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第6章 魔王誕生

魔王誕生

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篤郎が目を覚ました。

「次のダンジョンか!?」

布団にベッドに薄暗い部屋。カーテンから暖かい木漏れ日が射し込んでいる。

「部屋?明るい?ベッド?」

混乱する中で、扉が開いてメイドが入って来た。

「お目覚めですね、マスター。」

そのままメイドは、カーテンを開けた。

目を見張るような絶世の美女。日本でも、良いな程度の女性は見てきたし、この世界も良いなの女性は居た。だが、完璧な好みの女性を凌駕する女性には合った事が無かった。今の今までは。

「う、あ。」

女性の仕草や直感で、敵や媚びてるのは直ぐに分かる。だが、メイドからは味方以外に無かった。むしろ、好意を寄せている雰囲気もある。

「おはようございます。」

背は高くて175センチメートル位、胸は大きくてDかE。腰の括れは細くヒップも細い。目鼻立ちはしっかりしてて、元女性としても羨むばかりだ。黒髪にポニーテールと、憧れの髪型。非難しようにも、欠点が見つからないのだ。

「マスター?」

「はうっ。」

小悪魔かっ!なんとも、首を傾げるポーズをしてくるぞ!女に落とされる事が無かったのに、落とされるかもしれない!!

「どこか具合でも?」

「ひっ!」

彼女のおでことおでこがくっつく。篤郎の顔が赤く熱くなる。

「熱が出てますね。もう少し横になりましょうか?」

「だ、大丈夫です!」

『美形に弱い』は男も女も関係が無い。同性であれ、惚れる者は惚れてしまう。それは女も経験した、篤郎も同じ事だ。

人生初の一目惚れである。

中略しなくても、当たり前の行動をしているのだ。

慌てておでこを離したのだ。

「あっ、ダメですよマスター。」

「熱じゃ無いから!少し熱いだけだから!構わないで!」

必死に言い訳をして、薄目を開けた。美女が目を潤ませて、此方を見ていた。

「嫌いでしたか?」

「き、嫌いじゃない!嫌いじゃないけどね!あれ、ほら、俺に触れるのは、あれかなーと、ね。」

「触れたらダメ?」

普通の美人に言われたら、『あざとい』と感じるのだが、理想の美女に言われては篤郎とて、普通の男の子になって更に熱を上げる。因みに、訳が分からない汗が一杯流れている。

「駄目と言うか、嬉しい、はっ!違う!いや、そちらが嫌かなーと思いましてですね、触れる様な顔や体ではですね!」

「私はマスターのお体に触れるのは好きですよ!」

ドッカーン。

惚れるなと言われても、無理な話だ。惚れるやろが!な感じだ。

「そ、そ、そ、そ、そ、そんな、うううううううう、嬉しいです!」

「はい。あっ、汗が出てますね。お風呂をご用意します。」

「えっ、はっ!はい。」

篤郎は、自分の汗の量に驚いた。どしゃ降りの雨に打たれたのか?のレベルの濡れ方なのである。お風呂の意味を、やっと理解したのだ。

美女が部屋から出ると、篤郎は一息をつけた。

「風呂かー。いかんいかん!わぁー、汗が凄いな、ベッドから降りなくては。」

と、上着を脱ぎながらベッドから出た所で、ガチャ、

「お待たせしましたマスター。」

美女が入って来た。

「うあああああっ!」

脱ぎ出した服を、慌てて着る。

「気持ち悪いと思いますが、マスター。服をお脱ぎ下さい。」

と、美女が手伝おうと篤郎の側に来ていた。

「だ、大丈夫です!ち、近寄らないでー!」

悲しげな表情になりながら、

「私の事、嫌いですか?」

「いや、違う、違うんだって!あっ、風呂、風呂には、入らないと!」

慌てる様に風呂場に急いだ。分からないはずだが、何となく位置は有ってたようだ。と、言うより湯の暖簾と男湯の青い看板が目に入ったのだ。

男湯に入って服を脱ぎ、風呂場に行くと、健康センターの様な姿に安堵していた。

「あー、駄目だ。」

洗い場の一ヶ所に座り、シャワーを出しながら、

「なによ、美人だし、何とも出来なく緊張するなんて。はー、少し落ち着いたかな。良し洗うか。」

首から手腕体と洗い、背中にタオルを回すと、

「マスター、お背中を洗わせていただきます。」

ドッキーと心臓が大きく跳ねたが、固まって動けない。その後の心臓はバクバクだ。

「初めて、お風呂を一緒に入りましたね。」
「本当に、ご無事で安心致しました。」
「マスターの背中は広くて好きです。」

の声など入ってこない。何がどうなった?が篤郎の頭を駆け巡った。ただ、メイドさんは服を着てるのか?が疑問であった。

たった、40秒の出来事なのに何時間と間違えてしまう。

「ひっ!」

背中から腰、お尻とタオルがきたのだ。

「い、いいです、大丈夫です!此処から洗えます!」

タオルを取る時に見てしまった。

「すすすすいませんが!」

「何でしょう?」

「ふふふふふ服を着てませんが?!」

「お風呂ですから。」

「おかしいですよね?!」

「お腹に脂肪は有りませんが、有った方が好みでしたか?」

「そうじゃ無くて、此処は男湯ですよね!?」

「そうですよ?」

「何で貴女が入って来るの!?」

「マスターの執事ですから。」

「おおおお、おかしいよね!!」

「可笑しいですか?解りませんが、笑いましょうか?」

「おおぉーい!笑う方の可笑しいじゃなくて、男湯に女が入るもんじゃありません!」

「お嫌い・・ですか?」

「嫌いよりは、寧ろ好きって、じゃなくて、TPPを弁えて頂けませんかね!」

「マスター。」

「なんですか!」

「マスターは、この身体はお気に召さないのでしたか?」

「召すも召さないも、貴女は!えっ?」

ゆっくりと顔の方を見ようとしたのだが、目に佗豊かな胸が入った。

「ひよっ!あ。」

鼻から血をドボドボと流しながら、気を失ってしまった。

「マスター!」

メイドは裸のままに、篤郎を介抱していた。篤郎の顔は笑顔であったが。

そこから、血を止めてから、メイドは篤郎を洗い直し、身体を拭いて新たな寝室に寝かした。

篤郎が、目を覚ましたのは3時間後であった。

「あ、あれ?何でベッドに寝てるの。」

ぼーとするなか、廊下側は何やら騒がしいと思った。

「何かあったのか?」

と身体に掛かっていたシーツが取れた。

「う、えっ、はっ?」

篤郎は自分の服装を見た。仕立ての良い黒の服装である。

「黒は好きだけど、何でカッターやネクタイも黒って無いよねー。てか、手袋までしてるし。」

悪い趣味とも感じた。篤郎の趣味では、絶対に無いからだ。

「えーと、服を着替えるか。」

ベッドから出ると靴を履いているのだ。黒い革らしき靴だろうか。

「ベッドに靴のまま寝かせるって。」

と、文句を言っている最中に扉が勢いよく開いて、メイドが入って来た。

「あー、良かった!起きたのですね、準備をしましょう、マスター。」

「あー、君は!」

「早くして下さいマスター。」

篤郎の手を取り、引っ張る。

「いや、待ってよ!」

「待てません、国民が待って要るのですから!」

「はっ?国民がって何を言われてるのですか?」

「マスターの国民ですよ!」

「へっ?」

「新国、旧魔族領を支配した、新魔国ですよ。」

「新魔国!?」

「マスターは新魔国の王、魔王陛下になられました。」





「へっ?」

篤郎は鼻水を垂らした。
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