上 下
201 / 505
第9章 ミネルシルバ

テロとなる食事をしよう

しおりを挟む
篤郎の怒濤の掃除を見るはめになった、経理課の面々は、税務課に一層の怒りを貯めていた。

優秀な人材は、無能の100人よりも強いと知っているし、誰も優秀な人材だと思っているから質が悪い。

貴族は有能な人材と言う迷信を信じて数百年も過ぎて居るのだから、平民の有能な人材を信じ無いのは、当たり前なのだ。

篤郎の存在は異質になるのだが、上官であるベンツ、パーロットの二人からも重宝されている。だから、税務課の二人を恨む結果となっていた。

篤郎は何となく、課の確執を読み取り、対策を立てる事になっていた。と言うか、何故此処に落ちたのか?何故クリスとスベールに拾われたか?を考えていた。

ルナのやり方に異存はないのだが、何をするのかの指南が無い。無いのだから、目的が分からないのだ。不条理が篤郎を包むのだが、悩んだ所でなるようにしかならない。

人は卓越や悟りと呼ぶ事になるが、諦めと言う簡単な思考でかたが着いたりするのだ。

「今夜は鍋にしたいなー。」

唐突だが、篤郎の口から出たのは、晩のご飯の事だった。

篤郎は、暑い日でも鍋が好きだ。暑い物をクーラーの効いた部屋で食べると最高なのだ。大抵は嫌がられるけど。白出汁にバターを混ぜて、酒粕も溶かして、鮭等の魚と野菜で食べる。もちろん、餅やうどんも入れるのが好きなのだ。

シチューうどんを食べた事が有るが、こっちの方が好きなのだ。

うん、これにしよう。

初日で就業時間も終わる。
クリスとスベールはまだ、机の書類とにらめっこしていた。

「クリスさん。」

「んー、どうした?」

書類とにらめっこをしながら、篤郎に答えていた。

「時間なので帰りたいのですが。」

「ああ、お疲れ。」

「私の寝る所は何処になります?」

「えっ?」

クリスは篤郎を見た。何でと思ったのだろ。

「あー、寝る所はしばらくはクリスの家かな。宿舎の手配はしてるけど、1日は掛かるからね。」

「マジか?」

「あー、では、クリスさんの家に帰っておきます。」

「ウウッ。」

クリスは抵抗したいのだが、もう1日ぐらいならと諦める。

「分かったよ。」

「では、クリスさん、スベールさんお疲れ様でした。」

「お疲れ。」

集中しだしてるのは、有能な証拠だとも言えるが、先を見通すには足りなかったのだ。

篤郎はクリスの家に帰った。

さて再度言うが、この世界の料理は不味い。

塩も胡椒も高い。冗談抜きで、今のお使いの塩や胡椒は金と同じ値段になるのだ。でも、この世界では屑の塩や胡椒でも金とはいかないが、日本の百倍はある。だから、沢山に使え無い。

使え無いから我慢しないのが魔王の篤郎である。そう、それらを可能な道具を入れたポシェトを持っている。

『四次元部屋』は、何故か封鎖中だが、ポシェトの中を新たな四次元に繋ぐ事は可能だ。だから、緊急用にポシェトを持ち歩いているのだ。

娘の仕打ちに堪えるお父さん的な感じかもね。

こんな状況だから何が有っても良い様にするのが、最良なのだ。怨み事を言っても解決にはならない。

さて、帰宅後に鍋の準備だ。

野菜は白菜をメインに大根に人参や茸類が必要。戻し椎茸があれば最高だね!大根は準備が必要だ。皮を向き、3~4㎝に輪切りにしたら角を取り、2㎝のバツ印の包丁を入れてる。

出汁は、昆布を引いて布に鰹節に煮干し(腸は取る)を巻いて湯に入れる。容器は土鍋ね。魚は鮭と鰹が良い。別に鯛でも良いのだが、味が変わるので使うなら最後にする。鰆でも良い。

魚は切り身にして、塩で軽く水を出して拭いておくこと。魚の臭みは最初の水気に含まれるからね。

鍋が軽く泡が出たら弱火でしばらく放っておく。10分したら、布を絞る。魔法で搾るから簡単で便利だ。

出来た出汁に日本酒を加えて、酒粕を加える。先に千切って加えると全体に馴染むので楽しいぞ。

魚を底に沈めたら、野菜や茸類を投下。後は弱火を維持して灰汁が出ない様に気を付けて炊く。

後はうどんと替えの魚野菜を準備しておく。私は最後の締めは米に決めている。鍋は米、鉄鍋にはうどんの掟を作っている。

うどんに汁を絡めて呑むよりも、米に出汁を含ませた方が好きだからだ。出汁を味合うのが雑炊だからね。

因みに、鯛を使うなら最初の出汁を鍋に別ける事をお薦めする。鯛味と無しの二度味合うのも、これまた一興だからだ。

食べる前に、白味噌を少し加えてから食べよう!

作って、クリスを待つ。
帰って来るのが楽しみだ。

「帰ったぞ、アツロウ!」

「アツロウ、生きているか?」

「こんばんは。」

クリスとスベールと、女の人と子供が二人が入ってきた。

「お帰りなさい。スベールさんも?」

「ああ、男やもめだから、ご飯のお裾分けを、スベールの嫁さんに・・・・」

「何だか、良い匂いが・・・」

「本当だよね・・・・」

「「カーちゃん・・・・」」

うをっ!何か食いそうな者が増えたな。

「ご飯を作りましたから、味見していって下さい。」

篤郎は、皆を鍋の前に座らせた。
皆の目が、鍋に釘付けだ。

「熱いので注意して食べて下さい。」

鍋の蓋を取ると、急ぐ様に鍋から具を掬い取る。

「慌て無いで、お代わりは十分にありますから!」

うん、話を聞いてくれない。蟹を食べている感じだな。
新しい味にご満悦してくれているようだ。料理を出す者にとって、不足無い食べっぷりだ。さあ、お腹がはち切れるまで、堪能してもらおうか!

篤郎の鍋奉行振りをかもしながら、スベール一家を食の餌食にしたのだった。

雑炊まで堪能してもらったのと、雑魚寝しなくてはいけなくなった事を報告しておく。

何処で間違ったのか・・・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

欲しいのならば、全部あげましょう

杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」 今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。 「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」 それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど? 「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」 とお父様。 「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」 とお義母様。 「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」 と専属侍女。 この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。 挙げ句の果てに。 「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」 妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。 そうですか。 欲しいのならば、あげましょう。 ですがもう、こちらも遠慮しませんよ? ◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。 「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。 恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。 一発ネタですが後悔はありません。 テンプレ詰め合わせですがよろしければ。 ◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。 カクヨムでも公開しました。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

処理中です...