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第9章 ミネルシルバ
就職しました。
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「お茶です。」
「お、すまないねー、アツロウくん。」
その後、スベールは篤郎を臨時の掃除係としての採用をパーロット・ヴェンツ上官に認めてもらい(認証の判子まで貰った。)ニンマリとしてる所に奥さんが現れて、昨晩の事を洗いざらい白状して、多少の顔の形が変形した感じで許されて、すっかりと綺麗な部屋で、またもやニンマリしながら紅茶を飲んでいる。
「しかし、ハニーの拷問の間に、数週間掛かると思っていた掃除を終わらすなんてねー。」
「なんか、掃除は得意みたいでして。」
「・・・・・・・」
クリスは黙っていた。
篤郎を有能な秘書官として認めるしかないのだが、篤郎が掃除をした所を見ていないのだ。
出勤後に、篤郎を先に執務部屋に送り、着替えをして戻ったら綺麗になっていたのだ。天井から棚上に壁や床に至るまでの隅々まで、埃までもが消えてしまっていたのだ。書類も綺麗に収められていて、年号毎に地域順に並べられていた。
人間の技を越えた存在なのかもしれないのに、スベールは呑気に自我を褒めていた。
と、扉が急に開いて、
「スベール君!なんだね、この申請は!こん、な・・・・」
意気込んで来たのが、部屋の感じと綺麗さに驚く、ベンツ・ハルウエット副上官は言葉を失った。
「これは、ベンツ副上官!どうです、有能な若者でしょう?」
スベールは篤郎を紹介しながらも、自分の手柄を自慢していたのだ。ベンツ副上官は抵抗したいのか、窓枠を指でなぞり、棚の上を触って埃を確認したいが、なかったのだ。
震える体をしながら、
「スベール君、彼は何処で知り得たのだね。」
「はっ!昨晩、保護した少年です。」
「昨晩?では、何処の筋か分からないのか?」
「はい。」
「では、君は出て行きなさい。」
「お待ち下さい、ベンツ副上官。」
「何かね?」
「彼、いやアツロウ君は記憶たぶん喪失らしいなのです。そんな、1ペルー無しの彼を追い出しても良いと?有能な男を追い出す余裕が、今の役所にあるとでも?」
「・・・・・・」
「それに、良く書類を見て下さい。認可した所しか行きません。此処はパーロット上官に認可を頂きました。他は共有の廊下、トイレ、庭の手入れをしてもらう予定です。」
「ふむ。」
「先ず(予定ではないが)この部屋が、彼アツロウ君の挨拶代わりになるでしょう。」
詐欺師のような手口だが、スベールのもう1つの有能な口は冴えていた。
だが、ベンツ副上官は、クリスとスベールの今の制服が綺麗になっている事にも着目していた。
「分かりました。では、後で私の部屋もお願いする。」
「おお!ありがとうございます。ホレ、アツロウ。」
「あ。篤郎です、宜しくお願いします。」
クリスは状況をただ見ていた。
本当に年の功は凄いよ、スベールと感心しながらだが。
こうして篤郎はアルケニー国の税務経理課に臨時採用を勝ち得た(?)のだった。
その後の篤郎は、掃除をしつつ税務室でクリスとスベールのお茶にと世話をしていたのだ。
昼の鐘が鳴り、食堂に行く二人は、篤郎の仕事振りに感動さえしていた。
「見てみろ、廊下や庭が綺麗になっているぞ!」
「凄い・・・なんて凄い男なんだろうか?」
二人だけではない。後から出てきた経理課の貴族連中でさえも、綺麗になった廊下に驚いていた。
「アツロウさま、さまだな。」
「大きな拾い物だね。」
「「ふふふ、ふはははははは!」」
二人して喜んでいた。
その頃の篤郎は、ベンツ副上官の部屋で掃除をしていた。ベンツ副上官の監視下でだ。
だが、篤郎の行動はベンツ副上官の考えを凌駕していたのだ。それは、魔法を下らない掃除に応用してるなんて。魔力の無駄使いに他ならないのだが、篤郎は魔力切れも起こさずに、サクサク終わらしていた。本や書類も魔法で、しかも無詠唱でだ。
人類史上、無詠唱で魔法を使う者を見たことも聞いた事も無いのだから。大きな拾い物である。
それを見ているしかないのだ。あっさりと終わるのを見て、ベンツは頭を抱えていた。
「どうかしました?」
「アツロウ君だったね。君は何をしたのか理解してるかね?」
「掃除ですが。」
「うん。掃除だね。うん。じゃ無い!掃除だけど、そこでは無いのだよ!」
「何処か手落ちでも有りました?」
「それも無い!完璧だよ!」
「良かった!では、次に行きますね。」
お辞儀をして出ていく篤郎。
