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第11章 モンスター

闇が動いた

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ワンブーヘ軍が来てから、直ぐに聖女一行は進軍を始めた。

もちろん、リザリテは速やかに軍の派遣を行ったのだ。
いわゆる、高見をしていた各国に先んじて、旧アルテウル領地の確保に出たのだ。

この入り口の町を確保出来れば、他の国は用がない。

今は聖女の力だが、いづれ勇者が必要になる。

それでも、大義名分は完全にワンブーヘ国にある。

アンデット騒ぎを鎮めたら、ダクネト国よりも巨大な大国になっているからだ。

そうなれば、混乱は治まり魔国打倒に乗り出せるのだ。

これ程のシナリオは、神の御意志であるとリザリテは祈っていた。

それは、エメリアもそうなのである。

勇者よりも聖女が目立つストーリーに、いたく気に入っているからだ。

「あー、暇ね。」

「そうですか、エメリア様?」

「私の美貌と力がアンデットを退けているのかしら。」

「もちろんです!」

「なら、暇は続くのね?」

「エメリア様が偉大ですから!」

「オホホホホホッ!」

と何時もの通りに、調子に乗っていた。
そんな道中から離れて、篤郎はアンデットをほとんど消し去っていた。
もう、首都を残す程度になっていたのだから。

「それにしても、ルナ達と連絡が取れん!」

と、篤郎は怒っていた。
四次元部屋が使え無いのが、痛いのだ。

山草や動物などを取っても、確保する場所が必要になる。
カバンはあるのだが、何故か拡張する魔法が効かない。

こんな事は言いたくないのだが、二度目の召喚時に何かあったのだろう。
それ以外に、思い当たる事がない。

「ま、ルナの事だから何かしてると、思うのだが。それまで、ここら辺の薬草は持って行けないな。残念。」

篤郎は、走って帰る。
スピードは、約200キロ出しているのだから、追い付くのに時間は掛からない。



それよりも、アンデットを生み出した闇がイライラしていた。

「何故だ!我の駒を潰したのは!」

「聖女では無いのか?」

「聖女はまだ此処まで来てないよ。」

「誰だろうね。」

「・・・・手駒を殺られた。」

闇達は、嗄れた声に驚いていた。

「長老の手駒が?」

「我と同格なのに?」

「何時殺られた?」

「どうする?」

「・・・・神を呼び出す。」

「「「「おお!我等の神を!」」」」

闇達は、その言葉に満足していた。

「では、儀式の準備をしよう。」

「我は贄を連れて来よう。」

「我は供物を整える。」

「祭壇も必要。」

「血が要るな。」

「・・・・開始、しよう。」

闇達は散った。
闇が本気になっていた。
ネズミを炙り出すために。
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