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社畜、転生します。

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 大学を卒業し、特にやりたいこともなく適当なホワイトそうな会社に入社した。


 入社当時はミスばかりでよく怒られたが、まだ楽しかった。


でも徐々に休日出勤出勤が増えていき、最高では38連勤。


 通常の会社では13連勤以上は労働基準法に違反すると聞いたが、私の最高は38連勤。


 有給休暇も使わせて貰えず、残業は当たり前の毎日。


 労働基準法ってなんだっけ。


 精神的にも肉体的にも疲労しきった私は、会社で突然倒れた。


 目を開けると、目の前には1人の女性が背もたれが長い椅子に座っていた。

「霧島さん、あなたは度重なる休みのない労働の末、過労死しました」
「過労死?……そっか、私死んだんだ」

 不思議と私は落ち着いていた。
 死んだという実感がないのもあったのかもしれない。

「あなたは神様ですか?」
「左様です」

 神様は綺麗な黒髪のロングヘアで頭の上に天使の輪っかが付いている。服は白い装飾のなまりないドレスを着ている。

「あなたには2つの選択肢があります」
「2つの選択肢…」

 神様はそう言って、空中に2つの不透明な長方形の板を呼び出した。

「1つ目は元いた国、日本にまた赤子として転生するか」

 不透明な板に神様が言う選択肢1が文字で表示される。

「2つ目は別の世界に転生する」

 1つ目同様にもう1つの板に2つ目の選択肢が現れる。

「2でお願いします」
「即答ですね。もう日本に思い残すことはないんですか?」

 日本に転生しても同じ末路を辿る未来しか浮かばない。
 それなら行ったことのない世界に行く方がまだ良いかもしれないと思ったからだ。

「はい」
「でしたら、霧島さんに行って欲しい世界があります」
「どうな世界でしょうか?」
「私の世界です。まだ創造したばかりなので文明は霧島さんの世界でいう西暦600年頃の中世ヨーロッパ?に近いでしょうか」

 そう言われても分からないけど、そのくらいの中世ヨーロッパだと貴族や騎士といった爵位や階級がある時代だったかな。
 それよりも、

「神様が作った世界ってなんですか?」
「そうですね、神は1柱につき1つの世界を創造するものです。そしてその世界が良くなるよう神は尽力しなければなりません。私の世界は平等であり平和な世界にしていきたいのです。そのため、霧島さんに私の世界に転生していただきたいのでです」
「じゃあその世界でお願いします」
「え…良いんですか?そんなに簡単に選んで」
「はい」

 平等で平和な世界があるんなら、それ以外に選択肢はない。
 私は平和でのんびりとした生活がしたい。好きな時に寝て、少し労働して、ちゃんと定時に帰って寝る。そんな理想郷が実現できるのなら。

「霧島さんはとてもお優しい方ですね…では次に転生ボーナスをお選びください」
「転生ボーナス?なんですかそれ」
「神が気に入った人間に付けるボーナスです」

 神様はニコニコと笑顔で言ってくる。平等な世界目指してるのにそこはいいのか。

「どんなのがあるんですか?」
「なんでもありますよ?」
「なんでも?」
「はい。魔力無限やチートな剣や防具、災害を起こせる魔法に私に匹敵する知恵、不老不死他など、他にも色々と」

 …魔法?魔法があるって?ということは重い荷物を持つ魔法や疲労を回復させる魔法、一瞬で家に帰って来れる魔法とあるかも!

「魔法を使えるようにしてください!」
「はい、分かりました。では転生ボーナスは魔法を使えるように。そして見た目は…私が好きな感じにしときますね」
「そこは選ばせてくれないんですか!?」
「大丈夫です任せてください!可愛く仕上げますから!」

 神様は任せてくだい!と自信満々に言う。心配なんだけど…。
 この神様色々と大丈夫なのだろうか。

「では最後にこの書類にサインをお願いします」

 神様が無造作に言うと、私に向かって書類と羽根ペンがゆっくりと飛んでくる。
 日本語で書かれた書類にサインをすると、書類が神様の方へ飛んでいく。
 これも魔法なのかな?

「ありがとうございます。これで契約成立ですね!それでは、来世に行ってらっしゃい!」

 私の足元に白い魔法陣が広がっていく。光の粒が辺りに飛んで意識が遠のいていく。

「私も度々見に行きますから!」

 眠るように意識が途絶え、次に目がされると、そこは異世界だった。
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