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第10章 アルテウル

移動です

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魔国に帰りたい『魔王』篤郎は、話を聞いて断れなかった。

ダクネト国の1領主のリーシャルト家は子爵の位を授かる貧乏貴族だそうだ。
領主も約20k㎡の面積しかなく、民も五千人未満のようだ。そして、謎の病が発生しているのだ。

てか、この領主は家族を連れて逃げているのに、治療方法があれば助けろはなー。
しかも、レオンに頼んでいたし。

「手付けで、白金貨一枚。後は、成功報酬で。その時に、死人が出ても私に罪を着せない事も確約してもらう。また、国にも政治にも協力はしない事も確約な。」

無茶な事を要求はしていない。
むしろ、助けてやるから、安全を保証しろは格安だよ。

「分かった。そなたの力をお貸し願おう。」

「・・・・わかった。」

『わかった』とは言ったが、移動方法はどうするのかは謎だ。

「で、子爵さんには移動手段の事も考えてくれますよね?」

「それは、徒歩だ。」

「はっ?」

「歩いて来たのだから、歩いて帰るしかない。」

類は友を呼んだようだ。辞めようかな・・・・

「それでは、これが手付けのお金だ。改めてくれ。」

断る前に行動に出たよ!おっさんも本気か?

「受け取った。」

白金貨が偽物でも良い。
ま、偽物の方が、後の地獄に繋げる事も考えれるのだが。

それでも、契約成立なので文句は言えない。

「さあ、歩くぞ!」

おっさんだけが、元気よく声を上げる。
奥さんと子供達の悲壮な顔を見てしまうと、篤郎も少しぐらつく。

どのぐらい歩いて来たのかは不明だが、同じ距離を戻るのは辛いものだ。
領民を捨てたという事を隠していたので、帰るのに抵抗があるようだ。
何にしても、戻る事をいったのはおっさんである。家族なら、家長が言った事を理解しなくてはならない。

しかし、歩くのを許せる無い者がいた。

契約した時点で、既に篤郎のやる事になったのだ。命が掛かってる事案に、悠長な事をさせる訳にも行かない。

おっさんが先頭に歩き出した。

そして、篤郎は『四次元部屋』からバギー系の車を出したのだ。

「道は分かるか?」

「ぼ、僕、分かるよ。ねえ、これなーに?」

「乗り物。」

「これに乗るの?」

「そうだ。」

篤郎は後ろの扉を開いて、言った。

「歩いて行くか、楽に乗って行くか決めな。」

開いた扉に飛び乗ったのは、レオンであった。
レオンが乗ったので、奥さんと子供達も乗り込んだ。

扉を閉めて、運転席に篤郎が乗り込むと、

「遅いぞ!早くしろ!」

おっさんが吠えると、

「たく!我が民が助かる!そうなれば、私の首も助かる!いや、あの医師が居れば、他の領主達も欲しがる!恩が売れて、知名度も上がる!早く戻らないと!」

自分の欲を喋っていた。
そして、その横を明るい光の車が走り去ったのだ。

「何だ?」

それが途中で止まると、窓ガラスが下りて子供達が顔を出した。

「父様!此方の方が早いですよ!」

「な、ダール!ガフもアミレも?」

「おっさん、行くぞ。」

数分の事だが、おっさんは車に乗り込んだ。

そして、道を一気に進む事が出来たのだった。
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