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第4章 冒険の始まり
既得権益
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受付は丁寧に頭を下げてから、上げると、
「ありがとうございます。私は受付のラルクと言います。お尋ねのブリンク商会の方ですが、リディシ支店長のハイザック氏が商談にお見栄になられてます。急用でしょうか?」
「いえ。私はハイザック氏と面識はありませんから、商談が終わりましたら[篤郎が来ている]とお伝え下さい。」
受付のラルクの丁寧な言い方に共感を覚えて頼んでしまったが、ラルクは篤郎と聞いて、
「アツロウ様ですね。お聞きしております。暫くお待ち下さい。」
「へっ?」
ラルクは頭を下げて持ち場を離れた。
ここは商会ギルドである。商人ギルドと違い、大きな商いをする商人いや、商会同士が作ったギルドである。大小あっても金貨百枚を超える商いはギルドを通すのが常識になっていた。商売の十割を支払いギルドを支えている理由がある。それは発明品を守る事を第一にしている。利益を守るのに百年だけになるが、その人の利益を守り以下に続く発明を広げる様にしている。要は期限付きのねずみ講になる。一つの発明は次の発明の足掛かりになる。登録に金貨5枚で、使用には1割の加算が義務付けされる。その発明から分岐、発展、改良は元の使用料の1割に次の1割を足して商品に継ぎ足していく。ただし百年で使用料は終わりとなる。ただし、商会ギルド以前に在るものは感知しない。発明を買うのは商会だが、利益を発明家に渡さないと民衆に見捨てられるのだ。悪い商会だと潰れるのも早いのだ。
ラルクと女が近付いてきた。
「アツロウ様、お待たせ致しました。こちらはヨルデ商会の会頭付き秘書のカレーラさんです。」
「カレーラです。ハイザック支店長からお聞きしました。私が会談中の部屋に連れて行きますので、迷わずにお願い致します。」
カレーラは軽く会釈をして歩きだした。篤郎も遅れる事なく着いて行った。二階に上がり、豪華な扉をノックして、
「カレーラです。アツロウ様をお連れ致しました。」
扉は開いて、
「アツロウ様ですね、会頭からは手紙で知っております。どうぞお入り下さい。」
篤郎を招いたのだ。
「私はリディシ支店長のハイザックです。以後お見知り置き下さい。こちらはヨルデ商会の会頭でヨルデ殿、副会頭のタタンテ殿です。」
「初めまして、ヨルデです。」
「初めまして、副会頭のタタンテです。」
と二人は深く頭を下げた。篤郎は慌てた。
「いや、そんな頭を下げなくても、あぁ、頭を上げて下さい。」
「「ありがとうございます。」」
挨拶が済んだとハイザックは思い、篤郎に椅子を進めた。篤郎が椅子に座ると、ハイザックとヨルデ、タタンテが座った。
「アツロウ様、この度はどの様なお話でしょうか?」
「うん、先ずはこの製造方法と薬剤ギルドの書類を見て貰いたい。」
皮紙をラルクに渡した。そして懐から瓶を2本取り出して置いた。ラルクは皮紙を読んで、
「瓶をお借り致します。」
と、2本の瓶を鑑定してから、味を確かめた。
「アツロウ様、こちらは薬剤ギルドで確認されていますが?」
「ふふ。」
瓶を2本取り出してから、新たな皮紙を出してラルクに渡した。読み出したラルクの顔は驚きに包まれていた。
「まさか!」
瓶を鑑定しだして、味も確認した。
「アツロウ様、これらの権利を直ぐに商会に登録致しましょう。薬剤ギルドの方は此方で対処致します。少しお待ち下さい。」
ハイザックは部屋を出ていった。ヨルデは待ってましたとばかりに篤郎に話し掛けた。
「アツロウ様、この瓶は何でしょうか?」
「『鑑定』スキルがあるなら鑑定したら良いぞ。」
「本当ですか?!」
ヨルデは最後に渡した2本を鑑定しだした。直ぐに確認して、味を確かめた。
「な、こんな事はないと思ったが、あるのか。これらの品をアツロウ様が作られたのですね。」
ヨルデは感動しながら言っている。
「新しい食材だけだは無くて、新しい製造方法も書かれているんでしょう。いや、これは凄いですね!」
「これらは一応、ブリンク商会に売ったんだがな。」
「はい。此方も我々も一枚噛みたいですが?」
ヨルデはにこやかに聞いたが、篤郎も笑っていた。
やがてハイザックが戻って来た。
「アツロウ様、後は此方で行います。会頭にはどの様に報告を致しますか?」
篤郎は別の皮紙を取り出すと、ハイザックに渡した。ハイザックは中身を見ようとしたが、蝋と押し印がしていた。
「分かりました。このまま送りましょう。連絡は何処に?」
「ホルラと言う店に居る。」
「分かりました、アツロウ様。」
ハイザックは頭を深く下げていた。ヨルデも同じ様に下げ、タタンテとカレーラも続いた。
篤郎は部屋を、ギルドを去っていった。
「ハイザック殿、こちらの商品はどうなさいますか?」
