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第8章 魔王討伐

魔国の内政

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各国の状況が激烈に変化していた。

魔国に統合された国々は、文明が大きく飛躍していた。王公貴族は無くなり、各自治が管理している。各自治に関しては、役所なる機関が指導していた。その機関とは魔国の頭脳ルナによるゴーレムが行っているのだ。

ゴーレムだが、村なら3体で町なら10体~に置いている。人口百人以下は3体、百人以上で10体、+百人で1体追加している。

文化レベルが上がったのは、上下水道による清潔面を改善し、魔法供給による特殊な魔道具を使用可能になっていた。要は、コンロや冷蔵庫やレンジ、掃除機、洗濯機、クーラー等が使えるようになったのだ。洗濯、掃除、料理の時間短縮が凄まじく、子育て家族はもちろん、いろんな世帯の状況が変わっている。

特に臭気が無くなり、人々は喜んだ。

お金も統一したものがあり、換金された。国庫に金があり、色んな商品が販売されていた。

国の儲けも無いが、人々には循環されていた。いずれ大金持ちが出来たりするのだろうが、今は心配無い。共産主義的だが、緩やかに元に戻す予定だ。

生活の向上があるから、次の産業を考える人がその内に出てくるだろう。いずれ帰ってしまった時の為に、人々の考える力が必要なのだから。

その為に、無償の学校もある。

働きながら、必要な学問を学ぶのだ。実践の中にこそ、実のある学問を覚えるからだと、篤郎は思っている。

仕事は作物を作る事と工業の充実を行っている。冒険業も残っている。

仕事のほとんどが、国からの依頼となり、街道や道の整備から森の管理など色々と出されている。

一国なのにここまで平和に行っているのは、税金を徴収しないだけではなく、変わった国となっていた。

そして、魔国いや、魔王の事を諸国に報告されたきっかけは、バシリック大陸の半分を支配した時に数人の貴族だけが帰還して分かったのだ。

報告した内の貴族は、砂漠が多いバイレット王国のユテイレブ子爵で、連絡が途絶えたラクミック国に援軍として行った軍からの生き残りとしての報告になる。

五千の軍に対して、万を超えるモンスターと悪魔がいて、軍は全滅して命からがら逃げ帰ったのだと。悪魔が言うには魔王が復活したと言っていたとあった。

此処までで聞けば、魔王の報告の為に帰って来たになるが、何故ユテイレブ子爵が報告に出たのか?が、問題であった。ユテイレブ子爵は貴族に成り立ての元冒険者である。指揮官として、バレイユ伯爵がおり、歴戦の勇者たるエステランド子爵や参謀にダイニッツ男爵が居た。最年少にラコビッツ侯爵の三男バクスが従者として参加している。

本来なら、バレイユ伯爵が報告に建てる使者は、バクスと護衛の兵にするはずである。不慮の事故が逢ったにせよ、その報告は無かったのだ。それにユテイレブ子爵は割り込み参加していて、軍の最前列に居たはずなのだ。

逃げ帰った謎が深まったのは、バイレット王国だけでは無い。北のダンベルト帝国、南部三国連合、ボウショ聖国からも、同じ役に立たない貴族だけが帰還したとなっていた。
でも、魔王の一言で、世間は大きく揺れる事になる。

勇者達が帰属する、アルテウル神国の発言力が強まるのだった。

が、帰還した四人とは逃げ出した貴族である。
真実は、援軍ではなく侵略を旨とする遠征軍で、ゴーレム部隊に捕縛されている。質が悪い四人の貴族を返したのは、ルナの考えでもある。要は、大体の目星が着いたので、魔王を宣伝したのだ。とにかく、悪く言われる様にまた、言ってくれる上に色んな事柄を足してくれる屑の貴族を選んだのだ。

魔国では、建国以来の自然死以外の死者は0なのである。敵国であれ、死者を出さないのが、魔国なのだから、戦死者も0なのである。捕まった捕虜達は魔国の首都である『月影の城』に送られる。それまでの事を捕虜達に分からせる為なのだ。

最初の洗礼は、魔道列車である。大陸の半分から首都までは約3万8千キロ。列車でも約10日掛かるのだ。その間、映像での再教育が行われ、首都に着くまでには住民としての気構えが出来ているのだ。

何を行われているかは不明だが、ルナのプログラムは完璧らしい。問題はプログラム後の陳情で、国の親や妻子と会いたいか、連れてきたいが多く、そのまま飲み込む形で国を取る結果となっていた。

変わった国の魔国。

但し、魔王に逢った人は居ない。
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