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第11章 モンスター

面倒な逃避行 3

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飯を食えば、風呂に入りたくなるのが人情だ。

先に風呂に入りたかったが、腹が減ったので料理をして食ってしまっただけ。
宴会でも旅館でも無いのだから、どっちが先とかは関係無い。

「風呂を作るか。」

岩棚を改良して、出入口を作り脱衣場を整備してから、浴室を作る。
空気窓は天井に着ける。いや、吹き抜けだ。

浴室は、広々とした感じが良い。

脱衣場には扇風機の様な物を着けるか。冷蔵庫には飲み物を仕込む。

うむ、完璧。

出入口の前には岩の衝立をして目隠しにする。
最後に暖簾を掛けて、完成。

「簡易風呂の完成。」

『おー!』

四人は、拍手をしていた。
篤郎はお辞儀をして、

「レディファーストだ。先に入ってくれ!」

物作りをしたら、感想が聞きたいのが人情。使ってもらってナンボの物ですから。

次に寝床を作るか!

と、篤郎は次の構想に入っていた。

「なら、入るニャ!」

「お風呂なんて、いややわー。」

猫又と九尾の狐は喜びながら、エメリアを引き連れて入っていった。
暖簾を潜ると、岩の目隠しが現れる。その岩には、龍の意匠が込められた巧みの技を感じる。

「さ、流石は主様。簡易でこの造りとかありまへん。」

「わーニャ、わーニャ。」

「ね、此れは夢ですよね。」

1名は現実を把握してないようだが、驚いた。
が、それで終わりではない。

洞窟感を残した脱衣場には、畳の様な感覚が残る床があり、岩の籠が置かれていた。
壁には鏡があり、ドライヤーらしき物もある。もちろん、櫛も置いてある。

「これは、日本式のお風呂?」

「そうどす。」

「凄いニャ!扇風機もあるニャ!あ、飲み物もあるニャ!」

「至れり尽くせりどすな。」

エメリアは、現実を捨てて楽しむ事にしたのだ。

「ねえ、此処で脱ぐのよね?」

「そうニャ。」

「入って、入り尽くすわよ!」

そして、洗い場でエメリアは戸惑ってしまう。

「こ、これが、日本式!」

「先ずは、身体を洗いましょ。」

「湯や水が出るニャ!」

「とことんしはりますなー。」

「は、はは、ははは。」

エメリアにとっては、憧れの日本式のお風呂である。が、初めての日本式が豪華で飾りも凄いのに、篤郎は簡易と呼んだのである。

日本式とは、此処までのことで簡易だとか。額ほどの面積の家を建てても、豪華な風呂が簡易とか考えられるだろうか。

「やっぱり、主様は凄いおすな。」

「風呂が広ーいニャ!」

「温かい。」

手足を伸ばす湯船に入るのが、初めてでは無いが、ふんだんな湯に広いお風呂に入る日本を舐めていた事に恥じるエメリアである。

「私、戻ったら日本に行くわ!」

「そうどすか。」

「あー、頑張るニャー。」

湯船に柚子の香りがして気持ちが良い。
岩のお風呂とは、日本を侮ったと勘違いを起こしていた。

篤郎の作った物は、日本でも無いだろう。
巧みな意匠を凝らした、天井や壁に風呂。

物作りを色々した篤郎が、膨大な魔力と魔法によって造ったのだから。

後に、ルナ達によってこの風呂が移設されて、新たな魔国の観光名所となる。

それが、篤郎ニズム。
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