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二部1章 ラビニット

リバクセル王

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ゆっくりはまだ無理だが、独りで生きるよりは誰かと生きる方が良い。

とは云え、弱い存在が生きる為には、大人数が必要になる。

それが、生き物として自然な摂理である。

だが、それが頭の良い人類が生き物の上に君臨するのだが、此処では奴隷止まりだ。
それが、ここのルールであり常識なのだ。
今までは、である。

「慌てるな!飯はまだあるから!」

あの男に奴隷にされてるのに、この待遇に驚きながら飯を掻き込んでいる。
食ったら、ゆっくり休んでから歯を磨き暖かい毛布をもらい寝かされたのだ。

それにしても、あの主人は弱い存在を厚遇してくれるのか分からない。俺達の死は、そんなに尊くはない。

傷があれば捨てられ、骨が折れたら殺される。

だから、丈夫で元気であれば使ってもらえて飯が貰える。
此処は良いが、王軍に逆らったのだ。
いずれ、軍隊に襲われるだろう。
それまでは、ありがたいこの場所を楽しもう。

暖かい毛布にくるまって、寝れるのだから。







ーーーーーーー





「な、なに!討伐軍が戻らないだと?」

「はっ。リバリー隊以下34名が帰りません。現在は捜索隊を送っています。」

ライオン顔の男が、杯を一気に空ける。

「もしかしたら、あのお方の逆鱗に触れたか?」

「まさか!」

「最悪な状況も考えて、捜索隊に人数を回せ!非番の者も引っ張り出して、徹底的に捜索させろ!」

「はっ!」

兵が部屋を出ると、男は杯に酒を入れる。

「龍の縄張りに入ったか?王にも報告しないとな。」

酒を一気に飲み干すと、王の元に向かった。
もしかしたら、大変な事をしたのか悩む所だ。

それに、人間がそんな奥地に村を作れる力はない。作るにしても、あのお方の許しを得られるとも思えない。
よしんば、住めたとしても森の動物はとても危険だ。矢で狩れるはずも無く、逆に食料となる。

勝てる存在では無いは良いからと、リバリーが調子に乗ってしまう事ならありそうだ。

心配しなければならないのは、馬鹿な事をしかねない者を選んだ、俺に責任がある。
王が怒られたら、もはや生きてられない。

「アホな行動はするなよ。」

自分の胸を、掴みながら呟いた。
王の自室に招かれ、部屋に入った。

「リバクゼル王に拝謁を。」

男が膝を折って、拝礼をした。

「バリゼット、隊は森に入ったのか?」

「まだ分かりません!」

「早急に調べよ。」

「はっ!」

バリゼットは、逃げる様に部屋を出ようとしたが、

「ああ、もし入っていたら貢ぎ物はお前の娘達だな。」

「急いで確認致します!」

「そうしろ。」

短い間の事だが、バリゼットは肝を冷やした。
龍人たる王の威圧の前に、冷や汗も出ている。
そして、恐ろしいお言葉も。

とにかく、急いで確認をしなければならない。家族の命を守る為に。
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