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モブは旅立ちの日を迎える
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初めて二人を泉に連れて行ってから三日。
『禁断の裏技』を使ってのミラとリベラのレベル上げは順調に進んでいた。
たぶんあと数日あれば二人ともカンストするだろうが、俺たちは今日中にスミク村を旅立たなくてはならなくなっていた。
なぜなら商人のハーシェクから昨日「王都へ期日通り戻るためには遅くても明日出発しなくてはならない」と言われ、王都まで勇者であるミラに同行して貰いたいと頼まれたからであった。
本来用意しなければならなかった食器類がグレーターデーモンによって破損し、揃えられなくなったことを説明した上で許して貰う為には、どうしても勇者であるミラからの説得が必要なのだという。
そしてミラが旅立つのなら聖女であるリベラもその旅に同行するのは必然で。
自動的に俺も着いていくのが当たり前という喰う気になってしまったのだ。
「ごめん。僕一人じゃ不安で」
「かまわないさ。どうせ俺も勇者様にはついていくつもりだったしな」
「君の場合僕にじゃなくて聖女様にだろ?」
苦笑気味にそんなことを言うミラに俺は小さく首を振る。
「いや。俺はリベラだけじゃなくて君も守りたいと思ってる」
「えっ」
その言葉に驚いた表情で固まるミラ。
「あのグレーターデーモンは言ってただろ。聖女と勇者を殺すって」
「……そうだったかな?」
「魔王自身が指示したかどうかは解らないけど、魔王軍は勇者と聖女を狙っていることはまちがいない」
せめてレベルがカンストまで上げられていれば俺がいなくてもなんとかなるかもしれない。
だが今の二人はまだ道半ばである。
この先、ミラが辿る道筋がドラファンと全く同じものであるなら今のレベルなら楽勝だ。
だが本来なら一年以上先でやってくるはずのグレーターデーモンがこの時期に現れ村を襲うというゲームではあり得ない展開が既に起こっている。
それがイレギュラーで、この先は元通りゲーム通りの展開になるなんて確証はない以上、俺は二人から離れるわけには行かないのだ。
「俺たちは勇者パーティなんだから一緒じゃないとおかしいだろ」
「アーディがリーダーなんだけどね」
「いい加減リーダー変わってくれよ」
俺はわざとミラを和ませようと話の方向性を変える。
「勇者パーティと言えば、リベラはどこいったんだ?」
「あれ? ちょっと前までそこにいたはずなのに」
別に俺はミラと二人っきりで立ち話をしていたわけでは無い。
旅立ちのための荷物を家でまとめて修理の終わった馬車に積み込むために俺たち三人で一緒にこの場所へ来た所だったからだ。
「何か忘れ物でもしたんだろうか」
「かもね」
俺たちはそう言葉を交し、リベラの家の方へ視線を向けた。
そのとき。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
「奇跡だあああああああああああっ!」
「ありがとう! ありがとう!」
突然後方にある馬車の向こう側から、そんな男たちの歓喜に満ちた声が轟いたのである。
「えっ、何?」
「行ってみよう」
俺たちは一体何が起こったのか確かめるべく馬車を回って反対側へ向かい、そこに繰り広げられている光景を見て唖然としてしまった。
「えっへん! 私の魔法、凄いでしょ!」
大勢の村人や商人たちが、たった一人の少女に向かって祈りを捧げるように跪いているその状況に俺はどう反応していいか解らない。
「あっ、アーディ。ミラ」
「いったいお前、何したんだよ」
「実はねぇ、わ・た・し」
リベラはもったいぶった用に言葉を溜めたあと、何故かくるりと回ってから――
「修復師さんの使うリペアの魔法を覚えたから壊れたお皿とかコップとかぜーんぶ治しちゃいましたー!」
満面のドヤ顔でそう言い放ったのだった。
『禁断の裏技』を使ってのミラとリベラのレベル上げは順調に進んでいた。
たぶんあと数日あれば二人ともカンストするだろうが、俺たちは今日中にスミク村を旅立たなくてはならなくなっていた。
なぜなら商人のハーシェクから昨日「王都へ期日通り戻るためには遅くても明日出発しなくてはならない」と言われ、王都まで勇者であるミラに同行して貰いたいと頼まれたからであった。
本来用意しなければならなかった食器類がグレーターデーモンによって破損し、揃えられなくなったことを説明した上で許して貰う為には、どうしても勇者であるミラからの説得が必要なのだという。
そしてミラが旅立つのなら聖女であるリベラもその旅に同行するのは必然で。
自動的に俺も着いていくのが当たり前という喰う気になってしまったのだ。
「ごめん。僕一人じゃ不安で」
「かまわないさ。どうせ俺も勇者様にはついていくつもりだったしな」
「君の場合僕にじゃなくて聖女様にだろ?」
苦笑気味にそんなことを言うミラに俺は小さく首を振る。
「いや。俺はリベラだけじゃなくて君も守りたいと思ってる」
「えっ」
その言葉に驚いた表情で固まるミラ。
「あのグレーターデーモンは言ってただろ。聖女と勇者を殺すって」
「……そうだったかな?」
「魔王自身が指示したかどうかは解らないけど、魔王軍は勇者と聖女を狙っていることはまちがいない」
せめてレベルがカンストまで上げられていれば俺がいなくてもなんとかなるかもしれない。
だが今の二人はまだ道半ばである。
この先、ミラが辿る道筋がドラファンと全く同じものであるなら今のレベルなら楽勝だ。
だが本来なら一年以上先でやってくるはずのグレーターデーモンがこの時期に現れ村を襲うというゲームではあり得ない展開が既に起こっている。
それがイレギュラーで、この先は元通りゲーム通りの展開になるなんて確証はない以上、俺は二人から離れるわけには行かないのだ。
「俺たちは勇者パーティなんだから一緒じゃないとおかしいだろ」
「アーディがリーダーなんだけどね」
「いい加減リーダー変わってくれよ」
俺はわざとミラを和ませようと話の方向性を変える。
「勇者パーティと言えば、リベラはどこいったんだ?」
「あれ? ちょっと前までそこにいたはずなのに」
別に俺はミラと二人っきりで立ち話をしていたわけでは無い。
旅立ちのための荷物を家でまとめて修理の終わった馬車に積み込むために俺たち三人で一緒にこの場所へ来た所だったからだ。
「何か忘れ物でもしたんだろうか」
「かもね」
俺たちはそう言葉を交し、リベラの家の方へ視線を向けた。
そのとき。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
「奇跡だあああああああああああっ!」
「ありがとう! ありがとう!」
突然後方にある馬車の向こう側から、そんな男たちの歓喜に満ちた声が轟いたのである。
「えっ、何?」
「行ってみよう」
俺たちは一体何が起こったのか確かめるべく馬車を回って反対側へ向かい、そこに繰り広げられている光景を見て唖然としてしまった。
「えっへん! 私の魔法、凄いでしょ!」
大勢の村人や商人たちが、たった一人の少女に向かって祈りを捧げるように跪いているその状況に俺はどう反応していいか解らない。
「あっ、アーディ。ミラ」
「いったいお前、何したんだよ」
「実はねぇ、わ・た・し」
リベラはもったいぶった用に言葉を溜めたあと、何故かくるりと回ってから――
「修復師さんの使うリペアの魔法を覚えたから壊れたお皿とかコップとかぜーんぶ治しちゃいましたー!」
満面のドヤ顔でそう言い放ったのだった。
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