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第10章 アルテウル

女の力

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篤郎が歩けば、厄災が起こるのだろうか?

今の篤郎には、そう思う事もある。

ほとんどの事は、どうたったのか?今も前も、変わりがないとしか思えない。
どうしてこうなったのだろう。

あの日、光がダクネト国を包んだ後、それでもダクネト王(元)が支払いを拒否した。
その時に、ダクネトの奥さんと子供達が大勢を引き連れて王の間に雪崩れ込んだ。
そして、

「あなた!支払いを拒否するのは、何故なのですか?」

「エリーゼ!国庫に金が無いのは知っておろう!」

「命と引き換えに拒むのなら『善き王』ですが、自分の命のために策を労するのは『愚王』ではありませんか!」

「ダクネトは我が領土!その王が我が儘な事を言うのが『愚王』か!?」

「ダクネトを取り押さえよ!」

『はっ!』

「なっ?何をするか!」

奥さんが、兵達を使いダクネト王(元)を捕らえていた。

「牢獄に繋ぎなさい!また、王の親派も捕らえるのです!」

この女傑は、兵を手足のように扱えるようだ。いや、兵達からの信頼が凄いのか?

良くは分からないが、

「アツロウ様ですね、エリザースト・エレペック・ダクネトと申します。」

「あっ、はい。」

篤郎は、どうすれば良いのか混乱していた。王を排除した王妃に対して、何が行われるのか。

心強いよりも、何を要求されるのか心配していたのだ。

自己保身する者よりも、他人を思いやる者の方が要求は大きい。
それも、国を投げ売ってでもするのだから。そんな者とは、遊んではいけない。
もし、遊んでしまうと、後は地獄を見るはめになる。

出来れば、穏便に願いたい。

「先程の契約の件ですが。」

「な、何でしょう?」

こうゆう相手と商談する場合は、真摯にして親身になる方が得策になる。
自己の利益も省みないので、怖いのだ。

「我が国には、お金がありません。」

「そうですか。」

「ですので、我が国はアツロウ様のものです。」

「うん。ん?」

「末長く、国を治めて下さい。」

王妃が頭を、いや、土下座をしていた。
後ろに控えていた婦人達も、土下座をしているのだ。

何故なら、国と商談する場合は強気にする方が得策になる。
どうせ、負けに負けさせられるのだら、吹っ掛ける位が丁度になる。

それが、国を差し上げるときたもんだ。

「は、はいー?!」

土下座を解いてはくれない。

「いや、分割とか出来るでしょ!支払う事は考えたりとか!」

「今の情勢を考えても、支払うよりも貴方様に譲渡する方が得策とみました。」

「いやいや、国とか重いし!」

「魔族討伐も失敗して、今はどの国でも貧困をしております。今回の遠征でも働き手を失う結果になりました。明日も知れない位なら、民達の病気の代金を国で支払いしたのみです!」

「ええっー!」

「王と主な者達は捕らえておりますので、アツロウ様の好きな様にお使いください。私達は城も明け渡しますので。」

捨て身の人間も、逃げたい事がある。
それも、正当な理由と人質を持って逃げる事が出来れば、最高の逃げ道となる。

そう、逃げ道があれば、地位も名誉も捨てる事が出来るのだろう。

「あっ!ほほーう。」

篤郎は、ニヤッと笑みを作った。

「いえいえ、貴女と貴女方にも手伝ってもらいたいですね。男達よりも。」

「えっ?えーと、私達がですか?」

「そうです!私は王とかしたく無いですし。」

「く、国を治めてもらうのはアツロウ様になります。それは契約が・・・・」

エリザーストは、扉を見ると兵がOKのジェスチャーをしている。
エリザーストは胸を撫で下ろすと、胸の前で手を組んだ。

「今、契約は成立しました。新たなる王よ、宜しくお願いします。」

「ひゅー!」

何をしようとも契約はなった。
篤郎の思い等は、地の果てに棄てられたのだ。
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