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第11章 モンスター

聖女と篤郎

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「もぐもぐ、此処はどこだ?」

テーブルのオカズを食べながら、篤郎は喋っていた。
薄暗い場所に、何十人の人が居る部屋を見た。

「てか、レオンはー、あっ、ルナ達が着いてたな。」

ホッとした。もし、レオンに何かあれば・・・フフフフフ。

「し、召喚は成功なのか?」

「しかし、これは・・・・」

久しぶりに篤郎は感じていた。不細工が何で居るのか?の顔が見受けられる。

前の篤郎なら直ぐに怒ったのだが、一皮向けた今の篤郎は怒らなかった。

「少し待っていろ、食べるから。」

篤郎はそう言って、ご飯を残さずに食べたのだ。
それらを四次元部屋に入れようとしたのだが、

「あれ?四次元部屋が現れない?」

と、困ってしまった。

「ちっ、白湯で口を洗うか。」

篤郎は、魔法を使った。これは、直ぐに使えた。
口をゆすいでから、

「ふいぃ!それで、何処なんだ?」

袖で口を拭い、茶碗を置く。
ヒソヒソしていたのだが、リザリテが恐々と、

「そ、そこの者、だ誰なんだ?」

「いや、俺が聞いてるんだが。」

篤郎は、リザリテの顔を見て困っているのが分かった。

「あー。俺は藤並篤郎だ。」

「ゆ、勇者か?」

「さあ?」

篤郎は悩む。

勇者か?いや、ギルドカードでも俺の職業なんか分からんし。分かるなら調べて欲しい。

リザリテは、勇者なのか不安になっているし、ワンブーヘ王はこの状況に戸惑っていた。周りもヒソヒソの声が止まない。

怪しいのだが、篤郎の居る場所は魔方陣の中だ。それも、机に椅子があり、机の上には食器がある。

その机の造りを見て、リザリテは異世界人だと思った。
その前にエメリアが、声をあげる。

「ニホンジンだ!」

「あん?」

エメリアは、此処には居ない事になっているのだが、憧れの国の人が目の前に居るのだから黙っていられないのだ。

「ニホンジンでしょ!」

「ああ?ニホンジン?あっ、日本人か?」

「そう、それ!」

「そうだが、お前は?」

「お前違う!私はエメリア!イギリス人なの!」

「えっ?イギリス人?マジで?」

「そう!」

「あー、ハワユ?」

「ハワイ?そんなの今は関係無いでしょ!」

英会話は伝わらないっと。
篤郎は、此処に来て何故に会話が出来ているのか謎に思った。

篤郎の話せる言語は、日本語、日常英会話とエレリーナの共通語だけになる。他にも、北京語や南京語、広東語、フランスやドイツ、エスパニア語などの文字と会話の知識はある。此方は会話レベルは不可能である。文字会話も下手くそだ。

それなのに、英会話が出来ないのはスキルの問題なのか?

ま、此方としてはエレリーナの共通語の方が助かるのだが。

「済まん。エメリアも召喚?」

「私?私は違うよ。何か穴に落ちたの。」

「穴?」

「そうよ。」

可愛らしい仕草をする。

しかし、エメリアはこの世界に居ても違和感無いよな。
俺は、まだヒソヒソ言われているのに。
そこに、リザリテが割って入ってきた。

「聖女様!彼は異世界人でしたか!」

「え、あ、はい。異世界人です。」

「おお!フジーナミアウロー様、この世界をお救い下さいませ!」

「ええっ、嫌かも。」

「そ、そんな事を言わず、話を聞いて下さい!」

土下座までして、篤郎の気を引いた。
ー偉いさんの土下座とか、脅迫にならんのか?
とは、篤郎の気持ちだ。

「何か嫌。」

「何で!」

「いや、名前を言い違えたし。」

「えっ!」

貴族であれ、名前を間違える行為は駄目である。
国相手なら戦争にもなり、貴族なら侮辱に値して造反の基になるる。では、勇者相手なら?

そう、考えるとリザリテは身震いしてしまう。
だが、此処で救いの手が入る。

「フジナミアツローって、ニホンジンだ!」

「アツローじゃなくてアツロウな。」

「アツロウ?」

「おっ、そうそう。お前、上手いな。」

「で、何故、ニホンジンなのに英語が上手いんだな。」

「ん?」

篤郎は、日本語では会話をしてない。
篤郎は、日常英会話は出来るだけで、知識のフランス語やドイツ語、ポルトガル語、ベトナム語などは会話は不可能である。

純粋な、エレリーナの共通語を使った会話をしているのだ。
まさかと思い、篤郎は、

「ハゥワーユ?」

「何言ってんの?」

エメリアは何の事か分からなかったが、篤郎は意外な事が分かった。
異世界に移動した者は、どうやら翻訳してくれるスキルを貰えるらしいと。

検証は竹下家族と田渕家族になるのだが、彼等も会話は出来たのだ。

俺には無かったのだが。

「済まん、済まん。」

「もう。」

「で、お前は誰だ?」

「エメリアよ!日本が好きなイギリス人なのよ!」

「なに!」

篤郎は狼狽してしまったのだ。
一難去って、また一難。
即座にミネルを頭に浮かんだのだから。

(ゾワッ!)
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