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第8章 魔王討伐

魔国に侵入?

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「母さん、お肩を叩きましょう。たんとんたんとんたんとんとん。」

馬車を走らせ、虚ろな目をしながらも、歌っているのだ。文雄の現状は悪い。

「何度目の童唄だよ。」

「『肩たたき』よ。次は『ことりのうた』で、その次は『あめふり』。」

「ごめんね、真由子。」

馬車の中は、お通夜の状況なのは、職業のせいだ。

お母さん勇者は、とても笑いのツボに入ったのか、知った者は笑った。そう、笑い過ぎた。

文雄も笑顔であったが、心が折れた。

折れたモノが直るまで、旅に出れなくなった。各国の王も新しい従者を押し付けられないぐらいに落ち込んだのだ。

時間が掛かったが、文雄は立ち上がった。心が折れたままで。

「どなどなどーなー。」

「キツイなー。」

「そうよね。」

「これは、私でも謝れないわ。」

慌てて耳を塞ぐ。文雄の歌は、それほどに突き刺さるのだ。何故なら、暗い闇の様で重低音の声質からの歌にやられた。

「早く敵が出ないかなー。」

「本当だよね。」

「出ないね。」

実は、勇者の裏スキルに光の加護が付いている。スキル内容は闇スキルの低減。それにより、三人の精神に影響は無い。

そして、文雄の歌は『子守唄の歌声』の特殊スキルとなり、周囲に影響していた。闇系のスキルだが、全ての生き物と知性有る物に親が亡くなる程の落ち込む状態を与える。(※回避不能)となる。

おかげで、モンスターが襲う事が無くなったのだ。

文雄が歌っている最中も、歌わない眠った時も襲われないから、安心して魔国の国境を簡単に越える事が出来た。
数時間過ぎた頃に、事態が動いた。

「母さんが・・・・・」

まず、文雄の歌声が止まった。

「『かあさんの歌』が止まったね。」

「どうしたのかな?」

「馬車は動いて、えっ?なに?滑らか?」

竹下は厚い布を開けた。

「なっ!」

竹下の固まり方が異常なので、厚木と荒木は外を見た。

「「はっあ!」」

別角度で四人は、別世界を見ていた。

「綺麗な道路?」

「街路樹?」

「道路標示がある・・・」

「ねえ、ねぇ!街灯がある!街灯が!」

文雄が急にハシャギだしている。三人は口を開けたままで、ただみてるだけである。
そして、風景が変わるのに時間がかからなかった。

「みんな!前に来てくれ!」

文雄は、更に信じれ無い物が目に入ったからだ。

「なんだ、たぶちー、!」

荒木も固まった。

「どうしたの?信也。もう、たぶ・・・」

厚木も固まった。

「どうしたの!固まった・・・・」

竹下も固まった。

「映画のセット?」

文雄から自然と出た言葉に、

「「「そうだ(ね)。」」」

と、赤信号で停止しているのだ。
四人の心臓は早くなっていた。







ーーーーーーーーーーーーーー







「アツロウ!」

「何ですか、親方!」

「そこの基礎が終わったら、地固めを頼む。」

「理解!」

篤郎はヘルメットから出る汗を拭うと、穴から地上に出てきた。

現在の篤郎は、リッヒットシティの学校工事のバイトをしていた。

理由は、レルビッチ親方のラインとヒーデルの事故が原因で、工期が伸びたのだ。原因とは、篤郎がたまたま蹴った小石が漫画の様な状態で、偶然を引き起こし、あれよあれよと雪だるまの様に物を倒して現場を無茶苦茶にしたのだ。

もちろん、篤郎は魔法を使おうとしたが、レルビッチ親方はそれを許さなかった。弁済は肉体労働になったのだ。
肉体労働だけなら直ぐに取り掛かれるのだが、それも許さずに言ったこと意外はさせてくれない。

「土嚢を一輪で持ってこい、アツロウ!」

「はい!」

一生懸命に頑張っているし、篤郎は笑顔でいる。何よりも土方のアルバイトを異世界でするとは、思いもよらない。
しかも、自分の国でだ。

「お、昼だ!」

親方の号令で、休憩となる。

「ふー、一息つかないと。今日も暑いよな。」

篤郎は久しぶりに人と仕事が出来ている。だから、嬉しいのだ。
長い間、ダンジョンの中でゴーレムと過ごすよりも良い。ただ、

「ご飯ですよー!」

「あ、アツロウさーん!」

セキちゃんは食堂の人気者で、リザイアも料理を作らないなら人気者らしい。蜘蛛は洗濯仕事をしている。

「アツロウ!」

一番の人気者は篤郎だ。
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