鴉喰の華 ～日本に転生したのに、異世界に転移させられた！～

第１０章 アルテウル

食い気

「美味しいですか、マスター。」

「旨い野菜だな！」

「京かぶらと迄は出来てませんが。」

「いや、美味しいよ！」

今はルナ達による、新野菜の品評会が行われている。
篤郎の世界と似た野菜を改良して、篤郎が飽きない様に栽培されている。

基本は『四次元部屋』の研究施設で改良されてから、種をエレリーナ星で植えて栽培して、篤郎が望む物にしている。

もちろん、○島だいこんや紅○も、淡○玉ねぎから各トリュフなども改良していた。エレリーナ星の野菜の悪い所は、品種改良が行われて無い。

従って、魔素の影響で大きくなっても、旨さは落ちる。

例えば、トマトがあっても、エレリーナ星では甘く瑞々しいトマトは無い。大きくて、酸味が強い瑞々しいトマトしか無いのだ。
魔国内には、品種改良が行われた品物が多く出回っているが、元の世界程には遠いのだ。
それに、魔国以外の国での野菜とは、野菜よりも草なのだから。

「こちらの漬物も、ご相伴して下さい。」

「はいはい。」

漬物もしゃきしゃきして、塩加減も程好い。ご飯だけで無くて、お茶請けでも通じるな。
篤郎は、出来の良い品々に感心していた。

見事と呼べる品物だからだ。

「しかし、一年で此処まで仕上げるとか、考えられないよ。」

「頑張りました！」

「マスターの記憶だけからでは無理でしたね、お姉様」

「アイも、アバンガルドで野菜を見つけたよ！」

「土とか肥料とかは？」

「科学と魔法の発想を構築出来たのが、良かったのです。」

「なるほど。」

篤郎の知識を記憶領域から呼び起こして、記録解析を進めた。
魔法を使うとは、腐敗や成長の魔法と４元素の魔法を組み合わせた、新しい術式が品種改良を容易にしていた。
それに、『四次元部屋』のラボがある事で、一年と言う短い期間で元の世界の味に近付いたのである。

海外の人間なら出来ない考えになるが、日本人と言う何でも新しい物を造る事を楽しむ民族でもある。自身の家がみすぼらしくなっても、何かを造る事をやめないのだから、稀有な物が出来る。

例えば、ネジ。最大な物は誰でも考えるが、最小の物を造り続けるのは日本人だけだ。刀は江戸時代で装束と変わったが、切れる武器を作ったのは日本人だけ。最高な野菜を造りたい！と、野菜を造り続けるのも、魚を養殖したのも、お菓子を進化させているのも日本人なのだ。

だから、篤郎が作る魔法の大元は、物造りに特化した魔法が多い。火ならば、温度６千～１万度を想定した魔法を作った。攻撃の為にでは無い、ガラスや耐火煉瓦などの物を作るためだ。

この様に、魔法は物を造る為にであって、攻撃や回復などは副産物にしか他ならない。

最大の魔法を使う事こそが、元の科学に値する。

何かの本では、科学こそが魔法と言う言葉があったが、半分は当たりだ。魔法を極めるには、おおよその原理の追求が科学になるなんて、この世界には分からないのだ。

異世界に転生して勉強を頑張ったから、この世界の魔法探究が深まる事が出来た。

完成にはならないが、ほぼ完全な技術開発には応用してる。

篤郎にとって、元の世界の流用は、この世界では『魔改造』と呼ばれる。
篤郎印は『魔改造印』と陰で呼ばれているのだから。

「プチトマトは、まだ出来ない？」

「はい。この世界では品種改良しても不可能です。」

「難しいの？」

「魔素の関係で、プチは普通サイズになります。『四次元部屋』で造った種も大きくなりますので。」

「商品化は無理かー。好きなんだけどなー。」

「マスターだけは、いつでも食せますから。」

「お姉様、マスターはこのプチトマトを広めたかったのでは？」

「魔素の関係だから、植えてもねー。」

三姉妹は研究になったようだ。
土地の関係なら、別に良いのだ。
美味しい物だが、自分だけになるのは仕方がない。
魔国内でも、新しい味が多分生まれているからな。
悪い事は無い。進化し続ける事が大事なのだ。
止めたら、先に進まない。

それが、進化だと篤郎は思っている。

だから、その先の研究を三姉妹にはさせている。
と言っても、ただの技術開発では済まない。篤郎に隠れて、宇宙と海洋にも開発をしているのだから。

「うん、食も改善が良くなった。俺も、そろそろ自分の武器を作ろうかな。」

「「「！」」」

「剣よりも刀だよなー。」

「マママママスター、今なんと？」

「いや、武器をね。」

「ダメです。」

「えっ？」

「作ってはなりませんよ。」

「自分用だよ？」

「報告しましたよね、マスター？」

「分かってるよ。ほら、鍛冶するに鈍らない様にするのも大事な事だぞ？」

「マスターの作る物は秘匿なのですから、作る時には注意をして下さいよ？」

「分かってるよ。」

篤郎の目が、一瞬泳いだ。それを見逃す事は、三姉妹には出来ない。

「ルナお姉様が着いて居れば良いのでは？」

「マスターだけだと、暴走しそうだし。」

「なっ！なんで！？」

「確かに。」

「ヒドイ！」

篤郎は弱く見せた。
が、

「マスターは、鉄でもアダマンタイトと変わらない物を作れますよ？」

「青銅でも、ロンズデーライト級の物を作りましたよね？」

「マスターの異常さは元々ですよ。」

「アカーン。」

篤郎は、何かを造る時にはルナを着ける事を約束した。
何時の間にか、造る為にはルナが居ないとダメとの約束になってしまった。
もちろん、篤郎はＯＫを出した。

多分、親としたらと言う思いで約束したのだろう。
篤郎は、暫く振りの親子の団らんを楽しんだのだった。