4 / 93
木の壁の章
夜営と考察
しおりを挟む
ヤバい、ヤバいぞ!
俺は広野から森に移動し、そこでようやく水分を多く含むミンゴという果物をゲットすることが出来た。
今後のことも考え、なるべく多くのミンゴを持っておこうと思ったのだが、予想以上に時間が経っていたようだ。
辺りはすっかりと暗くなっており、間もなく夜がくる。
月明かりも森の木々で遮られ、完全な暗闇に包まれるだろう。
素人の俺でも分かる。夜の森歩きは危険だ。
夜行の肉食獣だっているかもしれん。
今は身の安全の確保を考えないと!
「か、壁ぇっ!」
――ズシャアッ!
掛け声と共に地面から壁が出現!
その後も三方を壁で囲いその中に入る。
最後に前面に壁を作り、四方が壁に囲まれる形となった。
と、とりあえずこの中にいれば安全……だよな?
どうか大型の肉食獣とか魔物とか現れませんように……。
「ふぅー……」
一息ついてからドカッと地面に座る。
早く夜が明けることだけを祈るばかりだ。
寝たらすぐに朝になるかな? なんて思い目を閉じるが、怖くて眠れるはずもない。
少し喉も乾いたので、貴重なミンゴの実を食べることにした。
ミンゴは水分が多く僅かに甘味がある。
すごく美味しいというわけではないが、それなりに腹持ちも良い。
お腹が少し満足し、ある程度安全も確保出来た。人にとって必要である食と住が満たされた。少しだけど。
だが先ほどまで感じていた恐怖は少し薄れたみたいだな。
かつて動画でも見たが、人は悪い状況にいると負の思考に囚われる。
今の俺はミンゴを食べ、固有の能力である壁で安全は確保されている。
少し考える余裕が出てきた。
よし、せっかくだし夜が明ける時間を利用して壁で何が出来るか考えてみよう。
どうやら俺が使える能力は壁らしい。
文字通り、地面から壁を生み出す能力だ。
四方を壁で覆うことで簡易的な住居を作ることが出来る。天井はないけど。
雨が降ったらずぶ濡れになっちゃうなぁ。
そういえばさ、壁って基本的に縦方向に建ってるから壁なのかな?
横方向に壁を発生させれば天井が出来たりして。
ちょっと試してみるかな。四方を覆う壁の上を指差して言葉を発してみる。
「壁!」
――ズシャアッ
「出来んのかい!」
突っ込んでしまった。上部にあった穴は横方向に生えた壁により塞がれた。
な、何気に便利な能力だな。
でも天井を付けると内部が真っ暗になってしまうので、今は天井は消すことにした。
そうだ。こんなのはどうだろう?
壁の形を変えるとか?
中は狭いので、小さな壁をイメージする。
すると小さな壁や細長い壁などを生み出すことが出来る。だが基本的には四角形で限定されるようだ。
丸い壁や三角の壁なんかは出来ないことが分かった。
ならこんなことはどうかな?
地面から生えた長い壁の根元のみをイメージしつつ……。
「消えろ」
――フッ パタンッ
支えを失った壁はただの木の板へと変わる。
へー。壁限定ではあるが、一部を消すことで工作なんかも出来るかもしれない。
何かを作る時の素材として利用出来るかも。
せっかくだ。小さい壁を利用して木製の入れ物なんか出来るかな?
どうやら壁を消すのは自在のようで、四角い穴を開けることも可能らしい。
簡素ではあるが、凹型の入れ物はあっという間に出来上がってしまった。
なんか楽しいな。どうやら壁を発動するためにいわゆる魔力なんかは必要無いらしい。
壁オンリーではあるが、作り放題なのだ。
ん? そうえいばだよ。こんなことにも利用出来るかもね。
朝が来たら試してみようかなー。
いつの間にか恐怖は消え去り、お気楽な気持ちで眠ることが出来た。
◇◆◇
目が覚めると壁の内部に朝日が差し込んでいる。
ふあぁ、昨日よりは安眠出来たかな?
