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第9章 ミネルシルバ

対アルケニー国

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アルケニー国の内情は混乱していた。

混乱の原因は、闇ギルドが無くなった事による混乱だ。アルケニー国の王族のスキャンダルに闇ギルド有りなのは当然で、その関係で城に居る貴族も関係がある。

闇ギルドに何かあると、アルケニー国が滅ぶ。

そんな密約もあるのに、突然に忽然と消えたのだ。

大元は森に出来た砦にあるのは城は知っていた。無駄な所に闇ギルドの拠点には、王も喜んでいた。上納金が増えるからだ。

喜んだのもつかの間に、病み付きギルドが消えて、森の砦が城よりも強固になった知らせが来たのは2週間前。

消えた先が、森の城だった。

慌てた王は、急いで貴族の招集を行った。貴族達も慌てる様に、城に集まったのだが、どの様な理由を作るのに対応に追われた。

その採決までに1週間。兵と食糧を集めるのに、更に1週間も掛かった。

そして、アルケニー国始まって以来の軍勢を動かす事になった。

その訳は、闇ギルドから聞いた宝の山にある。その分け前を貰う為の全貴族の進軍になる。云わば、国上げての討伐が行われたのだ。

王公貴族の色めくのは分かるが、兵や冒険者、奴隷までもが湧いていた。

お宝を目指して、アルケニー国軍は約50万の兵を率いて、篤郎の村に向かったのだ。





ーーーーーーーーーーーーーー





村の防壁にある、巨大な望遠鏡で遊んでいた子供達がその異変に気が付いた。

丁度、篤郎が海水を汲みにバイパー国に走っていた。糸よりも酵母、麹の為にだ。味噌を作りたい、醤油にお酒に味醂にも必要だからだ。だから、その東門の進軍に気付かなかったのは、仕方がない。

「クラークさんに報告しないと!」

子供達によって、アルケニー国の進軍の確認をしたクラークは、初の警報を鳴らす事になった。けたたましく鳴った警報は、壁を強固な箱にしたのだ。外門と内門、外壁と内壁の厚さに、どうなるのか、元騎士達は内壁から見ていた。

そう、元闇ギルド対アルケニー国の開戦が迫っていたのだ。

普通の攻城戦なら口上は必要になるが、討伐を理由に口上をしなかった。初めから好戦ムードで攻めて来たのが昼をすぎた頃になる。

アルケニーの最手の矢は、外壁の屋根に阻まれた。

戦闘開始位置を決めていた、奴隷達の矢が軍を阻んだ。死者が出てもアルケニー国は攻めていた。

「攻めよ!盗賊の宝の山は直ぐ目の前にあるぞ!」

「屍を盾に進め!」

「褒賞は思いのままだ!」

まだ見ぬ財宝を求める欲は、男も女も老いも若きも身分さえ関係無く燃える。その分、蹂躙も破壊も略奪も強姦等の罪を正当なものにしてしまうのだ。

地球であった植民地支配とは、まさに同盟と言う名を借りた、略奪を行った。連れ去った者を奴隷にして、男は過酷な労働を女には労働と強姦を行ったのが、ヨーロッパの各国とアメリカであり、今なお続く、白人と黒人の争いになる。

それらは『欲』によって引き起こらせた。

今も続いているのだが、アルケニー国も同じであった。

『欲』の為に人を死なす。討伐と命題を与えた略奪をだ。

「攻めろー!」

で、兵達は我を忘れて攻めて、矢で死んだ。ただ、兵達の多くはほとんどが即死だったので、笑いの表情で死んでいた。

受けての村では、外壁の射攻口から矢を放っていた。

四メートルの壁は無敵に近かったのと、一万の兵力が機能的に動いていたのだ。そこには、感情も感覚も無い。指揮官と兵だけの防衛を、ただ行っている。

矢は無限とも思える程にあり、交代の兵もふんだんに居る。食事も配給されるし、飲み物もある。壁の内部には自室があり寝る事も可能だ。

「敵の行軍は!」

「進行は止まりません!」

「そろそろ、鉄矢に変えるか?」

「一般兵の投入はまだです!」

「良し!一般兵が投入されたら報告!」

「了解!」

「交代を順次行え!戦闘は始まったばかりだが、相手に合わせて疲れる必要は無いからな!」

「はい!」

村人でも盗賊でも、統率が取れた軍団は強い。

絆とかでは無く、言われた事を何も考えずに繰り返し行動するのは、人では不可能だからだ。

そこで大事な事は、こまめな休憩と鼓舞する話題になる。そう、指揮官こそが辛い位置に居る。それを理解させるには、問答無用で指揮官にする事にある。だらだらは出来ない、声も大きく、周りを常に見て判断を明確にしていくのだ。そう、終わるまで休憩は無い。トイレ休憩も飯休憩も無い。

指揮官の判断ミスは負けなのだ。一瞬の気の緩みを許さないのが、指揮官の仕事なのだから。

野盗になった軍隊と統率が取れた軍隊になった奴隷では、勝ち負けも明確になっていたのだ。

「敵の矢は尽きませんな。」

「流石は闇ギルドと言いたい所だな。」

「奴隷達の残りわ?」

「約9万を切った所だな。」

「多く見積もっても、後2刻持つかな。」

「損失に合う利益があるのです。何とかなるでしょう。」

「「「そうだな!」」」

貴族ならではの会話になる。そう、『取らぬ狸の皮算用』の言葉通りに、落とす前から利益だけを考えているのだ。

だから、狭い道一杯にして攻めているのだ。一人でも門に近づければ、戦局が変わるからだ。

だが、アルケニー国は、外壁の兵力が一万もあるとは思ってもいない。そして、食事も水も十二分にあり、弓の換えも、矢の補給も恐ろしい程に充実してる事も知らない。

戦略において必要な事は情報だ。

敵の人数、武器、食糧は基より、指揮系統から敵兵の士気に城壁の弱点までを知っている方が勝つからだ。

例えば、士気と武器が同じで、城を攻める場合は、戦力の10倍が必要になる。この条件ならアルケニーの軍勢なら蹂躙出来る数になる。

しかし、城壁から500メートルは開けた平地で、敵が見えない。兵力も士気の度合いも分からず、屍を積み重ねている。矢が途切れる事無く射たれていて、味方の兵も若干の混乱も出ている。まともな指揮官が要れば状況も変わるのだが、王の採決の前に誰も反対は出来ない。

そして、1刻(一時間)を経過しても止まない矢に、各将軍にも焦りを感じていた。

そして、上司の貴族に報告を上げているが、採用されないでいた。将軍(騎士)達は鎧を着ているが、王公貴族達は貴族服でワイン等の酒を天幕で飲んでいるのだ。

多数による少数の戦いの失敗の全てをアルケニー国は行っている事を知らない。


ただし、天空よりも上からは、監視されているのだが・・・・
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