上 下
359 / 505
第11章 モンスター

帰ります

しおりを挟む
文雄達も意外な事が起これば、荒木夫婦にも事件は起こっていた。

先ず、荒木信也の両親の仕事は官僚だ。
地方役人だが、エリート意識が強くて仕事ばかりの人達だ。

次いで、真由子の両親も仕事人間である。
父親はIT企業の社長に母親は美容関連の会社経営と忙しい。

荒木は家を見に行くと、既に引っ越しされており行き先知れずになっていた。
厚木の方も、両親が離婚しており何とか母親を頼るのだが、

「何だ、生きていたの。私は、今からデートなの。家は好きに使って。」

と、軽く流されたのである。
直ぐに荒木と合流して、みとり電気で安いカメラを買うと写真を撮して、写真を作った。

寝る場所は、真由子の母親の家のリビングで寝て、朝には家を出る。
もちろん、手紙と写真を其々の親達に残して。

「何か、家の親も信也の親も駄目だったね。」

「ま、此処に、居場所は無かっただけだよ。」

「どうしようか?」

「文雄の家にでも行こうか。」

「そうね。」

「その前に、朝ごはんが食べたいな。」

日本の朝は人が多い。
当たり前だが、久しぶりで人酔いをしてしまいながら、娘の如月きさらを大事にしながら歩いた。
ファミレスに入り、朝食を頼んだ。

「ぐずらないな。」

「そうね。」

「この子に、今みたいな気持ちを持たせたく無いな。」

「だね。」

暗くなりながらも、

「なあ。」

「ん?」

「最後だし、みなみとか観光しないか。」

「良いよ。しよう。」

「あ、依頼された事はー。」

「本を買いましょう。専門誌が売ってる場所もあるし。」

「流石、真由子。」

「知ってるし。」

笑顔が甦る二人。
朝食が来て、食べてる最中に涙を流したが、それも笑顔で乗り越えた。

そして、二人は親を見捨てた。



だが、荒木の両親は無駄でも信也を半年は探していた。半年の間に、何も収穫が無ければ人は狂う。狂った先は、お互いに不倫に走り、離婚。互いに地方に飛ばされた。

後に、手紙と写真を見た両親は、涙を流して後悔をした。
二度と我が子と孫に会え無いのだから。

真由子の両親も離婚をした。
真由子の失踪に、喧嘩をしたのが原因であった。

父親は、仕事をしながらも色々な調査会社を駆使して真由子を探していた。

真由子が戻った日は、会社の存続の危機の中にいた。
株価の失速による損益によるダメージが、銀行からの引き上げの危機に落ちたからだ。

離婚したと言っても、元妻の会社の筆頭株主であった為に、元妻も必死の金策に走らなくてはならなかった。
娘と会うよりも、従業員を守らなくてはならないからだ。

この懸念は、翌週には落ち着く事となる。
そして、手紙と写真を見つけ泣いた。

こちらも、二度と会えない我が子と孫の為に泣いたのだ。

それを、荒木夫婦は知らない。

些細な事だから、元妻がちゃんとした言葉を掛けていたら、未来は違っていたのかもしれない。

未来は、些細な事で変わるのだから。



荒木夫婦は観光を満喫して、田渕家に向かった。
向こうの世界で、暖かい家庭を作る希望を抱いて。
だったのだが。

「文雄?」

「あ、荒木さん?えへっ。」

「雪絵、どうすんのよ。」

「えへへへ。どうしよう。」

荒木夫婦が見たのは、田渕の家があったのだろう場所には家が無かった。
そして、田渕の親姉弟がいて、竹下の親姉妹が居るのだ。

「顔見せだよね。」

「そうっす。」

「何で、田渕のご家族と竹下のご家族が楽しそうに居るのかな?」

「いやー、異世界に移住とか楽しいとか?」

「それは、否定はしない。だけど、この事を知って居るのか?」

「えーと、篤郎さんには言って無いかな。」

「違う!神様にだよ。」

「神?あっ!」

「後は自分でどうにかしろよ。」

「そ、そんな!」

リゴーン。
と音が聞こえると、辺りの音が消えた。
そして、

「ハロー、時間通りね。」

神様らしき、女性が出てきた。神様と言うよりも、バカンスばかりしてる女に近い。

「えっと、日本の神様?」

「そうよ、アマテラスって名前があるよ。」

「アマ・・・・」

神話にある姿ではない。
髪はボブショートに茶色にして、大きなサングラスを頭に飾り、肌も焼けて黒い。

「繋ぐけど、人が増えてる?」

「あ、向こうに行きたいって、俺達の家族が。」

「まー、良いか。」

「ありがとうっす!」

「良いって。じゃ、繋ぐねー。」

「ありがとやんしたー。」

見た目も軽ければ、彼女も軽かった。
神がそんなので良いのか?と悩む信也を後ろに、扉を開いた。

「ミネルに貸しおねって。」

「了解っす!」

「とっとと、消えてねー。」

「はーい!じゃあ、入れー!」

田渕と竹下一家が消えて、文雄夫婦が入り、真由子と如月が通った後に、信也が入口で後ろを振り返った。

「ありがとございました。」

「堅いー!楽しく生きなよ。」

「はい!」

信也が入った。

「君達の未来に幸あれ。」

アマテラスはそう云うと、消えた。
そして、一年前にあった失踪事件は未解決になる。
ただ、関係者はあまり気にしてはいなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~

紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの? その答えは私の10歳の誕生日に判明した。 誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。 『魅了の力』 無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。 お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。 魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。 新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。 ―――妹のことを忘れて。 私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。 魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。 しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。 なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。 それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。 どうかあの子が救われますようにと。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

処理中です...