壁を解除して外に出る。
今のところ獣の気配は感じられない。
でもやっぱり怖いので、早々に森を出ることにした。
昨日寝る前に思い付いたのは二つ。
一つは広野と森の境目に拠点を作ることだ。
森の中はミンゴだけではなく、他にも食べられる物や、まだ見つけてはいないが水源があるだろう。
しかしサバイバル知識が無い挙げ句、使える能力が壁のみでは万が一獣、魔物に襲われてしまっては一溜りも無いだろう。
俺は死にたくないのだ。
そして二つ目だ。昨夜は狭い壁で囲んだ空間で実験を行った。
割りと小さい壁であれば、自由に作り出すことが出来る。
なら全力で壁を作ったとしたらどうだろうか?
昨日俺が生み出した壁は高さ三メートル程であった。
特に考えなしに生み出した壁がその高さなのだから、三メートルがデフォなのかもね。
だが高くて大きな壁ならどうだろうか?
それが昨日思い付いた二つ目だ。
よし、試してみるか。
俺はとある木の下に移動する。
上にはたわわに実ったミンゴの実が生っている。
イメージするのは十メートルはあろうかという高い壁。
上手くいってくれよ?
手をかざしつつ、全力で唱える!
「壁ぇっ!」
――ズゴォンッ!
現れたのは幅は一メートル程度の壁だが、それが一瞬で上空高くまで伸びる!
そして俺の狙い通り……。
――パシッ ボタタッ
「よし!」
思わずガッツポーズをしてしまう!
産み出された壁は高い場所に実ったミンゴに当たり、地面に落ちてきたのだ。
これで木に登ったり、石を投げたりせずに済む。
食糧が果物だけというのも問題だが、少なくとも飢えはしのげるし、何より水分を摂ることが出来る。
食糧が安定的に手に入るだけでも気持ちが軽くなるな。
俺は昨日作った入れ物にミンゴを入れ、一度森を出ることにした。
俺は広野から森に移動し、そこでようやく水分を多く含むミンゴという果物をゲットすることが出来た。
今後のことも考え、なるべく多くのミンゴを持っておこうと思ったのだが、予想以上に時間が経っていたようだ。
辺りはすっかりと暗くなっており、間もなく夜がくる。
月明かりも森の木々で遮られ、完全な暗闇に包まれるだろう。
素人の俺でも分かる。夜の森歩きは危険だ。
夜行の肉食獣だっているかもしれん。
今は身の安全の確保を考えないと!
「か、壁ぇっ!」
――ズシャアッ!
掛け声と共に地面から壁が出現!
その後も三方を壁で囲いその中に入る。
最後に前面に壁を作り、四方が壁に囲まれる形となった。
と、とりあえずこの中にいれば安全……だよな?
どうか大型の肉食獣とか魔物とか現れませんように……。
「ふぅー……」
一息ついてからドカッと地面に座る。
早く夜が明けることだけを祈るばかりだ。
寝たらすぐに朝になるかな? なんて思い目を閉じるが、怖くて眠れるはずもない。
少し喉も乾いたので、貴重なミンゴの実を食べることにした。
ミンゴは水分が多く僅かに甘味がある。
すごく美味しいというわけではないが、それなりに腹持ちも良い。
お腹が少し満足し、ある程度安全も確保出来た。人にとって必要である食と住が満たされた。少しだけど。
だが先ほどまで感じていた恐怖は少し薄れたみたいだな。
かつて動画でも見たが、人は悪い状況にいると負の思考に囚われる。
今の俺はミンゴを食べ、固有の能力である壁で安全は確保されている。
少し考える余裕が出てきた。
よし、せっかくだし夜が明ける時間を利用して壁で何が出来るか考えてみよう。
どうやら俺が使える能力は壁らしい。
文字通り、地面から壁を生み出す能力だ。
四方を壁で覆うことで簡易的な住居を作ることが出来る。天井はないけど。
雨が降ったらずぶ濡れになっちゃうなぁ。
そういえばさ、壁って基本的に縦方向に建ってるから壁なのかな?