「そうじゃ無くて、君!君ー!」
言いたい事を言えなかったベンツの声が木霊したのだ。
「お、すまないねー、アツロウくん。」
その後、スベールは篤郎を臨時の掃除係としての採用をパーロット・ヴェンツ上官に認めてもらい(認証の判子まで貰った。)ニンマリとしてる所に奥さんが現れて、昨晩の事を洗いざらい白状して、多少の顔の形が変形した感じで許されて、すっかりと綺麗な部屋で、またもやニンマリしながら紅茶を飲んでいる。
「しかし、ハニーの拷問の間に、数週間掛かると思っていた掃除を終わらすなんてねー。」
「なんか、掃除は得意みたいでして。」
「・・・・・・・」
クリスは黙っていた。
篤郎を有能な秘書官として認めるしかないのだが、篤郎が掃除をした所を見ていないのだ。
出勤後に、篤郎を先に執務部屋に送り、着替えをして戻ったら綺麗になっていたのだ。天井から棚上に壁や床に至るまでの隅々まで、埃までもが消えてしまっていたのだ。書類も綺麗に収められていて、年号毎に地域順に並べられていた。
人間の技を越えた存在なのかもしれないのに、スベールは呑気に自我を褒めていた。
と、扉が急に開いて、
「スベール君!なんだね、この申請は!こん、な・・・・」
意気込んで来たのが、部屋の感じと綺麗さに驚く、ベンツ・ハルウエット副上官は言葉を失った。
「これは、ベンツ副上官!どうです、有能な若者でしょう?」
スベールは篤郎を紹介しながらも、自分の手柄を自慢していたのだ。ベンツ副上官は抵抗したいのか、窓枠を指でなぞり、棚の上を触って埃を確認したいが、なかったのだ。
震える体をしながら、
「スベール君、彼は何処で知り得たのだね。」
「はっ!昨晩、保護した少年です。」
「昨晩?では、何処の筋か分からないのか?」
「はい。」
「では、君は出て行きなさい。」
「お待ち下さい、ベンツ副上官。」
「何かね?」
「彼、いやアツロウ君は記憶たぶん喪失らしいなのです。そんな、1ペルー無しの彼を追い出しても良いと?有能な男を追い出す余裕が、今の役所にあるとでも?」
「・・・・・・」
「それに、良く書類を見て下さい。認可した所しか行きません。此処はパーロット上官に認可を頂きました。他は共有の廊下、トイレ、庭の手入れをしてもらう予定です。」
「ふむ。」
「先ず(予定ではないが)この部屋が、彼アツロウ君の挨拶代わりになるでしょう。」
詐欺師のような手口だが、スベールのもう1つの有能な口は冴えていた。
だが、ベンツ副上官は、クリスとスベールの今の制服が綺麗になっている事にも着目していた。
「分かりました。では、後で私の部屋もお願いする。」
「おお!ありがとうございます。ホレ、アツロウ。」
「あ。篤郎です、宜しくお願いします。」
クリスは状況をただ見ていた。
本当に年の功は凄いよ、スベールと感心しながらだが。
こうして篤郎はアルケニー国の税務経理課に臨時採用を勝ち得た(?)のだった。
その後の篤郎は、掃除をしつつ税務室でクリスとスベールのお茶にと世話をしていたのだ。
昼の鐘が鳴り、食堂に行く二人は、篤郎の仕事振りに感動さえしていた。
「見てみろ、廊下や庭が綺麗になっているぞ!」
「凄い・・・なんて凄い男なんだろうか?」
二人だけではない。後から出てきた経理課の貴族連中でさえも、綺麗になった廊下に驚いていた。
「アツロウさま、さまだな。」
「大きな拾い物だね。」
「「ふふふ、ふはははははは!」」
二人して喜んでいた。
その頃の篤郎は、ベンツ副上官の部屋で掃除をしていた。ベンツ副上官の監視下でだ。
だが、篤郎の行動はベンツ副上官の考えを凌駕していたのだ。それは、魔法を下らない掃除に応用してるなんて。魔力の無駄使いに他ならないのだが、篤郎は魔力切れも起こさずに、サクサク終わらしていた。本や書類も魔法で、しかも無詠唱でだ。
人類史上、無詠唱で魔法を使う者を見たことも聞いた事も無いのだから。大きな拾い物である。
それを見ているしかないのだ。あっさりと終わるのを見て、ベンツは頭を抱えていた。
「どうかしました?」
「アツロウ君だったね。君は何をしたのか理解してるかね?」
「掃除ですが。」
「うん。掃除だね。うん。じゃ無い!掃除だけど、そこでは無いのだよ!」
「何処か手落ちでも有りました?」
「それも無い!完璧だよ!」
「良かった!では、次に行きますね。」
お辞儀をして出ていく篤郎。
「そうじゃ無くて、君!君ー!」
言いたい事を言えなかったベンツの声が木霊したのだ。
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