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第10章 アルテウル

人を呪わば穴二つ

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「レベルが50になったか・・・・」

ズブリと刺した剣を引き抜いた。

「奴隷や乞食程度では、もう上がらないのか。後は、軍か魔王の部下でどうにかするか。」

死んだ子供を死体の山に放り込む。

「片付けを頼む。」

「はっ!」

「お疲れ様です、アリテウル様。」

「ラウル司祭、タオルをありがとう。」

アリテウルは、笑顔を崩さずタオルで血を拭いた。沢山の死体と血の臭いでむせる者が多いが、アリテウルは平気である。

「当分は、経験値は良い。それよりも、戦いの前に禊を頼み隊のだが?」

「禊とは?」

「女だ。」

「はっ?」

「初物の血が良いので、集めてくれ。」

「そんな事は!」

一瞬だが、アリテウルの顔がイラついだが、元の笑顔に戻り、

「魔王討伐の為の禊です。疑うなら、アルテウル神から聞いて下さい。あ!貴方では、神の声は聞こえませんか?」

「そ、それは・・・出来ません。」

「神から聞いた事は、戦いの前に女の初物の血を浴びる事が、魔王を討伐に必要なのです。平和を取り戻す為に、犠牲が必要なのです。分かりますか、ラウル司祭?」

「は、はあ。」

アリテウルはラウルの肩を掴む。

「神のお言葉に、従え無いとでも?」

「い、いえ!そんな事は・・・・」

「では、頼みましたよ。」

手を放し、その場から離れながらも、舌舐めずりをした。

騙す事には、慣れているのだろう。

ラウルは騙される事に慣れて無い。
出してきたのに、自分は騙されないと考えていた結果でもある。
騙し騙されの典型的な姿だ。
もちろん、アリテウルでさえそうなのだから。

「魔王を討伐まで後少しですよ!」

アリテウルの言葉にラウルは動きだした。そこには、間違いや疑念の心はない。
神から言われた、人類の宿敵『魔王』を討伐する為。
一人が生きるよりも、多くの人が生きる為と云う大義の為の行動を行使しだしたのだ。

良くある大義名分の前には、真偽の判断も考える事も放棄している。大義名分こそが、使命とさえ思っている。

狂信者や聖戦と唱える者は、全て大義名分により生死も人の怨みさえも理解出来ない。
いや、本当は理解している。大義名分と云う傘に隠れて、狂うのだ。

医者も科学者も、狂う者が多いのは、大義名分が在るからだ。

間違ってはいけないのは、自己の大義名分は意味が無いのだ。
人を傷付けた、悪口を言った、殺したならした事が全てなのだから。

そう、一度狂うと、自己の精神を守る為に狂ったままになる。

戻れば、『した』罪を贖罪しなければならないからだ。

大人の『素直に心から謝る』とは、大人には出来ない事だから、子供には云うのだ。
大人に成れば、口だけの謝罪は直ぐに出来るが、心から謝る事は出来ない。
いや、本当はしたいのだろう。
だが、その時には、自分の持っている地位や家族が壊れる。

子供の謝罪と大人の謝罪の違いでもあり、大人の意味となる。

それを問うとは、全てを壊す事になるから『したくない』になる。
そして、時が経てば経つほど、罪の大きさが膨らむ。
ピラミッド社会を形成した社会には、当たり前の様にへばりつく。

王家や貴族はもとより、組織にも神を信じる者達でも在るのだ。

逃げれない、罪の連鎖として・・・・

「楽しいなぁ。蘇るのも悪く無いなぁ。」

アリテウルは黒く笑った。
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