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第10章 アルテウル

堕ちる色男

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どっかの町から何処かの村らしき場所に来た。

レオンは、何時もと違っていた。盗賊に出会わないから、誰かを助ける事も無かったからだ。
多分、宿屋らしき場所に行ったのだが、何故か怪しげに見られていた。
不愉快な視線を受けながらも、宿屋の主らしき者の所に行く。

「泊まりかい?」

レオンは頷く。

「銀貨1枚だ。飯は銅貨20枚。」

レオンは頷いて、財布からお金を銀貨2枚を払った。

「明日の晩まで居るのか?」

レオンは頷く。
チップをあげれば、何処の宿屋でも良くしてくれるのだが、喋るのは苦手だ。
どうせ、夜中に旅立つのだから、勝手にチップとして受け取ってくれるだろう。
何にしても、損はさせていないのだから、良いと考えていた。

何も知らないとは・・・・・・

飯を食べている時に、旅の商人達の会話が聴こえてきた。

「久しぶり!」

「南の方は厳しいのか?」

「まあな。北は?」

「こっちは厳しくなったぞ。」

「そうか。」

商人達は酒を飲んだ。暗くなっても得にはならない。そこで、

「そうだ、面白い話とか聞いた事が無いか?」

「面白い?ああ!あるぞ、面白い話が!」

「お、どんな話だ?」

「色男の話だよ。」

「何だ、好けこましの話か?」

「いやいや、それがさ、この男は良い顔をしてるが、人助けばかりしてるんだ。」

「へー。戦争には行かなかったのか?」

「そうなんだ。この話は戦争後から出てきてるんだ。」

「一攫千金狙いかね?」

「どうかな?何処かに仕えるとか、金品を要求したり、女を要求する事をしてないんだよ。」

「は?何だ、その聖人君子は?」

「だろ?だけど、女にはもてるのよ。」

「嫌な男だねー。」

「しかも、女の家に良く招かれるんだとよ。」

「けっ、だから色男ってか。」

「そう思うだろ?」

「何かあるのかい?」

「それが、寝屋を共にしながらも、ヤりもしないで女を落とすのよ。」

「はっ?」

「落としているのに、ヤらないのか?」

「それだけじゃあ無い。」

「他に何かあるのか?」

「この色男、夜中に居なくなるのさ。」

「えっ?何で?えっ?」

「そう!そうなるだろ。普通なら馬鹿だ。だけど、良い男で無口、それでいて女を落としながら清い状態を残して去るのよ。」

「おいおい、キナ臭い話になってるよ!」

「ご明察!通った町や村に女を捨ててるのに、色男の女達が出来ているのよ。」

「うわー。」

「それでよ、その内の未亡人が、男の事を探して欲しいと、俺達みたいな商人にお金を払って探し出したのよ。」

「おいおい!」

「あちこちに女が居る事を知った未亡人は、財産をばら蒔いてこの話を広めて欲しいって話が飛び火してるのよ。」

「うわー、何かその男、怨まれてるねー。」

「女の嫉妬は恐ろしいよ。とにかく噂かマジ話かは分からないが、話を広めているのさ。」

「最悪だね、その未亡人。」

「で、男の特長が、燃える赤い髪と目をした冒険者だとさ。」

「へぇー。」

レオンの周りの空気が変わった。

「首だけでも持ち帰ってきた者に、金貨10枚!」

商人はレオンにナイフを投げた。
殺気を早目に察知したレオンは、難なくナイフを避ける。
商人達は、短剣を抜いてレオンに向かってきた。

「殺れー!」

商人だけがでは無い。宿屋に居た者達が襲ってきたのだ。
だが、レオンの身体はアルテウル特製であり、スキルも最高な『全武術』・・・・(全ての武器、武術を使う事が出来る。※パッシブル)LV5 を持っていた。人の中では最高位であり、負ける要素は無い。
瞬時にレオンも動いた。
ナイフとフォークを投げて二人の額に刺さり絶命させると、相手を自分の間合いに入れさせると、素手で首を折り殺害をしていた。

「チッ、噂通りの強さか。」

懐から瓶を取り出した。

『危険感知・予知回避』・・・・(自分に襲い掛かる危険を感知した瞬間に回避する方法を導き出す。※パッシブル)LV5 が作動した。

「死ね!」

瓶を、床に叩きつける。瓶から液体が出て燃えるるのだが、商人が火からレオンに視線を向けると、レオンは既にその場には居なかった。

「な!くっそー!」

即座に入口に向かうが、レオンが外で待っていた。

「くそっ!くそ、く・・・・」

レオンが投げた石が、商人の首を潰した。
ただ、襲ってきた敵を討っただけでいたのだが、

「キャー!人殺しー!」

と叫ばれた。
一瞬にして不味いと思い、レオンは逃げ出したのだ。

例え、強者であろうと、自分に向けて突然の叫び声や非難を浴びると、咄嗟の行動は逃げるになる。

大義名分や弁が立つのなら、逃げないが、大義名分はあっても話さないレオンには、無理な事になる。よって、逃げる。
逃げる事でどうなるかさえも分からず、逃げだのだ。

南に向かって。
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