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5.嘘も方便ってやつですね!

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 ダイニングに移動すると、そこにはもう美味しそうなパスタとサラダが置いてあった。
 いや、なんだこれ!
 プロが作ったのか?ってくらい美しく盛り付けされていてビビるんですけど。


「すごく美味しそうな料理ですね。
どなたが作ったんですか?」

 ナイスクエスチョンだ悠真くん!
 そう、このシェフも顔負け料理を作ったのは

「僕ですよ。料理が趣味なんです」

 明です。こいつ、家事スキルが無駄に高い。掃除洗濯料理に片付け、なんでもこなせるんですね!
 女の私でも全く歯が立たないんだよね。
 いや、弁解しとくと私だって人並みには家事できるよ。
 でも明には勝てぬ。さすがとしか言いようが ない。
  明の作った料理はいつも美味しいのできっとこのパスタたちも蕩けるくらい美味しいに違いない。

「日野さんがですか!
 すごいですね。俺も少しは料理するんですけど、よかったらレシピ教えていただけませんか?」

 へぇ~悠真くんも料理できちゃう系男子なのか!
 いや~最近の子はすごいわ~

「いいですよ。これです」

「おお!すごく分かりやすいですね!
 写真に撮らせていただきます」

 パシャっと写真を撮ったところで全員席に着き食事が開始された。私は悠真くんの隣に座った。



 早速食べると

 …!!!

「お、美味しい!!明ってやっぱりすごいね、すごく美味しい!」

 素直に感想を伝えると

「当然。僕が作ったものが美味しくないわけないでしょ?」

 チッ!こいつ、このナルシストめ!!
 という言葉は美味しいパスタと共に飲み込んでおいた。


 しかし、

「明のご飯って本当に美味しい!また食べたいなぁ~」

 と菫がいうと、柔らかい笑顔を浮かべて

「それは良かった。また作るよ」

 と宣った。
 出ました!必殺!塩対応と砂糖対応!

 説明しよう。
 砂糖対応とは対、菫に発動される篤と明の甘い対応である。
 ちなみに他の人に対してはこの2人は神対応である。
 
 こういうことはいつものことすぎて、もはやムカつくとさえも感じなくなってしまった。
 日々の積み重ねって怖いわー。



 そうこうしつつ、平和にパスタを完食した。
 もっとなんか色々聞かれるかなと思って身構えていたから拍子抜けしちゃうくらい平和だった。

 ホッとして息をついた次の瞬間


「それで、新藤さんはこいつのどこが好きなんです?」

 篤から爆弾発言が投下された。
え、今!?せっかく乗り切ったぜ!的な達成感に浸ろうとした今!?

 あわわわ!
 そんなこと話し合ってないよ…
 どうするんだ!?どうやってこの爆弾を処理すればいいんだ!?

 と脳内で考えていると

「そうですね…
 色々あるんですけど、舞さんの優しいところですかね。
 困ってる人を見捨てられない所とか、すっごく好きだなって思います。」

 …!!!
 悠真くん!この場をやり過ごすための言葉だけど照れてしまうよ…
 異性にこんなこと言われたことないからドギマギしてしまうよ。
 というか、今まで男は私に見向きもしなかったからね!弟はなんだかんだで懐いてくれてたけども…

「へぇ~そうなんだ。ま、こいつより菫の方がもっと優しいけどな!」

 なんだよ!うっざ。ムカつくんだけど!!
 普通そういうこと仮にも人の彼氏の前で言うか!?
 言わないだろ!!

「そうですね、菫の方が気が利きますしね」

 明ぁぁあ!お前もか!お前もそう言うこと言っちゃうのか!!
 まぁ、この2人はいつものことだけど…

「えぇ!そうかな~なんだか照れちゃうな~」

 と菫がもじもじしながら言う。
 はぁ、もう何も言うまい。ここまで含めて通常運転ってところが恐ろしいわ~

「そうなんですか。でも俺にとっては舞さんが一番なんで」

 あぁぁぁぁあ!!!!
 悠真くん!!!!君も爆弾投下しちゃうのかい!?!?
 照れが…照れすぎて顔から火が出そうなんだけど…

 そういうこと言えちゃう悠真くんって絶対只者じゃないな。
 私のHPは今のでガリガリ削れちゃったよ。
 もう瀕死だよ。誰か回復薬持ってきて!!!

