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第11章 モンスター

アルテウル神国の終わり

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魔国が平和なら、人の国は凄惨な時代へと突入していた。

魔国の驚異に晒されながら、領土の取り合いがあり、下克上とありと、戦国時代さながらの戦が起きていた。

その最たる場所が、アルテウル神国になる。

最初に狂ったのが、巫女のエリザベート・ラルクルである。
愛する者が死に、神の威厳も地に落とした為に各国の信用も無くした。

そして、闇の言葉に耳を傾けた。

光が闇に覆われたのだ。

闇の生き物は、生者を食べた。

理不尽を通り越した理解不可能にも思える行為なのだが、簡単に説明も出来る。

それは、食事である。

食事とは、生き物が生きる上で必要な事になるが、彼等は違った。

食った者の影が動いて、カスに近付いて入った。
そうすると、食べられたはずのエリザベートが出来上がって、

「気持ちーわー!我が主様、よろしくね。」

「・・・・・・」

「はーい!私の怨みを晴らして来ても良いですの?」

「・・・・」

「ありがとう、主様!」

エリザベートは、牙が歯を舌で確認すると、

「何匹かグールを貰うね。あー、私も血を浴びたいわ!」

エリザベートは、姿を蝙蝠に変えて空に飛び立った。


前回も書いたが、バンパイアと吸血鬼の違いは、魔核の有無である。

バンパイアとは種族であり、血を飲む存在では無い。
だから、グールを作る事も無いし、人と結婚して子を作れるのだ。

それに対して、吸血鬼には魔核は無い。

吸血鬼に血を吸われる者は、グールとなる。
それも、普通のグールと違い魔核が無いグールになる。

知能は無く、生き物を無差別に襲う。
グールに襲われたら、同じグールになる。いや、この場合は『死霊鬼』と呼ぶべきだろう。

では何故エリザベートが、吸血鬼として甦ったのか?

それは、吸血鬼に吸われて、吸血鬼の影を貰ったからだ。

ただし、同格にはならない。主人たる存在に、忠実にはなる。なるのだが、彼等と同じように欲には正直になるのだ。

食いたいから食べるし、何かされたら怒るし、笑うし、泣く。躊躇したり、悩む事は無くなる。強い者に忠実なのだろう。
それが、吸血鬼なのだ。


闇の存在は、赤い唇の両端を上げると、影の中に消えた。

そして、その闇達はアルテウル神国を中央から侵食しだしたのである。

ゆっくりと貪るように。

半年の期間を掛けて、アルテウル神国の民が消えた。

人の国が争っているのに。
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