上 下
284 / 505
第10章 アルテウル

村クエスト

しおりを挟む
人の縁は必ずある。

縁は縁を結んで行くのが、世の中なのである。



篤郎はレオンと共に森の中にいる。

冒険者ギルドを通さない、村からの要請的な薬草取りに来ている。
薬草とは、緑色した物が多いが、ここラプナの村には白い薬草がある。それは、老人達に喜ばれる効能があり、ラプナの特産物とも言えるのだが、最近は行きにくくなっていた。

若者の減少が大きいのは、魔国から土地を取り戻すべく徴兵があったからになる。

また、森には魔物は少ないのだが、危険な動物が増えた事が容易な事を困難にしていた。

健康で強そうなレオンに対して、クエスト要請されるのは仕方がない。そう、レオンに対してだ。

篤郎にでは無い。

いや、自然の流れてなのだろう。醜男のチビよりも美形なマッチョな女の方が強そうなのだから。そして、レオンと言うと、意味が分からないのに、簡単に依頼を受けたのだ。

受けたから、装備や服等を一新されて冒険者としての姿をレオンはなっていた。問題は篤郎だ。従者としての立ち位置か、荷物持ち程度の小物とされているのか、村人からの扱いも辛い。レオン用には、村で取り立ての野菜等を集めている。篤郎には無い。

レオンが剣を抜けば喝采を浴びせ、村の入口に立てば村人達から感謝をされていた。全て、篤郎を除いてだが。
ニコニコしながら歩いているレオンに篤郎は、

「で、この荷物はなんだろうね。」

低い声で言うと、レオンは慌てた様に篤郎の側にきた。
荷物を持つのは面倒では無いが、『四次元部屋』に移した。

「とりあえず、お前の飯はあるから自分で調理はしろ。で、クエストの品も自分で見つけろ。」

レオンは必死に首を横に振った。
どんなに崇められても、レオンには戦う事以外は何も出来ない。調理や薬草を見分けるのも出来ないのだ。

戦闘スキルは凄くても、一般スキルは皆無なのだ。運のみだけで生きているのが、レオンなのだろう。篤郎から見放されるとは、何も出来なくなるので、クエストもクリア出来なくのだ。

そう、レオンは戦闘はスペシャリストだが、それ以外はポンコツなのだ。だから、篤郎にすがるのだ。

必死なレオンに、篤郎が折れた。

理由は、即座に終わらして魔国に帰りたいからだ。否定や無視をして、無駄な仕事が増える可能性が大きいようだ。
そして、レオンは喋れよ。

「面倒だから、片付けて村にもどるからな。」

嬉しそうに目を輝かしている。だが、何故か女らしい行動が出るので、オカマな感覚が直感的に感じて、背筋がゾワワッと走った。
気持ち悪いのだが、実際には女なので正解な行動なのかもしれない。

「行くぞ。」

篤郎は、汚い物を見るような目付きでレオンを見ていた。

その視線を、レオンは新たな感覚として好意に思ったのか、背筋に痺れる感覚が走ったのだ。その顔には変化は起こらなかったが、心には・・・・

そして、篤郎の服を摘まみながらも着いて行く。

そこからは、薬草の採取は素早く行っていた。

篤郎の考えは、採取よりも問題の動物の排除を最終目的にしている。
どんな物にも言い分はあるだろう。だがらと言って、話し合いも出来ないモノには制裁を行う。
どんな理由でも、命を奪う事をする場合は、命を狩り取られる事も知っていなくてはならない。一方的に有利な事はあり得ないのだ。

それを忘れた時に、狩り取っていたモノに最悪な事が起こる。

別の草がガサガサと鳴った。
一瞬の事で、自分の足音で分からなくなるが、

「・・・・篤郎。」

「お、気が付いた。」

「離れる。」

「頑張ってこい。」

レオンは音で気が付いた。
と、言っても何がでは無い。相手も判らずに行ってしまったのだ。

篤郎の頑張ってこいとは、何も考えないで飛び込む事を指していた。
勇気な行動よりも、蛮勇な行動である。
絶対的な強さがあっても、敵に策略も罠もあった場合なら、死ぬだけなのだから。

篤郎は既に解っていた。
ラニガーウルフが12匹にエアーウルフが4匹とスキニートタイガーが1匹になる。
A級のパーティーが3組が必要になる人数だ。
魔王に勝てるレオンならば、死ななくても大怪我は免れない。

それが理解出来ているなら、対処も出来るだろう。

レオンは、対処も理解もしてない。

行き当たり張ったりだが、レオンは動物達に向かったのだ。

追い掛けて直ぐに、ラニガーウルフが襲いかかる。

レオンは、剣を抜いてラニガーウルフをぶった切った。
真っ二つになった後ろからもラニガーウルフがレオンを襲う。

レオンのスキルは無敵だが、対1の場合に限る。10人の敵でも、一人つづを倒すを行えば負ける事はない。
ただし、見通しが良くて足場が把握出来る場所ならになる。

今は足場が不安定で、見通しは悪い。

だが、ラニガーウルフなら問題無く、切って捨てる事で問題はない。
そう、ラニガーウルフならだ。

両方から襲われてを対処していたら、前からラニガーウルフが襲いかかるのだが、その下からスキニートラニガーの突進を受けると、レオンは後方にぶっ飛んだ。
一瞬だが息が止まり、意識がはっきりとしない。そこにエアーウルフが二匹襲いかかる。
後ろにもラニガーウルフの残りもいたのだ。

「馬鹿か、お前は。」

一筋の風がレオンの側を横切った。
篤郎の姿はレオンの前でしゃがんでいる。
レオンは慌ててその後ろを見たのだ。
首が無い動物達の姿を。

「終わったろ。帰るぞ、ヘッポコ。」

篤郎は立ち上がり、歩き出した。その姿を見ていてから、もう一度だけ死体を確認しようとしたのだが、その場所には何も無かったのである。

レオンは意味が分からずに辺りを見渡していた。無くなった物を探すように。

時間にして1分だけ見渡すと、レオンは篤郎の跡を追う。

これ以上、迷子にならない為に。
しおりを挟む

処理中です...