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第10章 アルテウル

攻撃の終わり・・・

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少し前に遡らなくてはならない。

レレヒトル率いる軍にワータル・デフォング・エネーギュ準男爵が率いる一団がある。
その数は1000人も居るが、正の兵士ではない。殆どがゴロツキや犯罪者が多く居る、荒くれ集団でもあった。

だからと言って、荒くれ行為や行動もせずに陰に徹していた。

狙うのはダクネトの首都での略奪だからだ。

その為には、死なない様に目立たない様に、立ち回らなくてはいけない。

その時まで仮面を被っておくのも、彼等には出来た。
それも、拾い者をするまでは穏やかな集団であった。
裏方を率先して行うので、各隊も無下にはしてない。

彼等こそ、火事場泥棒の中の火事場泥棒集団であった。
その、したたかまでの行為全ては、火事場泥棒の為である。
勝てば負けた国を、負けても元味方から金を強奪する。

善人の皮を被った、極悪人達が居るとはレレヒトル軍も思っていなかった。


この゛被った善人゛集団は、徹底して善人の様に振る舞っていた。比類なき善人集団とも呼べる事をしていた。

その為に、道中の゛行き倒れた゛男を丁重に介護する事をしていたのだ。

そう、此処までの善行をする軍隊は居ないだろうと云う、カモフラージュが彼等にとって最高な行いだった。

「どうだ?」

「眠ったままです。」

などの会話を外ではするが、テントや馬車の中では、

「気が付かないか?まっ、治っても治らなくても使い道はあるからな。」

「目を覚ますな、目を覚ますな、目を覚ますな。」

などの本音を話していた。

どんな善人でも腹に一物を持つ。
悪党ならギャップに耐えられない者も居る。
病人に話すのは間違いだが、意識が回復していなければ何でも話せる。云わば『森の中の葦』だ。(もしくは王様の耳はーである。)

人は、秘密を抱えて生きていけない。それを吐き出す場所が、必要になる。

この意識が無い男に云うのには、まず容姿が不細工であった。
美形なら良からぬ事を思う奴も居るが、不細工ならそんな奴は居ない。
そんな不細工な男の服を着替えさせる人が居ないのも、悪党ならではの気持ちの現れだろう。

その男が気が付くのは、後になる。
そう、戦の最中になるのだ。







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(アルファより各局、敵が最終ラインを越えた。)

「了解。各員用意。」

レトワトンの旗が国境を悠然と目指していた。

「撃ち取った・・・・始め!」

タタタタンと云う音が複数も聞こえると、砲撃の様に爆発していった。
敵は動く事も許されないままに、数分間は動けなかった。

そこから、兵は逃げ出した。
いや、死人が増える阿鼻叫喚がそこにはあった。それは、圧倒的な程の戦力の差があった。

あの意識が無い男の馬車も、慌てていた。
馬を落ち着かせてから、反転をさせて逃走を開始した。
もちろん、逃げる速度は遅いので、荷物を捨てる。少しでも軽くしたいので、病人も捨てた。

その直後に、爆撃されたのである。

後方に逃げるのは自国に帰る道なのだが、後方から撃たれてた。

身体は四散して、血が流れた。焼けて黒い染みとなり、大地に溶けたのだ。


およそ、20分でレレヒトル軍の壊滅をアケルドは確信した。

「撃ち方、止め。」

黒い煙が登る銃撃戦の跡地を見ながら、

「主様の銃より弱いの!この強さで?」

と、血の気も引いたアケルドは、この武器は使用してはならないと理解した。
理解を・・・・
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