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モブは驚愕の真実に思い至る
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もう少しミラと話をしていたかったが俺たちにも仕事がある。
話なら仕事が終わってからでも出来るだろうとそのままミラと別れた俺は、既に荷物の積み卸しを始めていたテイラーたちに遅れたことをわびてから作業を始めた。
商隊の馬車から指示された荷物を降ろし、空いた馬車に商人が確認し終えたスミク村の品物を積んでいく。
俺は主に馬車の外で荷物の受け渡しをする役割をまかされた。
その役割が一番力を必要とするからだ。
今まではテイラーがそれを任されていたが、最近は俺とテイラーが交代交代で行うことになっていた。
それもこれもレベル上げと毎日の筋トレで、既に村の結界の中でも彼より力を出せるようになったおかげだろう。
「これで最後だ。アーディ、持ち上げてくれ」
「はいはい」
ポグルスがもう一人の村人と共に二人で抱えてきた木箱を受け取る。
それを馬車の荷台に持ち上げると、中で待機していたフェルラが引きずっていき縄で固定した。
「いやぁ助かりましたよ」
あふれ出る汗を拭いながら、少し太めの体の商人がやってくると俺たちにねぎらいの言葉を掛ける。
彼の名は……聞いてなかったな。
特にモブ商人の名前を覚える必要は無いから自己紹介されない限り聞く必要はないと放置していた。
「突然王都に国中の貴族を呼ぶということになったから、至急に色々用意してくれと言われましてね」
モブ商人は最近すっかり涼しくなったというのに汗を流しながら話を続ける。
「王都に貴族様たちを?」
「パーティでもするんかね」
「お貴族様ってのはいっつも豪華なパーティをしてるって聞くからな」
「こちとらが必死に働いて作ったもんをタダ同然に税だっていって持っていって、それで作った金で贅沢三昧とかやってらんねぇな」
村人たちが口々に不満を漏らす。
「あの人たちもあの人たちで大変なのですよ。それにこのあたりを治めていらっしゃるリリアルド様はきっちりと仕事は出来るお方ですしね」
仕事『は』出来るという所に若干含みを感じて俺はドラファンでのリリアルドイベントを思い返していた。
このあたりはヘルメアート領という領地で、領主であるリリアルドが住む領都ヘルメアートはハシク村から川を下った場所にある。
ゲームではスミク村とハシク村しか存在しないといういかにもゲーム最序盤というエリアだった。
ちなみに現実世界となった今はハシク村から領都までいくだけで川を下って一日以上掛かるが、ゲームでは一画面くらいしか離れていない。
「一番最初に魔王軍の攻撃を受けて壊滅する辺境の領地ヘルメアート……か」
最初にスミク村がリベラを残し全滅させられてしまい、次に聖女リベラの覚醒。
そしてそれを助けた勇者が逃げ帰ったハシク村が追撃部隊によって襲われる。
ハシク村の強制負けイベントで、村人たちによって川に逃がされた勇者と聖女は、魔王軍襲来を知らせるために下流の領都へ向かうという流れだったはずだ。
「でも信じて貰えず牢屋に放り込まれてRPGでよくある牢屋イベントが始まって、やっと外に出ると領都は既に火の海で……」
牢屋から抜け出した勇者一行は魔王軍の襲撃を受けて燃えさかる領都の中を逃げ回ることになる。
最終目的地の領主館にたどり着くまで数歩歩いては魔物との戦闘が始まるというクソエンカウント率。
さらに回復アイテムは逃げる道すがら魔物によって殺された人たちの死体を『しらべる』ことでしか入手出来ないという鬱仕様。
「嫌なこと思い出しちまった」
「嫌なことって何? 昨日畑の横の道で馬の糞を踏んじゃったこと?」
「それもすげー嫌だったけど……ってリベラ!?」
知らずに口にしていた俺の言葉尻を聞いたのだろう。
いつの間にか側にリベラがいた。