「悠真くんって舞ちゃんにメロメロなんだね!」

 あぁぁぁぁあ!!!!
 菫までそんなこと言わないで…もう無理。恥ずかしすぎて死ねる。

「ほんとだね、驚いたな」

 おい!明!やっぱりあんたは失礼だな!
 でもおかげで恥ずかしさがちょっとすっ飛んだわ。

「へぇー。世の中には変わったやつもいるもんだな。良かったな舞」

 うわ~篤の発言が一番腹が立つ。

 なんだよ、変わったやつって!
 悠真くんは変わったやつなんかじゃない!!
 あんたら3人の方が変わってるわ!!

 と心の中で叫んでおく。実際口に出したら、ろくなことにはならないのは今までの経験上わかっている。

 でも、悠真くんのことをそういう言い方するのは許せない。

「ちょっと。変わったやつってなに?
 それ悠真くんに対して失礼じゃない?」

 思わず言ってしまった。

 すると篤もまずいと思ったのか

「すまない。そういうつもりは無かったんだ。許してほしい」

 と悠真くんに謝った。
 なんだよ。こいつ、私に対しては暴言吐いても滅多に謝ったりしないくせに!
とちょっと思ったが、まぁ許す。


 その後、

「ふふ。舞さんが俺のことで怒ってくれるのって嬉しいな。
 俺が舞さんにメロメロって言うのは正解だけどね」

  悠真くんが近づいてきたなと思ったらそう耳打ちされた。
 もう、なんなの!?そんな甘い声で言われたら私の心臓はドッキドキのバックバクなんですけど!?
 悠真くんは私の心臓に悪いな。
 恥ずかしさで下を向いてしまっていると

「ん?舞、下なんか見てどうしたんだ?」

 と篤に聞かれてしまった。

「…。なんでもない」

 と返すだけでいっぱいいっぱいだ。
 ほんと、しばらく顔上げられなさそうなんだけど!だって今、絶対顔赤くなってるもん。




 しばらくしてやっと心の平常を取り戻した。

 さて、ご飯も食べ終わったし、長居は無用だ!
 さっさとズラかろう!

「それじゃ、私達はそろそろ帰るね」

 と言うと

「え!舞ちゃんもう帰っちゃうの!?
 せっかくだしもっと一緒にお話ししたりしようよ~」

 と菫が言った。
 え、無理。ムリムリムリ。
 これ以上あんた達といたら私禿げる自信があるんだけど。
 ただでさえ嘘つくの慣れてないだから、これ以上はほんと無理だ!

 どうやってかわそうかと思っていると

「もっとお話ししたい気持ちはあるんですけど、俺たちこれからデートするのでまたの機会にしてくれませんか?」

 悠真くんがナイスな発言をした。
 お!それなんだかカップルっぽい!!
 どうだ?これなら引き止めることもできるまい!

「菫、諦めなよ。また今度舞とは遊べばいいんだからね。
 2人の邪魔はしちゃダメだよ」

 明!今だけあんたが仏に見えるよ!!
 そうだよね!デートの邪魔する奴は馬に蹴られて死んじゃうもんね!

「う~しょうがないな~
じゃあまたね!」

 よっしゃ!!勝った!勝ったぞ!!




「お邪魔しました。それじゃ、またね」
「お邪魔しました。いろいろお話しできて楽しかったです。」

 靴を履いて挨拶をすると、3人も

「またね~」
「僕も楽しかったです。またいらしてくださいね」
「おう!またな!」

 と見送ってくれた。



 明のマンションから出ると緊張が解けるのがはっきりとわかった。なんだか体がすごく軽くなった気がした。
 今なら空も飛べる気がする。

「悠真くん、本当に今日はありがとう!
おかげでなんとか危機を乗り切ることができたよ!」

「いえ、舞さんのお役に立てたのなら良かった!
 って舞さん、なんかふらふらしてない!?」

「えー。そうかな?
 でもなんだか頭の中ふわふわしてきたかも~」

「もしかして…
 ちょっと触るよ」

 悠真くんの手が私のおでこに触れた。
 いきなりだったからびっくりしたし、恥ずかしい。

「ちょ、悠真くんいきなりどうしたの?」

「…やっぱり。
 舞さんすごい熱が出てる。多分俺の風邪が移っちゃったんだよ」

 へ?熱?
 そう言われてみればなんか頭痛いし熱いかも…

「これはちょっとまずいかも。
 早く家に帰ろう。
 タクシー呼ぶからちょっと待っててね!」


 その悠真くんの言葉を聞いた後、私はいつの間にか意識を失ってしまっていた。
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