱かれたいと思うのではないだろうか…。
『…ぅ、』
そっと自分の貧相な体を見て…思わずガクリと項垂れてしまう。せめてもう少しオレが逞しい男であればと無い物ねだりをしてしまうのも仕方ない。
…プロテインをくれ…。
『うぅ…』
『な、何故そんな泣きそうな声を上げるのだ?!』
だってエッチ出来ないんだもん。
彼の理想とする体ではない、あまりにも違う肉体に心が折れてメソメソとその胸に寄り掛かる。訳がわからないまま…しかし王子は優しくオレを受け入れて大切なものを扱うように体を撫でてくれた。
『本当にどうしたのだ、お前は…。そんな悲しそうな顔をしないで僕に教えてくれ。何がそんなに悲しいのだ…申してみよ』
観念してポツポツと悩みを吐き出す。最初はうんうん、と素直に聞いていた王子が段々と表情を曇らせ…遂には天を仰ぐ。
ね?
一大事だろ?
『オレじゃ王子のこと、満足させられる自信…ないよぉ…』
せめてもう少し成長してからで良いですか? 肉体年齢が二十代後半くらいになれば少しは…マシになるかと信じたい!
…え? 今?
…十代半ばくらいですが、何か。
『真剣に悩んでくれているところ申し訳ないがな、正直あの者との行為のことなど深く考えておらんかった…。ただ手に入れたいという子ども染みた欲求だな』
初めて会った頃より逞しく成長してしまった王子は、オレの両脇を持って抱えると彼の足を跨ぐようにして座らせる。そのまま隙間なく抱きしめられ、密着した上半身に興奮すら覚えてしまう。
『だが、お前は違う』
グッと抱きしめられ、王子の背中に手を回して必死にしがみ付くと甘い笑みを浮かべた彼が…色っぽく言うのだ。
『お前は抱きたい』
ズクン、と甘い刺激が腰を貫く。言葉だけで達してしまったようにビクビクと蠢く腰をガッチリ掴まれては困惑する。
『きっと甘く蕩けるような声で鳴いて、何度も何度も僕の名を呼び僕に縋り付くんだ』
『ぁ、あっ…やぁ!』
『タタラ』
名前を呼ばれて、顔を合わせる。スッとオレのお尻に回った手に大袈裟に体を揺らして反応すればなんとも嬉しそうな笑い声がした。
『…本来なら、まだ手を出すところではないんだが…お前がそうやって可愛く強請るのが悪いのだ。そんな風に関係を迫られて断れるほど出来た男ではない』
それって…!
それって、まさか!
『誘惑するのが上手だな?
…抱かせてくれるか、婚約者殿?』
意地悪で生意気な顔。だけどすぐに愛おしさに溢れたような甘い顔で強請られればオレみたいな単純野郎はイチコロだ。
キュンキュンと騒ぐ体を…大好きな人に弄ってもらえる。既に反応したそこに気付かれないように取り繕うが、要らぬことだったかもしれない。
『ほしいっ、エッチ…なこと、したいっ…我慢出来ない!』
だってオレたちは未来を約束したんだから。
『っ優しくして、くださいっ…!』
『馬鹿…何処で覚えてきたのだ、そんな台詞…
優しくする。だから…たくさん乱れるが良い』
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