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第6章 魔王誕生

新たな門出

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食堂で旨くも無い食事を終わらせた。調味料は格段に上がっても、調理師の技術がマダマダなので美味しくなるまでは辛抱しなくてはならない。今の段階で旨い物は自分で作るしかない。
執務室の扉を開けてビックリしてしまう。

「ゴーレムが何で?」

「お疲れ様です、マスター。」

「ルナ?」

「はい。返信の仕方はこれでよかったですか?」

「ああ。」

顔もないゴーレムだが、動きは人間らしさがある。それと、言語能力も期待以上になっている。稼働して一時間も経って無いはずだが?

「マスター、紅茶を入れますので、お掛け下さい。」

「あ、ありがとう。」

好みを知っている?個人の情報は、まだ未入力のはずだ。何があった?
紅茶をゴーレムが運んできた。

「どうぞ、マスター。」

良い香りがする。一口、紅茶を含んだ。

「旨い。」

「ありがとうございます。」

先程の料理が酷かったと言う理由を差し引いて、この紅茶は最高に旨かったのだ。まるで、私が特別な人に入れた物のように。

「申告します。」

「何を?」

「レディより、自衛団第4がモンスターと交戦、防衛ゴーレムを護衛に出したいのですが。」

「負けるのか?」

「互角かと。」

「分かった。」

「ありがとうございます。正面の門に近付いでいる、登録されていない集団を確認。武器を保持している者が6名、非保持者が三名。荷物に人が居ます。」

「奴隷か?」

「映像を出します。」

「映像!?」

篤郎の驚きよりも、テーブルに立体スクリーンが現れる。元の世界でも普通では無い技術で対応される。
画面には、薄汚い男達が映し出された。篤郎は知らない者のようだ。

「対応しないとならないか。」

篤郎が紅茶を飲み干すと、扉から出た。急ぎ門へと向かったのだが、ルナのゴーレムがいた。

「何で居る?ワープしたのか?」

「いえ、同じ機体を6体外に配置していました。」

「短時間で作ったのか?」

「可能です。」

「作る事が出来たの?!」

「マスターから、魔法の使用の仕方は入力済みでした。現段階では試作機です。」

「試作機って。」

試作機に旨い紅茶が入れる事が可能なのだろうか?日本でも本格的に近い物はあったが、本物と機械では、味も風味も好みも個人レベルには合わせる事が可能か不可能かになる。機械では不可能のはずだ。

「魔法の使用が可能なのか?」

「はい。マスター、訪問者が来ました。」

「えっ?」

門が開いて行く。
開く過程を見ながら、篤郎は思った。期待以上の物が出来たのでは無いかと。

門が開いて、馬車を見ると弓矢を構えていた者が矢を放ったのだ。その程度なら、篤郎にしたら簡単に払い退けれる。反撃もどうするかと考えもしていたが、

「攻撃確認、反撃を開始します。」

ルナの言葉に篤郎はハテナになったが、放たれた矢を銃弾が壊していた。それどころか、馬車も門の上からの砲撃で粉々になったのだ。

「ルナ?」

「敵を完全排除しました。」

「おおおお?」

「修復部隊を要請します。また、防衛ラインの見直しも進言します。」

目の前で起きた事を考えても、成功とは言えない事を知ったが、優秀なのは理解した。

「了解。」

補佐を期待していたが、人を殺すのに躊躇もしないのは、改善だな。
篤郎は思いは、新たな旅を見つめていた。
が、篤郎が思っているよりも、事態は動く事になる。
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