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プロローグ①
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『敵襲だー!!!』
野太い声をした全身に鉄の鎧を着込んだ兵士が鐘を鳴らしながら、手に持った魔道具で声を拡張し、叫ぶ。
その声には焦りと怯えが混じっている。
それもそうだろう。彼の見ている光景は正に地獄絵図。
金の鎧を装着した馬に乗る黄金の鎧に赤色の装飾がされた大男を筆頭に、ざっと3万を超える騎兵がこちらに向かって蠢いている。そして3メートルはあるゴーレムが4体ほど、兵士たちを守るように配置されていた。
小国であるこの国を滅ぼすのには十分すぎる兵力が、死が迫ってくる。
そこからはただの一方的な殺戮が始まった。
矢は魔道具で作った防壁で阻まれ、国を囲っている岩の壁はゴーレムによって無慈悲に破壊される。
兵士たちが放った火矢で家は燃やされ、逃げ遅れた犬や猫の耳が生えた住民たちは斬り殺される。死体は馬車に積まれて、要らないものはその場で燃やされた。
平和だった日常がいとも簡単に壊されていく。
小国は一瞬で火の海になり、兵士は笑っていた。
『穢れた魔獣のなり損ないが!貴様らに生きる価値なんてないんだよ!』
悪魔のようなその声が焼け爛れた小国に響く。
「…~い!お~い、あゆむ~!そろそろ起きろ~」
「…ん…」
目を開けると、そこは教室だった。
「あゆむ、お前最近寝すぎじゃないか?」
心配そうな顔をした司(つかさ)が僕を見る。
なんだか長い夢を見たような感覚。
どんな夢だったかは微かにしか覚えているような覚えていないような。
「今何時~?」
「3時20分、HRはあゆむが寝てる間に終わったぞ」
教室に誰も居ないのを見て薄々感じていたけど、もう放課後らしい。
「そっか~、起こしてくれてありがとね~♪つかさ~」
まだ眠気がすごいせいか声が自然と甘えたような声色になってしまうが、今はそんなこと気にするほど頭は働いていなかった。
なんとな~く司の方を見ていたら顔を赤くしていて、司って不思議だな~と思った。
「早く帰らないか?」
「うん!帰る~」
まだ頭がぽわぽわして、ぼ~っとする。
2人で横並びになって帰路を歩く。
「そうそう!最近気になってる作品があってね~!飼い犬がケモ耳ショタになった日って言うんだけどさ~!」
「へー、おにショタなのか?」
僕は腐男子で、司は最近そういう作品を見始めた…というか僕がオススメしまくってたら読んでくれるようになった。
「残念!ショタおにでした~!リバ無しの主従逆転ものだよ~、飼い主をガオーってショタが襲っちゃう話~!」
何となく司に向かってガオーという、ジェスチャーした。
すると、何故か司はニマニマとしながら頭を撫でてくる。
「頭撫でるな~!子供扱いみたいでなんかヤダ~」
「そう言って目、細めてるくせに」
まあ司に撫でられるのは嫌いではない!
司の手はおっきくて温かくて安心する。
「へへ…バレた?」
自然とニヤニヤしてしまう。
「何年幼馴染みやってると思ってるんだ?」
司とは18年間、ずっと一緒に育ってきた。
家も隣で親同士の仲がとても良い。恐らく大学も一緒!
「ってか18年間一緒に過ごしてるはずなのになんでこんなに身長違うんだよ~!おかしい!」
僕が168cmで司が確か182cm…高い!
