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第8章 魔王討伐

勇者達と魔王

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馬鹿神達を強制帰還させてた篤郎は、到着の準備をしていた。一週間の時は、荷物を増やすのに十分な時間とも言える。特に厚木と竹下の荷物は増えに増えた。

「鞄が足らないよ!」

「後何個必要なのよ!」

「俺の鞄が無い!」

「えーと、どうなってるの?」

文雄は冷静にしていた。文雄だけは、要らない物は直ぐに捨て、必要最低限の物しか持たないからだ。それに比べて、三人は荷物が多い。決して、アイテムボックスや時空魔法などの便利スキルを持ってもいないし、グッズも無い。
かといって、買った物は棄てる事など出来ない。
自堕落なのか自他楽なのかは、さて置き、この状況には困っている。

「真由子~、そのブラは?」

「駄目よ!サイズは私のが小さいのに。あら、それ可愛い!」

手が空くと云う事は、忙しい所への応援となる。同性なら心配も無いのだが、異性がいてもその話題を話されるのも、ちょっとね。

「あー、この下着へたってる。」

「わー、私も在るわ~。」

前言撤回!嫌だ!男の前で、その話題をするなよ!
と、文雄は思った。が、その事は面と向かって言える事でも無い。勇気とかでは無い。聞き耳を立てた事に言われるからだ。兄妹ならまだしも、異性が居ることを重要視してもらいたい、思春期なのだから。

「終わりましたか?」

救いの言葉だろうか。竹下と厚木が「も、もう少しです!」と焦って、鞄に何やらを押し込んで片付けていたし、とにかく終わった。僕が必要だったのか謎の事になったが、何にも言わない。゛君子危うきに近寄らず゛なのだ。
ただ、到着前にセキさんに聞いたのは、

「あれ?アツロウさんが見えませんね。」

「先に降りましたよ?」

「えっ?まだ到着してないですよね?」

「ええ。でも降りました。」

「えっと。」

「何か問題でも?」

セキちゃんの怒りが、沸点を超えない様に話を終わらす。文雄は君子なのだろう。危ないだけで、簡単に近づくのは死に行くだけなのだから。返答もせずに前を向いていた。

駅に到着すると、扉が開き外に出た。一週間振りの揺れない大地に感動さえも覚えるが、それどころでも無いのだ。

「取り敢えず、魔王様の処に向かいます。」

「「「「えっ?」」」」

「何を驚かれているのですか?」

「いや、セキさんが魔王様って言うから・・・・」

「何か変でした?」

「私達は勇者で、これでも魔王を退治するのが使命ですよ?」

「んー、何か問題でも?」

「いや、魔王の処に案内してくれるのでしょ?」

「ええ、お待ちですから。」

四人の勇者は頭を抱えている。そして、

「あ、武具の装着が先でしたね。着替える間に行きますね。」

セキちゃんは、踞った四人の勇者を置いて先に進んでいた。

「早くしなさい!」

「「「「はい!」」」」

慌てて、荷物を持ち急いでセキちゃんの後を着いていった。どうこうではない。魔王討伐に関して思い出していた。

魔王討伐を言われた日の事。魔王領に入って驚いた事。警備隊に捕まり怒られた事。土建会社でバイトした3ヶ月の事を。

「着替える間です。」

「えっ、あっ、はい!」

「き、着替えてきます!」

四人は部屋に入り着替えていた。

「あのさ、魔王を倒しに来たんだよね?」

「ああ、これが終われば帰れるぞ!」

「そうよ!その為に努力したもの!」

「倒して終わり!」

異常に気合いが入っている三人に対して、文雄は不安しかなかった。魔王の土地に入ってしてきた事は、バイトと列車の旅とセキちゃんにシゴかれただけだ。それ以外にもあったような・・・・

「着替え終わりましたね。それでは、行きますよ。」

「「「はい!」」」

気合いを入れている三人とは別に、文雄の不安は大きくなっていた。忘れてはいけない事を・・・・

大きな扉の前に来て、

「準備は良いですか?」

勇者達は武器を抜いて構えた。

「「「はい!」」」

「はい。」

そして、扉が開いた。セキちゃんと勇者達が入ると、セキちゃんが扉を閉めて歩きだした。
魔王の側に来ると、セキちゃんは足を着いて臣下の礼を取った。

「遅くなりました、魔王様。勇者、厚木真由子、竹下雪絵、荒木信也、田渕文雄を連れて参りました。」

「あ・・」

「ご苦労様です、赤龍。」

魔王の言葉を遮って、魔王の右横から現れたルナが話した。

「魔王様に挑む勇者達よ、ご苦労!」

左からはレディが現れた。

「「「えっ?」」」

「セキさん、魔王様って?」

驚いているが、不安が現実としてのし掛かる。

「なー、ルナ。こんなダサい服を着ないといけないのか?」

「マスター、魔王と勇者の服装なのでコスプレしてみましたが、不満なのですか?」

「んー、ブカブカなのがな。」

「マスターの姿を隠す為でしたが?」

「何か面倒なんだよね。」

ざっくばらんと話す魔王とルナとレディ。三人の姿に、気が逸れてしまった勇者達。

「なあ、セキ。」

「はっ!」

「強くなったのか?」

「全くもって無理でした。」

「ま、良いか。なら、戦うか。」

その会話から、文雄は怖かった。戦ってはいけない人が浮かんでいるからだ。

「ね!魔王って、セキさんの主人だよね!」

「「「えっ!?」」」

「気付いて無いの?」

居たら嫌な人、ヤバい人間、居て欲しく無い人物・・・
魔王は服を脱ぎ捨てると、姿を現した。

「Are you ready?」

そして、篤郎がネタをぶちこんだ。

「「あ、アツロウさん!」」

「バ○ラネタ!」

「政宗だね。」

締まりが無い登場であった。
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