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竹の壁の章

新しい壁

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 ――ピコーンッ

【村民満足度が上限に達しました。成長ボーナスとして新しい壁が建てられます】

 おぉ、また村民満足度が上がったぞ。
 先程リディアと初めて肌を合わせた。お風呂の中で。
 野外という多少マニアックなシチュエーションではあったが、リディアも満足してくれたみたいだな。
 もちろん俺も満足だ。
 
 どうやらリディアは初めてだったようだが、しっかりと感じてくれていた。
 よく彼女から「下手くそ」なんて言われていたが、どういう訳かテクが上がったような気がする。

「凄かったですぅ。あんなところに指を入れるなんて……。癖になっちゃいそうです……」

 リディアさん、それ以上言うと関係各所からお叱りを受けますよ。
 湯船の中でクネクネと絡み付いてくるリディアには一旦離れてもらう。
 
「ほら、もうすぐ夜が来るぞ。続きはまた後にしよう。それとさ、また村民満足度が上がったんだ。ステータスを確認したいんだ」

 リディアは名残惜しそうな顔をするが、これから異形の襲撃があるだろう。
 一度気持ちを切り替えないと。

 風呂から上がるとリディアと一緒にステータスを確認することにした。
 さぁ見てみるとするか。


名前:前川 来人
年齢:40
種族:ヒューマン
力:25(+15) 魔力:0 
能力:壁レベル2(竹)
派生効果:敷地成長促進
村民満足度:1/50
 

名前:リディア
年齢:???
種族:エルフ(村民)
力:15(+10) 魔力:25(+10)
能力:弓術 精霊魔法(敷地内限定)
村民満足度:1/50


 おぉ、壁レベルが2に上がっている。
 木壁から竹壁に変わっているようだ。
 他にもステータスにも変化が。
 力が初期に比べ5倍にまで上がっていた。

 リディアもステータス以外に敷地内限定ではあるが、精霊魔法が使えると。

「ほ、本当ですか? ちょっと試してみますね」

 聞き取れない言葉でリディアは詠唱を始める。
 すると彼女の周りに光の玉が現れた。
 すごいな、これが魔法か。どんな効果なんだろうか?

「それは?」
「契約精霊なんです! この子達がいれば傷を癒すことが出来るんですよ!」

 おぉ、敷地内限定ではあるが、回復魔法が使えるようになったか。
 他にも風の精霊に呼び出したりもしてくれた。
 これは矢に属性を与え、威力を高めることが出来るらしい。
 
「すごいな。戦力アップだね」
「はい! これでライトさんを守りますから!」

「ははは、頼もしい恋人が出来て嬉しいよ」
「こ、恋人ですか!?」

「ん? ま、まぁ順番はちょっと違うかもしれないけどね。リディア、俺と付き合ってくれるか?」
「はい……。グスンッ」

 リディアはちょっとだけ涙を流す。
 彼女を抱きしめ、夜が来るまで少しだけイチャイチャすることにした。


◇◆◇

 ふう、中々の戦いだったぜ。
 異形との戦いの前に一戦だけ済ませておく。男と女のプロレスだけど。
 さぁ、そろそろ奴らが来るぞ。
 俺は服を着てから、壁の補強に入る。
 新しい壁か。竹壁だったよな?

「壁!」

 ――ドシュッ

 木壁と入れ代わるように竹壁が地面から生えてくる。
 そのまま四方を竹壁で覆った。
 なお木壁は出せなくなったわけではなく、意識すれば木壁も発動出来るみたいだ。
 燃料としては竹よりも木の方がいいからな。
 ちょっと安心。

「わー、すごいですね。不思議な木です。初めて見ました」
「この世界に竹は無いんだね」

 リディアに竹の説明をする。
 木材よりも頑丈で何より弾力があり、かなりしならせることが出来る。
 加工もしやすく中国では工事の足場として今も使われているはずだ。
 
 試しに小さめの壁を生み出し加工用に根元を消すと竹の棒はバラバラと地面に転がった。
 それを黒曜石のナイフで先端を尖らせる。
 竹槍の完成だ。

 ――バンッ! ドカンッ!

「リディア!」
「はい!」

 来たか! 異形の襲撃だ!
 いつものようにリディアは小屋の屋根に登る。
 俺は壁の一部を消し、拠点の中から異形を攻撃しようとしたが……。

『ウルルォォイッ』
『ウバァァァッ』
『グルルルルッ』

 数が多い!? 十や二十どころじゃないぞ!
 そして何体か一回り体の大きい個体も混じっている。

「ライトさん! 大群です!」
「分かってる! とにかく撃ちまくれ!」

 異形達は壁を壊そうと力任せに壁を叩く。
 だが俺の壁も進化しているからな。
 そう簡単には突破させんよ。

 リディアの弓と俺の槍で異形の数を減らしていく。
 以前のステータスだったらヤバかっただろうが、今の俺は転移した当初に比べ5倍の筋力を持っているはずだ。
 思った通り槍はプリンにフォークを突き立てるが如く異形の頭を貫く。

「はっ!」
『ウバァァァッ』

 リディアもステータスが上がっているだけではなく、敷地内限定ではあるが精霊魔法が使える。
 矢に風の属性を付与させることで攻撃力を上げているのだろう。
 異形を次々に撃ち抜いていった。

 しかし壁も頑丈になったとはいえ限界というものがある。
 とうとう一部が破られ異形の一体が拠点の中に入ってきた。

【壁!】

 後続が浸入しないよう即座に壁を修復する。

「ライトさん!」
「ここは任せろ! こいつを片付ける! リディアは外の異形の相手を頼む!」

 拠点に入ってきた異形は特に体の大きな個体だった。
 黄色い濁った目に、まるで闇を飲み込んだような口。
 
 異形は憎々しげに鳴いた後、俺に襲いかかってくる!

『ウバァッ!』
 
 ――ドスンッ

「うおっ!?」

 右の拳を打ち下ろしてくる!
 咄嗟に避けたが地面には大きな穴が……。
 ステータスが上がったとはいえ、こんな一撃を食らったら一溜りも無いぞ。

 体勢を整え再び槍を構える。
 どうせ外には異形がウジャウジャいるんだ。
 逃げ道なんか無い。
 
 俺が生き残るには目の前の化け物を倒すしか道は無いのだ。
 そう思うと意外と恐怖は感じなかった。
 
 槍を異形に向けながら……。

「来い!」
『ウバァッ!』

 異形との一騎討ちだ。
 奴は恐ろしいスピードで俺に迫る。
 俺が負ければ自分だけではなく、リディアの死も避けられないだろう。
 
 久しぶりに出来た彼女なんだ。むざむざ死なせるつもりはないさ。
 
 そんなことを考えていると異形の拳が目の前に迫る!

【壁ぇっ!】

 ――ドシュッ

 地面から飛び出したのは壁……ではあるのだが、極力細く先端は尖った竹をイメージした。
 竹槍が地面から飛び出したみたいなもんだ。

 異形は股間から脳天に向けて竹槍に貫かれる。

『ウバァッ……?』

 何が起こったのか分からないように異形は鳴く。
 分かる必要は無いさ。お前はこのまま死ぬんだから。

 ――ドシュッ!

『…………』 

 俺の止めの一撃が異形の額を貫く。
 言葉を発することなく異形は塵へと姿を変えた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


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