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私が倒してしまっても良いのでしょ?
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「それでは皆さん、作戦通りにお願いしますわね」
私がそう告げると王国軍を迎え撃つフォルスト領軍が一斉に見事な動きで持ち場へ移動していきます。
兵のほとんどは、日頃は畑を耕し猟をしている領民たちでした。
だけれど長い間、この地で外敵を相手に戦い続けてきた者たちです。
一度も戦を経験していない王国軍のような烏合の衆である寄せ集めとは練度が違います。
少し高台となった場所から王国軍の上げる土煙が見えてきました。
斥候に放った侍従の話から、予想通り騎兵部隊の先頭で駆けてくるのがガラハッドであることは伝わってきております。
しかし、血気に逸るせいか後方の歩兵部隊が付いてこれていないらしく、騎馬部隊だけが突出してしまっているらしいのです。
「愚かですね」
「いかがいたしましょう」
「そうですわね。でしたら――」
私は斥候からの報告を元に作られた戦況を描いた地図を指さしながらイザベルに応えます。
「あの方たちは私たちを甘く見すぎているようですから、ありがたくその騎馬部隊を殲滅しちゃいましょう」
私はイザベルを通じて各部隊に指示を伝えると、自らも軍馬を駆って丘を駆け下りていきます。
目標は先頭を目を血走らせて向かってくるガラハッド。
「アンネ様、回りの雑兵は我々が」
「別に全員私が倒してしまっても良いのでしょ?」
「それでは私たちの溜飲が下がりませんので」
「そうね。わかったわ」
そんな話をしているうちに、各部隊と打ち合わせした作戦開始地点をガラハッドの騎馬部隊が通過します。
その場所は山を切り開いた幅100メートルほどの道で、我が領へ攻め込むにはそこを通るしかありません。
「いまよ!」
伝令役に送り込んでいた侍女の一人の号令と共に山陰に潜んでいた我が軍の別働隊が動きます。
彼らは騎馬部隊が通り過ぎた後に壁を築き、騎馬の退却を阻止すると同時に最終的に岩を崖上から落とすことで道を完全に塞ぎ後方から遅れて来る部隊を足止めする役割をになっています。
王国軍とはいえ、そのほとんどは何の罪も無い国民です。
後のことを考えれば彼らをこんな戦で失うのは国家の損失でしかありません。
ですのでなるべく被害を少なくして、主に叩くのはその頭に決めていました。
「ここまでは作戦通りですわね」
こんな作戦は戦に慣れている相手には効くはずもありませんが、功に焦って怒りに我を忘れているガラハッドのような者は簡単に嵌まってくれるので笑いが止まりません。
ですがガラハッドたちはそんなことにも気づかず、私めがけて今も一直線で突き進んできています。
「猪武者とはあのような者の事を言うのでしょうね」
全く周りが見えていない様な者が、この王国の最強を名乗っていたなんて。
「本当の最強というものを見せてあげましょう。皆、行くわよ!」
「「「はい!」」」
私の号令と共にイザベルをはじめとした侍女たちが散会していきます。
私には及ばないものの、彼女たちもお父様が鍛えた一騎当千の猛者たちです。
なんの心配もいりません。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 小娘ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「あらあら、そんなに大声を上げられては迷惑ですわよ」
「黙れ!! 死ねぇぇぇい!!」
他の者たちに脇目も振らず、私に向かって一直線に突っ込んできたガラハッドの攻撃を、私はいつぞやと同じように軽いステップで躱します。
本当にわかりやすい太刀筋ですこと。
これでしたら辺境の野蛮な部族の兵士の方がまだ工夫を凝らした戦い方をいたしますわよ。
私は思わずため息をこぼしてしまいました。
私がそう告げると王国軍を迎え撃つフォルスト領軍が一斉に見事な動きで持ち場へ移動していきます。
兵のほとんどは、日頃は畑を耕し猟をしている領民たちでした。
だけれど長い間、この地で外敵を相手に戦い続けてきた者たちです。
一度も戦を経験していない王国軍のような烏合の衆である寄せ集めとは練度が違います。
少し高台となった場所から王国軍の上げる土煙が見えてきました。
斥候に放った侍従の話から、予想通り騎兵部隊の先頭で駆けてくるのがガラハッドであることは伝わってきております。
しかし、血気に逸るせいか後方の歩兵部隊が付いてこれていないらしく、騎馬部隊だけが突出してしまっているらしいのです。
「愚かですね」
「いかがいたしましょう」
「そうですわね。でしたら――」
私は斥候からの報告を元に作られた戦況を描いた地図を指さしながらイザベルに応えます。
「あの方たちは私たちを甘く見すぎているようですから、ありがたくその騎馬部隊を殲滅しちゃいましょう」
私はイザベルを通じて各部隊に指示を伝えると、自らも軍馬を駆って丘を駆け下りていきます。
目標は先頭を目を血走らせて向かってくるガラハッド。
「アンネ様、回りの雑兵は我々が」
「別に全員私が倒してしまっても良いのでしょ?」
「それでは私たちの溜飲が下がりませんので」
「そうね。わかったわ」
そんな話をしているうちに、各部隊と打ち合わせした作戦開始地点をガラハッドの騎馬部隊が通過します。
その場所は山を切り開いた幅100メートルほどの道で、我が領へ攻め込むにはそこを通るしかありません。
「いまよ!」
伝令役に送り込んでいた侍女の一人の号令と共に山陰に潜んでいた我が軍の別働隊が動きます。
彼らは騎馬部隊が通り過ぎた後に壁を築き、騎馬の退却を阻止すると同時に最終的に岩を崖上から落とすことで道を完全に塞ぎ後方から遅れて来る部隊を足止めする役割をになっています。
王国軍とはいえ、そのほとんどは何の罪も無い国民です。
後のことを考えれば彼らをこんな戦で失うのは国家の損失でしかありません。
ですのでなるべく被害を少なくして、主に叩くのはその頭に決めていました。
「ここまでは作戦通りですわね」
こんな作戦は戦に慣れている相手には効くはずもありませんが、功に焦って怒りに我を忘れているガラハッドのような者は簡単に嵌まってくれるので笑いが止まりません。
ですがガラハッドたちはそんなことにも気づかず、私めがけて今も一直線で突き進んできています。
「猪武者とはあのような者の事を言うのでしょうね」
全く周りが見えていない様な者が、この王国の最強を名乗っていたなんて。
「本当の最強というものを見せてあげましょう。皆、行くわよ!」
「「「はい!」」」
私の号令と共にイザベルをはじめとした侍女たちが散会していきます。
私には及ばないものの、彼女たちもお父様が鍛えた一騎当千の猛者たちです。
なんの心配もいりません。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 小娘ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「あらあら、そんなに大声を上げられては迷惑ですわよ」
「黙れ!! 死ねぇぇぇい!!」
他の者たちに脇目も振らず、私に向かって一直線に突っ込んできたガラハッドの攻撃を、私はいつぞやと同じように軽いステップで躱します。
本当にわかりやすい太刀筋ですこと。
これでしたら辺境の野蛮な部族の兵士の方がまだ工夫を凝らした戦い方をいたしますわよ。
私は思わずため息をこぼしてしまいました。
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