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第11章 モンスター

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「あ、あ、篤郎!」

「それで。うん?エメリアか。」

エメリアと対峙した篤郎は、少し顔をしかめた。

「あのね、こんな事を頼むのは、違うかも知れないけど、お願い!お願いします!私を助けて!」

「あいよ。」

「えっ、えっ?」

「今回だけだぞ?とりあえず、魔国に行くか。」

「えっーと、はい?」

「じゃ、馬交換だな。」

「馬?」

篤郎の言葉に混乱するエメリア。
馬が要る馬車なのは分かるが、馬を交換するなら馬が要る。
だが、その馬は何処に?と、不安がる。
馬を馬車から離して、馬具を外してから、

「お疲れ様、また何処かで会おう。行けっ!」

その馬の尻を叩き、逃がした。そして、指笛を鳴らした。高い音が響いていた。

「さてと、馬車の更なる改造と補強をしないとな。」

そう言って、篤郎は馬車を弄りだした。
そして、エメリアは呆然から戻り篤郎に突っ掛かった。

「ちょっと、馬を逃がしてどおするの!」

「主、ぼくは引けないニャよ?」

「なら、うちに任せてな。」

「あっ、お前らにも会わせたいから、ぬらりひょんにお菓子でも貰って待っていろ。」

「お待たせしました。」

色んなお菓子を、ぬらりひょんが運んで来たのだ。

「こんなの食べて待つの?モグモグ。」

「会わせたい?人ニャ?パクパク。」

「どうやろなー。シャリシャリ。」

『ゴクッ。う、まーい!』

怒りや考えを捨てて、貪り食う3人娘。

篤郎は、それを見て改造に集中していた。強くしなやかに、壊れ無いように、だ。
一時間は過ぎた頃に、遠くからヒヒーンの声が聞こえた。

「馬?」

「姿や臭いは無いニャ?」

「気のせいやない?」

それぞれが否定的な言葉を言っていたのだが、

「やっぱり、速く来たな。」

「あれが、ですか?魔王様。」

「そう、あれ。」

エメリアも猫又も九尾の狐さえも理解は出来なかった。いや、本能が理解から離れた。
その威圧は風よりも重く、体にのし掛かって来るのだから。

「フェイト!」

篤郎が呼ぶと、黒い影が篤郎の前に現れたのだ。

「待たせたな、我が主よ!」

「しゃ、喋った!」

「うむ、私も格が上がり今ではエンペラーホースになったのだ。」

「しかも、偉そう!」

「少しだけな!」

と、篤郎と話すエンペラーホースなのだが、エメリア達には恐怖でしかない。
エメリアは、馬の形をした象を見上げているのだから。

「う、うま、うま、馬?」

「ニャ、ニャ、そ、そう、みたい、ニャ。」

「き、き、九尾の狐なのに恐い?」

そして、篤郎とフェイトは距離を取ると、

「何か勘違いをしてるな、フェイト。」

「ウハハハハ!今こそ主を超える!」

篤郎とフェイトの姿が揺れると、互いの場所を替えていた。

「此が、お前の力?」

「ぐっ!やはり、主の力には敵わぬか!」

血を吐き、前足を折るフェイト。

「ま、セキにも敵わないのに俺は倒せんぞ?」

「無理を言わんで下さい!主殿。」

「ま、そんな訳で馬車を引け。」

「喜んで、主殿!」

と、篤郎とフェイトの話が纏まったのだが、

「何をバトル漫画の様な事をしてるの!」

「待つニャ、エメリア!」

「あかん、それ以上の事は言わんといて!」

エメリアがエキサイトしていた。
何に怒ってではなく、あの異様な雰囲気をぶち壊した篤郎達に怒ったのだろう。

そして、エメリアを止める二人の不毛な争いが、しばらく続いたのだった。

「許せないー!」

「エメリア!我慢ニャ!」

「落ち着いて!」
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