横方向に壁を発生させれば天井が出来たりして。
ちょっと試してみるかな。四方を覆う壁の上を指差して言葉を発してみる。
「壁!」
――ズシャアッ
「出来んのかい!」
突っ込んでしまった。上部にあった穴は横方向に生えた壁により塞がれた。
な、何気に便利な能力だな。
でも天井を付けると内部が真っ暗になってしまうので、今は天井は消すことにした。
そうだ。こんなのはどうだろう?
壁の形を変えるとか?
中は狭いので、小さな壁をイメージする。
すると小さな壁や細長い壁などを生み出すことが出来る。だが基本的には四角形で限定されるようだ。
丸い壁や三角の壁なんかは出来ないことが分かった。
ならこんなことはどうかな?
地面から生えた長い壁の根元のみをイメージしつつ……。
「消えろ」
――フッ パタンッ
支えを失った壁はただの木の板へと変わる。
へー。壁限定ではあるが、一部を消すことで工作なんかも出来るかもしれない。
何かを作る時の素材として利用出来るかも。
せっかくだ。小さい壁を利用して木製の入れ物なんか出来るかな?
どうやら壁を消すのは自在のようで、四角い穴を開けることも可能らしい。
簡素ではあるが、凹型の入れ物はあっという間に出来上がってしまった。
なんか楽しいな。どうやら壁を発動するためにいわゆる魔力なんかは必要無いらしい。
壁オンリーではあるが、作り放題なのだ。
ん? そうえいばだよ。こんなことにも利用出来るかもね。
朝が来たら試してみようかなー。
いつの間にか恐怖は消え去り、お気楽な気持ちで眠ることが出来た。
◇◆◇
目が覚めると壁の内部に朝日が差し込んでいる。
ふあぁ、昨日よりは安眠出来たかな?
壁を解除して外に出る。
今のところ獣の気配は感じられない。
でもやっぱり怖いので、早々に森を出ることにした。
昨日寝る前に思い付いたのは二つ。
一つは広野と森の境目に拠点を作ることだ。
森の中はミンゴだけではなく、他にも食べられる物や、まだ見つけてはいないが水源があるだろう。
しかしサバイバル知識が無い挙げ句、使える能力が壁のみでは万が一獣、魔物に襲われてしまっては一溜りも無いだろう。
俺は死にたくないのだ。
そして二つ目だ。昨夜は狭い壁で囲んだ空間で実験を行った。
割りと小さい壁であれば、自由に作り出すことが出来る。
なら全力で壁を作ったとしたらどうだろうか?
昨日俺が生み出した壁は高さ三メートル程であった。
特に考えなしに生み出した壁がその高さなのだから、三メートルがデフォなのかもね。
だが高くて大きな壁ならどうだろうか?
それが昨日思い付いた二つ目だ。
よし、試してみるか。
俺はとある木の下に移動する。
上にはたわわに実ったミンゴの実が生っている。
イメージするのは十メートルはあろうかという高い壁。
上手くいってくれよ?
手をかざしつつ、全力で唱える!
「壁ぇっ!」
――ズゴォンッ!
現れたのは幅は一メートル程度の壁だが、それが一瞬で上空高くまで伸びる!
そして俺の狙い通り……。
――パシッ ボタタッ
「よし!」
思わずガッツポーズをしてしまう!
産み出された壁は高い場所に実ったミンゴに当たり、地面に落ちてきたのだ。
これで木に登ったり、石を投げたりせずに済む。
食糧が果物だけというのも問題だが、少なくとも飢えはしのげるし、何より水分を摂ることが出来る。
食糧が安定的に手に入るだけでも気持ちが軽くなるな。
俺は昨日作った入れ物にミンゴを入れ、一度森を出ることにした。
0
お気に入りに追加
438
あなたにおすすめの小説
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる