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第9章 ミネルシルバ

テロとなる食事をしよう

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篤郎の怒濤の掃除を見るはめになった、経理課の面々は、税務課に一層の怒りを貯めていた。

優秀な人材は、無能の100人よりも強いと知っているし、誰も優秀な人材だと思っているから質が悪い。

貴族は有能な人材と言う迷信を信じて数百年も過ぎて居るのだから、平民の有能な人材を信じ無いのは、当たり前なのだ。

篤郎の存在は異質になるのだが、上官であるベンツ、パーロットの二人からも重宝されている。だから、税務課の二人を恨む結果となっていた。

篤郎は何となく、課の確執を読み取り、対策を立てる事になっていた。と言うか、何故此処に落ちたのか?何故クリスとスベールに拾われたか?を考えていた。

ルナのやり方に異存はないのだが、何をするのかの指南が無い。無いのだから、目的が分からないのだ。不条理が篤郎を包むのだが、悩んだ所でなるようにしかならない。

人は卓越や悟りと呼ぶ事になるが、諦めと言う簡単な思考でかたが着いたりするのだ。

「今夜は鍋にしたいなー。」

唐突だが、篤郎の口から出たのは、晩のご飯の事だった。

篤郎は、暑い日でも鍋が好きだ。暑い物をクーラーの効いた部屋で食べると最高なのだ。大抵は嫌がられるけど。白出汁にバターを混ぜて、酒粕も溶かして、鮭等の魚と野菜で食べる。もちろん、餅やうどんも入れるのが好きなのだ。

シチューうどんを食べた事が有るが、こっちの方が好きなのだ。

うん、これにしよう。

初日で就業時間も終わる。
クリスとスベールはまだ、机の書類とにらめっこしていた。

「クリスさん。」

「んー、どうした?」

書類とにらめっこをしながら、篤郎に答えていた。

「時間なので帰りたいのですが。」

「ああ、お疲れ。」

「私の寝る所は何処になります?」

「えっ?」

クリスは篤郎を見た。何でと思ったのだろ。

「あー、寝る所はしばらくはクリスの家かな。宿舎の手配はしてるけど、1日は掛かるからね。」

「マジか?」

「あー、では、クリスさんの家に帰っておきます。」

「ウウッ。」

クリスは抵抗したいのだが、もう1日ぐらいならと諦める。

「分かったよ。」

「では、クリスさん、スベールさんお疲れ様でした。」

「お疲れ。」

集中しだしてるのは、有能な証拠だとも言えるが、先を見通すには足りなかったのだ。

篤郎はクリスの家に帰った。

さて再度言うが、この世界の料理は不味い。

塩も胡椒も高い。冗談抜きで、今のお使いの塩や胡椒は金と同じ値段になるのだ。でも、この世界では屑の塩や胡椒でも金とはいかないが、日本の百倍はある。だから、沢山に使え無い。

使え無いから我慢しないのが魔王の篤郎である。そう、それらを可能な道具を入れたポシェトを持っている。

『四次元部屋』は、何故か封鎖中だが、ポシェトの中を新たな四次元に繋ぐ事は可能だ。だから、緊急用にポシェトを持ち歩いているのだ。

娘の仕打ちに堪えるお父さん的な感じかもね。

こんな状況だから何が有っても良い様にするのが、最良なのだ。怨み事を言っても解決にはならない。

さて、帰宅後に鍋の準備だ。

野菜は白菜をメインに大根に人参や茸類が必要。戻し椎茸があれば最高だね!大根は準備が必要だ。皮を向き、3~4㎝に輪切りにしたら角を取り、2㎝のバツ印の包丁を入れてる。

出汁は、昆布を引いて布に鰹節に煮干し(腸は取る)を巻いて湯に入れる。容器は土鍋ね。魚は鮭と鰹が良い。別に鯛でも良いのだが、味が変わるので使うなら最後にする。鰆でも良い。

魚は切り身にして、塩で軽く水を出して拭いておくこと。魚の臭みは最初の水気に含まれるからね。

鍋が軽く泡が出たら弱火でしばらく放っておく。10分したら、布を絞る。魔法で搾るから簡単で便利だ。

出来た出汁に日本酒を加えて、酒粕を加える。先に千切って加えると全体に馴染むので楽しいぞ。

魚を底に沈めたら、野菜や茸類を投下。後は弱火を維持して灰汁が出ない様に気を付けて炊く。

後はうどんと替えの魚野菜を準備しておく。私は最後の締めは米に決めている。鍋は米、鉄鍋にはうどんの掟を作っている。

うどんに汁を絡めて呑むよりも、米に出汁を含ませた方が好きだからだ。出汁を味合うのが雑炊だからね。

因みに、鯛を使うなら最初の出汁を鍋に別ける事をお薦めする。鯛味と無しの二度味合うのも、これまた一興だからだ。

食べる前に、白味噌を少し加えてから食べよう!

作って、クリスを待つ。
帰って来るのが楽しみだ。

「帰ったぞ、アツロウ!」

「アツロウ、生きているか?」

「こんばんは。」

クリスとスベールと、女の人と子供が二人が入ってきた。

「お帰りなさい。スベールさんも?」

「ああ、男やもめだから、ご飯のお裾分けを、スベールの嫁さんに・・・・」

「何だか、良い匂いが・・・」

「本当だよね・・・・」

「「カーちゃん・・・・」」

うをっ!何か食いそうな者が増えたな。

「ご飯を作りましたから、味見していって下さい。」

篤郎は、皆を鍋の前に座らせた。
皆の目が、鍋に釘付けだ。

「熱いので注意して食べて下さい。」

鍋の蓋を取ると、急ぐ様に鍋から具を掬い取る。

「慌て無いで、お代わりは十分にありますから!」

うん、話を聞いてくれない。蟹を食べている感じだな。
新しい味にご満悦してくれているようだ。料理を出す者にとって、不足無い食べっぷりだ。さあ、お腹がはち切れるまで、堪能してもらおうか!

篤郎の鍋奉行振りをかもしながら、スベール一家を食の餌食にしたのだった。

雑炊まで堪能してもらったのと、雑魚寝しなくてはいけなくなった事を報告しておく。

何処で間違ったのか・・・・・
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