そしてどうしてか少し怒ったような表情で俺を見ている彼女を除いて、いつの間にかみんなの姿が広場から消えていた。
「あれ? みんなは?」
「とっくに商人さんと酒場に行ったわよ」
どうやら考え事をしている内に置いて行かれたらしい。
薄情だ……。
「私もこれから行くつもりだけどアーディはどうするの?」
「うーん、俺はちょっと用事があるから後で行くよ」
俺は広場を見渡してミラの姿を探す。
仕事が終わったら彼女には村に来た理由を含めて詳しい話を聞くことになっていた。
「アーディ」
「なんだよ」
「あの男の人を探してるんでしょ?」
男の人……。
「広場に来る前にあそこのベンチで楽しそうに話してたじゃない」
ああ、そうか。
今日もミラは男装をしていた。
だからリベラには男に見えたわけだ。
そのミラと俺がベンチで話しているのを彼女は見ていたらしい。
なぜミラが男の格好をしているのか。
おかげでその理由も聞いていなかったことを思い出した。
「あいつはミラっていって、この前ハシク村に行ったときに知り合って仲良くなったんだ」
「ふーん。あんなイケメンとアーディが仲良くね」
「なんだよ」
「アーディが引き立て役になってたんだろうなって思ったの」
確かに俺は所詮村人Aのモブ顔である。
ミラやリベラみたいな主要キャラと並んだら役者不足にも程があるだろう。
「ん?」
ちょっとまて。
ミラが主要キャラ?
いや、ドラファンにはミラなんてキャラは出てこなかったはず。
あんな他の人たちに比べて一段も二段も顔が整っているモブキャラが果たして存在するのだろうか。
あの時代のゲームは説明書やパッケージイラストに載っている主要キャラ以外はドット絵でしか表現されていなかった。
なのでもしかするとその中に制作者がイケメン村人として設定したキャラがいてもおかしくはないが。
しかしシナリオにも絡まないモブキャラに男装の麗人みたいな設定まで付けるだろうか?
色々いい加減なドラファンスタッフがモブキャラにそこまで属性を組み込むとは考えられない。
だとするとミラはモブキャラではないということになるわけだが。
「……もしかしてミラは……」
話なら仕事が終わってからでも出来るだろうとそのままミラと別れた俺は、既に荷物の積み卸しを始めていたテイラーたちに遅れたことをわびてから作業を始めた。
商隊の馬車から指示された荷物を降ろし、空いた馬車に商人が確認し終えたスミク村の品物を積んでいく。
俺は主に馬車の外で荷物の受け渡しをする役割をまかされた。
その役割が一番力を必要とするからだ。
今まではテイラーがそれを任されていたが、最近は俺とテイラーが交代交代で行うことになっていた。
それもこれもレベル上げと毎日の筋トレで、既に村の結界の中でも彼より力を出せるようになったおかげだろう。
「これで最後だ。アーディ、持ち上げてくれ」
「はいはい」
ポグルスがもう一人の村人と共に二人で抱えてきた木箱を受け取る。
それを馬車の荷台に持ち上げると、中で待機していたフェルラが引きずっていき縄で固定した。
「いやぁ助かりましたよ」
あふれ出る汗を拭いながら、少し太めの体の商人がやってくると俺たちにねぎらいの言葉を掛ける。
彼の名は……聞いてなかったな。
特にモブ商人の名前を覚える必要は無いから自己紹介されない限り聞く必要はないと放置していた。
「突然王都に国中の貴族を呼ぶということになったから、至急に色々用意してくれと言われましてね」
モブ商人は最近すっかり涼しくなったというのに汗を流しながら話を続ける。
「王都に貴族様たちを?」
「パーティでもするんかね」
「お貴族様ってのはいっつも豪華なパーティをしてるって聞くからな」
「こちとらが必死に働いて作ったもんをタダ同然に税だっていって持っていって、それで作った金で贅沢三昧とかやってらんねぇな」
村人たちが口々に不満を漏らす。
「あの人たちもあの人たちで大変なのですよ。それにこのあたりを治めていらっしゃるリリアルド様はきっちりと仕事は出来るお方ですしね」
