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第10章 アルテウル

落ち込む

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「はー。」

「ミィー。」

セキちゃんとチャーミーは落ち込んでいた。
主である、篤郎の『光の柱』事件は、ティムされている彼女達にとっての青天の霹靂である。

だから、白龍もレベルタンもアナスタシアも落ち込んでいる。
なにせ、愛する者を拒絶した事になる行為をしたのだから。


あの『光の柱』は、まさに生きる者にとって生きた心地がしなかった事件だ。
ただの光なら問題にはならないが、篤郎の光は、まさに凶器。
震える事しかできない、光だったのだ。

それを見ただけで、篤郎から逃げる様に避けたのだから、篤郎から幻滅されても仕方がない。
だけど、謝りたい気持ちもあるのだが、篤郎は居ない。

みんなが避けて居たら、居なくなったのだ。
ルナ様にも連絡は入れているが『問題はありません』しか答えてくれない。
恐くなったから、好きな人を避けた事実が大きくのし掛かって来る。

普通なら『別れる』が言えるのだが、奴隷でありティムされた者が主から捨てられるとなれば、死活問題である。

何故なら、一度味わった魔国の文明から去るとなると、生きていけない。
髪をしっとりと柔らかく良い香りの物、知らなかった美味しい食事、着心地の良く補正までしてくれる下着。
そして、臭く無い町にトイレ。
温かくシャワーが無い生活など考えられないのだ!

それを恩恵をくれたのが、篤郎である。

その大恩人である、篤郎を好きになり求愛をした。そして、裏切ったのだ。

この生活の終わりが来るとなると、今の彼女達には荷が重く感じていた。

それでも、挽回策を考えている。

女には、現実を考えると同時に打算的な考えをしている。(打算的を理論的と勘違いを良くする。)逃げた言い訳を考えて、今の維持を先に考えるのだ。そして、どうするかでは無く、原因の転換を探してしまう。
例えば、篤郎が光の柱を出したから逃げたとなる。ただ、白龍やセキちゃんはその理論(?)は即座に却下した。

反論は『ルナ様達の様に篤郎様だから、光の柱も出せるのであって、他の者は不可能でしょ?その偉大な篤郎様を避けたのは我々であって、篤郎様では無い。誠心誠意に謝る事です。』と。

そう、女とは、悪い事をした時、相手を責めてしまう。頭では何が悪いのか?を理解しているのに、好きな人を降して自分の配下にしたいと思うのだ。
それを、アナスタシアとレベルタンとしては、諦められないのだ。

無駄だとしても、何万分の掛けなのだから。







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「うっそ・・・・」

「現実に戻って、仕事をして下さい!」

ミネルシルバは呆然としていて、グルタン達は必死に作業をしていた。
未曾有の事が起こったのだから、仕方がない。それも篤郎が起こしたのだ。

因みに、グルタン達は予想していたので、諦めて仕事をしている。
篤郎のした事により、被害状態と亡くなった魂の行き先を仕分けるのにだ。
魂とは沢山あって、行く先も沢山なのだ。大抵は惑星だけで修まるので楽なのだが、篤郎のしでかした事は、実は膨大な死んだ魂の山を作り出した。

先に書くが、魂とは人や動物だけに有るモノでは無い。良く『生きとし生きるもの・・・』とあるが、全ての存在に有るのだ。
石等の無機質は別だが。
何が有るのかと云えば、ミクロに生きる細胞にも魂が有る。
人間一人に一つの魂では無い。数十兆の魂が生まれ変わるのだ。

その行き先は決められているのだが、たまに神の気まぐれ的な事をすると、したの神達は完徹の状態になる。

簡単に。石にも魂が有るのは、石にも細胞(細菌や微生物)が付いているので、魂ならば数万個は有るという事になる。細かい事を書くと色々と問題になるので詳しくは書けない。

ともかく、魂の行き先が重要な仕事となる。

それをしなくてはならないが、ミネルシルバになる。
グルタン達は篤郎の後始末の為に居るだけあって、本来はミネルシルバの仕事なのだ。

「私のせいじゃ無いもん!」

「そうですか。なら、篤郎様に言って来て下さいね。」

「えっ?」

「篤郎様に仕事を増やすなと。」

「言えないし!そんなの違反だから!」

「じゃあ、仕事をして下さい。」

あんなにアホな子だった、グルタンも此処では立派な社会人になっていた。
何故それほど低姿勢で対処をしているのか?
もっと奥深い理由が存在していた。
上は、もう気づいているだろう。撤回もやり直しは、出来ない。

後始末はミネルシルバがやらなくてはいけない案件だ。

そう、ミネルシルバだけが、気がついて無いのだ。
その後始末と、今の仕事を比べるなら、今の方が簡単なのだ。

神とて、打算的に動かなくてはヤってられないのだから。

「もう、イヤー!」

「はいはい。仕事、仕事。」
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