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第9章 ミネルシルバ

体を動かしました

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「ふぅー。」

手をはたきながら、篤郎は笑顔だった。

「えー、と。えっ?」

アルケニーにとって、篤郎はトンでもない魔法を使う人だと思っていた。アルケニー軍を魔法で下したが記憶にあるからだ。だから、人が多数を撃ち破ると言われても、千人を倒す者になり、その人を英雄と言われる。だが、

「篤郎様は英雄でしたか。」

「なにそれ?」

「いや、称号にありませんか?」

「称号?」

「あの、ギルドカードは。」

「ああ、ギルドカードね。ははっ、俺の見れねーよ。」

「は、えっ?」

「カード♪はい、カード。」

ギルドカードが黒い。噂の通称『間抜け』のカードがそこにあった。ナイスミドルなアルケニーも鼻水を垂らしていた。

「きたねー!鼻水垂らしてやがる!」

篤郎の言葉にも反応出来ないアルケニー。
そして、大地に寝て居る軍勢が約1万。
その真ん中で、はしゃぐ篤郎が居る。

何が起こったのか?
簡単な(?)理由を篤郎が言った事が始まりだった。

「ここんとこ、魔法ばかりで体が鈍りそうだ。」

「あの軍勢ですよ?何時も通りに魔法で片付けるんでは?」

「んー、やっぱ体を動かそう。フェイトと止まれ。」

馬車が止まり、篤郎は素手のままで降りて行く。

「篤郎様?武器は!武器を持たないと!」

「行ってきー。」

篤郎が驚異のスピードで軍勢に突っ込んだ。魔力で肉体を強化しても、大地に爆発を起こせる事は今の今までに聞いた事も見た事もない。それに、魔力を使っていたら感知するのだが、魔力を使った形跡は篤郎からは無い。寧ろ、軍勢は魔力を使ってる。

寒気が身体を走るのは、フルプートが凹こみ、その人が飛んで巻き込まれて倒れていく。爆発した処に巻き込まれているし、爆発の原因は、魔法を殴った原因だと推察できた。

最初の爆発は、まさに防御魔法を殴った結果であった。ただ、気合いを乗せた拳からは、魔法のようなモノを感じたし、地面が拳を大きくしたような凹みもあった。

そんな事なので、戦争でも無い一方的な喧嘩は、一時間も経たずに終わったのだ。

人の真剣試合に掛かる時間は、およそ30分。竹刀なら10分だろう。一瞬と言えど2分は掛かるが、格差が大きく無いとダメだ。だから、百人組手は時間が大きく掛かる。やった人なら分かるが、10時間以上掛かる。それが千人なら?そう、恐ろしく時間が掛かるのだ。それをあっさりと終わらした。

化け物なのか悪魔なのか分からないが、我が主が汗をかいていた。と言っても、ほんのりと出てるだけだ。
で、最初に戻る。

「さて、契約契約ぅー!」

こうして、新たな奴隷を得た篤郎。
これが引き金となって南部の均衡が崩れるとは、篤郎も思っても無かった。
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