仕事『は』出来るという所に若干含みを感じて俺はドラファンでのリリアルドイベントを思い返していた。
このあたりはヘルメアート領という領地で、領主であるリリアルドが住む領都ヘルメアートはハシク村から川を下った場所にある。
ゲームではスミク村とハシク村しか存在しないといういかにもゲーム最序盤というエリアだった。
ちなみに現実世界となった今はハシク村から領都までいくだけで川を下って一日以上掛かるが、ゲームでは一画面くらいしか離れていない。
「一番最初に魔王軍の攻撃を受けて壊滅する辺境の領地ヘルメアート……か」
最初にスミク村がリベラを残し全滅させられてしまい、次に聖女リベラの覚醒。
そしてそれを助けた勇者が逃げ帰ったハシク村が追撃部隊によって襲われる。
ハシク村の強制負けイベントで、村人たちによって川に逃がされた勇者と聖女は、魔王軍襲来を知らせるために下流の領都へ向かうという流れだったはずだ。
「でも信じて貰えず牢屋に放り込まれてRPGでよくある牢屋イベントが始まって、やっと外に出ると領都は既に火の海で……」
牢屋から抜け出した勇者一行は魔王軍の襲撃を受けて燃えさかる領都の中を逃げ回ることになる。
最終目的地の領主館にたどり着くまで数歩歩いては魔物との戦闘が始まるというクソエンカウント率。
さらに回復アイテムは逃げる道すがら魔物によって殺された人たちの死体を『しらべる』ことでしか入手出来ないという鬱仕様。
「嫌なこと思い出しちまった」
「嫌なことって何? 昨日畑の横の道で馬の糞を踏んじゃったこと?」
「それもすげー嫌だったけど……ってリベラ!?」
知らずに口にしていた俺の言葉尻を聞いたのだろう。
いつの間にか側にリベラがいた。
そしてどうしてか少し怒ったような表情で俺を見ている彼女を除いて、いつの間にかみんなの姿が広場から消えていた。
「あれ? みんなは?」
「とっくに商人さんと酒場に行ったわよ」
どうやら考え事をしている内に置いて行かれたらしい。
薄情だ……。
「私もこれから行くつもりだけどアーディはどうするの?」
「うーん、俺はちょっと用事があるから後で行くよ」
俺は広場を見渡してミラの姿を探す。
仕事が終わったら彼女には村に来た理由を含めて詳しい話を聞くことになっていた。
「アーディ」
「なんだよ」
「あの男の人を探してるんでしょ?」
男の人……。
「広場に来る前にあそこのベンチで楽しそうに話してたじゃない」
ああ、そうか。
今日もミラは男装をしていた。
だからリベラには男に見えたわけだ。
そのミラと俺がベンチで話しているのを彼女は見ていたらしい。
なぜミラが男の格好をしているのか。
おかげでその理由も聞いていなかったことを思い出した。
「あいつはミラっていって、この前ハシク村に行ったときに知り合って仲良くなったんだ」
「ふーん。あんなイケメンとアーディが仲良くね」
「なんだよ」
「アーディが引き立て役になってたんだろうなって思ったの」
確かに俺は所詮村人Aのモブ顔である。
ミラやリベラみたいな主要キャラと並んだら役者不足にも程があるだろう。
「ん?」
ちょっとまて。
ミラが主要キャラ?
いや、ドラファンにはミラなんてキャラは出てこなかったはず。
あんな他の人たちに比べて一段も二段も顔が整っているモブキャラが果たして存在するのだろうか。
あの時代のゲームは説明書やパッケージイラストに載っている主要キャラ以外はドット絵でしか表現されていなかった。
なのでもしかするとその中に制作者がイケメン村人として設定したキャラがいてもおかしくはないが。
しかしシナリオにも絡まないモブキャラに男装の麗人みたいな設定まで付けるだろうか?
色々いい加減なドラファンスタッフがモブキャラにそこまで属性を組み込むとは考えられない。
だとするとミラはモブキャラではないということになるわけだが。
「……もしかしてミラは……」
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