「なんでこんなに差があるの!僕は苦言を呈します!」
ちなみに苦言を呈すの意味は知らない。
「身長は親の遺伝子が8割って言うしな~」
「だから司はでっかいのかぁ…」
うちの親は父173cmくらい母158cmくらいだった気がする…。
「俺はそのままの身長でも良いと良いと思うけどな~。頭撫でやすいし」
「ならいいか…ってならないよ!僕だっておっきくてカッコイイ大人っぽい男になりたい!」
司はニコニコとしながら僕の頭を撫でた。
「いつか抜かすから!」
「そっか期待してるよ」
司は僕を見つめながら落ち着いた声で言う。
かっこいい。不意にそう思ってしまう。
野太い声をした全身に鉄の鎧を着込んだ兵士が鐘を鳴らしながら、手に持った魔道具で声を拡張し、叫ぶ。
その声には焦りと怯えが混じっている。
それもそうだろう。彼の見ている光景は正に地獄絵図。
金の鎧を装着した馬に乗る黄金の鎧に赤色の装飾がされた大男を筆頭に、ざっと3万を超える騎兵がこちらに向かって蠢いている。そして3メートルはあるゴーレムが4体ほど、兵士たちを守るように配置されていた。
小国であるこの国を滅ぼすのには十分すぎる兵力が、死が迫ってくる。
そこからはただの一方的な殺戮が始まった。
矢は魔道具で作った防壁で阻まれ、国を囲っている岩の壁はゴーレムによって無慈悲に破壊される。
兵士たちが放った火矢で家は燃やされ、逃げ遅れた犬や猫の耳が生えた住民たちは斬り殺される。死体は馬車に積まれて、要らないものはその場で燃やされた。
平和だった日常がいとも簡単に壊されていく。
小国は一瞬で火の海になり、兵士は笑っていた。
『穢れた魔獣のなり損ないが!貴様らに生きる価値なんてないんだよ!』
悪魔のようなその声が焼け爛れた小国に響く。
「…~い!お~い、あゆむ~!そろそろ起きろ~」
「…ん…」
目を開けると、そこは教室だった。
「あゆむ、お前最近寝すぎじゃないか?」
心配そうな顔をした司(つかさ)が僕を見る。
なんだか長い夢を見たような感覚。
どんな夢だったかは微かにしか覚えているような覚えていないような。
「今何時~?」
「3時20分、HRはあゆむが寝てる間に終わったぞ」
教室に誰も居ないのを見て薄々感じていたけど、もう放課後らしい。
「そっか~、起こしてくれてありがとね~♪つかさ~」
まだ眠気がすごいせいか声が自然と甘えたような声色になってしまうが、今はそんなこと気にするほど頭は働いていなかった。
なんとな~く司の方を見ていたら顔を赤くしていて、司って不思議だな~と思った。
「早く帰らないか?」
「うん!帰る~」
まだ頭がぽわぽわして、ぼ~っとする。
2人で横並びになって帰路を歩く。
「そうそう!最近気になってる作品があってね~!飼い犬がケモ耳ショタになった日って言うんだけどさ~!」
「へー、おにショタなのか?」
僕は腐男子で、司は最近そういう作品を見始めた…というか僕がオススメしまくってたら読んでくれるようになった。
「残念!ショタおにでした~!リバ無しの主従逆転ものだよ~、飼い主をガオーってショタが襲っちゃう話~!」
何となく司に向かってガオーという、ジェスチャーした。
すると、何故か司はニマニマとしながら頭を撫でてくる。
「頭撫でるな~!子供扱いみたいでなんかヤダ~」
「そう言って目、細めてるくせに」
まあ司に撫でられるのは嫌いではない!
司の手はおっきくて温かくて安心する。
「へへ…バレた?」
自然とニヤニヤしてしまう。
「何年幼馴染みやってると思ってるんだ?」
司とは18年間、ずっと一緒に育ってきた。
家も隣で親同士の仲がとても良い。恐らく大学も一緒!
「ってか18年間一緒に過ごしてるはずなのになんでこんなに身長違うんだよ~!おかしい!」
僕が168cmで司が確か182cm…高い!
「なんでこんなに差があるの!僕は苦言を呈します!」
ちなみに苦言を呈すの意味は知らない。
「身長は親の遺伝子が8割って言うしな~」
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「ならいいか…ってならないよ!僕だっておっきくてカッコイイ大人っぽい男になりたい!」
司はニコニコとしながら僕の頭を撫でた。
「いつか抜かすから!」
「そっか期待してるよ」
司は僕を見つめながら落ち着いた声で言う。
かっこいい。不意にそう思ってしまう。
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