鴉喰の華 ～日本に転生したのに、異世界に転移させられた！～

第１０章 アルテウル

開戦？

生きる事は簡単だ。

しかし、自己の利益と栄誉を作る為には、人を貶めなくてはならない。
それは、してもしなくても、それは付きまとう事だ。

だとしたら・・・・

「うぬ。レレヒトルよ、此が返書か。」

「中身は知りませんので、拝見出来ますか。」

「此を見よ。」

「はっ！」

レレヒトルは、レトワトン王から手紙を受け取り中身を見た。
そこには、絵で書かれていた。女(綺麗な)が可愛くも、あっかんべーをしている絵だ。

断るに、絵で返したのは？
レトワトン王はレレヒトルに聞いた。

「そなたの考えは？」

「達筆でも、不敬な返書です。」

レレヒトル伯爵は書状を返すのを、躊躇った。
絵を見ていて腹も立たない。
むしろ、この絵を額縁に入れて保存したいのだ。

「不敬か。ならば、この箱の意味は？」

ただの木の箱だが、中は豪華絢爛であった。
蓋には赤く塗られていて花も描かれていた。
木に描かれているのだが、木に特殊な加工をされたのか木目が出ていない。
箱にも青で塗られて獣や山河などを描かれていた。
書状にも、紙の質はツルツルで丈夫。
書かれた文字の墨にも着目しなくてはならない。

何処にも無い物なのだから。

「我が国を恐れてだと思います。」

「レレヒトル伯爵が報告した、ダクネトはボロボロなのか？」

「はい！」

「疲弊した民が居たのか？」

「もちろん、どの村も町も病人だらけでした！」

「わからん。疲弊してるのに、この技術力は？」

「技術もダクネトが持っているとは、考えられません！もし、持っていても、今のダクネトに戦う力は無いでしょう！」

「戦うのか？」

「準備は出来ております！僭越ながら、私の身内も既に賛同しており、兵も食料も武器も揃えております。もし、宜しければ、我ら一門に先陣をさせて頂けないでしょうか。」

「ふーむ。」

「それに、もし私が死ぬような事があっても、私怨で収めれることも。」

「なるほど。良し、取り掛かりたまえ。」

「はっ！」

ダクネトには価値が無いが、今回の品は益だけを見ていた。
その罠に気づかないのは、レトワトン王の誤算であった。
奇しくも、レレヒトル伯爵の怨みを払わせる策略が、全てに蓋をしたのだ。

１ヶ月前と今では、文化も技術も進歩し過ぎている。
鉄を使うのでは無くて、鋼を使っているのも知らないのだから。

それを見ていなかったのは、レレヒトル伯爵にそれだけの能力がなかったのだ。
しかし、

「見ておれ、ダクネト！」

ダクネト元王が、宰相の下にいるのさえ見て無いのだから。
それでも、レレヒトル伯爵は怨みを晴らすべく使者を送った。
それも、王命と密命を付けて各貴族に送ったのだ。
一族ではない、レトワトン国を巻き込んだのだ。

「ダクネトは我の手に！」