ヨルデが聞くと、ハイザックは、
「前の瓶は製造方法も薬剤ギルドも知っているので、今の所は扱えます。後は会頭次第ですね。」
「それは残念です。」
「もし、引き続き取引されるのでしたら、アツロウ様に嫌われる事をしないで下さい。敵に回られたら、私どもの商会も全力で潰しますので。特にカレーラさん、闇討ちとか止めて下さいよ。」
びっくりしていたカレーラは、汗をかきながら、
「そ、そんな気はありません。」
「ヨルデ会頭も、頼みましたよ。」
「分かっております。後であの事を教えておきますので。」
「広めないで下さいよ。」
「はい。私も妻になら良かれと思いますので。」
二人は視線だけを合わせてから、
「ふふふふふふっ。」
「「あはははははははははははっ。」」
と笑い合い、商談は終わった。
「ありがとうございます。私は受付のラルクと言います。お尋ねのブリンク商会の方ですが、リディシ支店長のハイザック氏が商談にお見栄になられてます。急用でしょうか?」
「いえ。私はハイザック氏と面識はありませんから、商談が終わりましたら[篤郎が来ている]とお伝え下さい。」
受付のラルクの丁寧な言い方に共感を覚えて頼んでしまったが、ラルクは篤郎と聞いて、
「アツロウ様ですね。お聞きしております。暫くお待ち下さい。」
「へっ?」
ラルクは頭を下げて持ち場を離れた。
ここは商会ギルドである。商人ギルドと違い、大きな商いをする商人いや、商会同士が作ったギルドである。大小あっても金貨百枚を超える商いはギルドを通すのが常識になっていた。商売の十割を支払いギルドを支えている理由がある。それは発明品を守る事を第一にしている。利益を守るのに百年だけになるが、その人の利益を守り以下に続く発明を広げる様にしている。要は期限付きのねずみ講になる。一つの発明は次の発明の足掛かりになる。登録に金貨5枚で、使用には1割の加算が義務付けされる。その発明から分岐、発展、改良は元の使用料の1割に次の1割を足して商品に継ぎ足していく。ただし百年で使用料は終わりとなる。ただし、商会ギルド以前に在るものは感知しない。発明を買うのは商会だが、利益を発明家に渡さないと民衆に見捨てられるのだ。悪い商会だと潰れるのも早いのだ。
ラルクと女が近付いてきた。
「アツロウ様、お待たせ致しました。こちらはヨルデ商会の会頭付き秘書のカレーラさんです。」
「カレーラです。ハイザック支店長からお聞きしました。私が会談中の部屋に連れて行きますので、迷わずにお願い致します。」
カレーラは軽く会釈をして歩きだした。篤郎も遅れる事なく着いて行った。二階に上がり、豪華な扉をノックして、
「カレーラです。アツロウ様をお連れ致しました。」
扉は開いて、
「アツロウ様ですね、会頭からは手紙で知っております。どうぞお入り下さい。」
篤郎を招いたのだ。
「私はリディシ支店長のハイザックです。以後お見知り置き下さい。こちらはヨルデ商会の会頭でヨルデ殿、副会頭のタタンテ殿です。」
「初めまして、ヨルデです。」
「初めまして、副会頭のタタンテです。」
と二人は深く頭を下げた。篤郎は慌てた。
「いや、そんな頭を下げなくても、あぁ、頭を上げて下さい。」
「「ありがとうございます。」」
挨拶が済んだとハイザックは思い、篤郎に椅子を進めた。篤郎が椅子に座ると、ハイザックとヨルデ、タタンテが座った。
「アツロウ様、この度はどの様なお話でしょうか?」
「うん、先ずはこの製造方法と薬剤ギルドの書類を見て貰いたい。」
皮紙をラルクに渡した。そして懐から瓶を2本取り出して置いた。ラルクは皮紙を読んで、
「瓶をお借り致します。」
と、2本の瓶を鑑定してから、味を確かめた。
「アツロウ様、こちらは薬剤ギルドで確認されていますが?」
「ふふ。」
瓶を2本取り出してから、新たな皮紙を出してラルクに渡した。読み出したラルクの顔は驚きに包まれていた。
「まさか!」
瓶を鑑定しだして、味も確認した。
「アツロウ様、これらの権利を直ぐに商会に登録致しましょう。薬剤ギルドの方は此方で対処致します。少しお待ち下さい。」
ハイザックは部屋を出ていった。ヨルデは待ってましたとばかりに篤郎に話し掛けた。
「アツロウ様、この瓶は何でしょうか?」
「『鑑定』スキルがあるなら鑑定したら良いぞ。」
「本当ですか?!」
ヨルデは最後に渡した2本を鑑定しだした。直ぐに確認して、味を確かめた。
「な、こんな事はないと思ったが、あるのか。これらの品をアツロウ様が作られたのですね。」
ヨルデは感動しながら言っている。
「新しい食材だけだは無くて、新しい製造方法も書かれているんでしょう。いや、これは凄いですね!」
「これらは一応、ブリンク商会に売ったんだがな。」
「はい。此方も我々も一枚噛みたいですが?」
ヨルデはにこやかに聞いたが、篤郎も笑っていた。
やがてハイザックが戻って来た。
「アツロウ様、後は此方で行います。会頭にはどの様に報告を致しますか?」
篤郎は別の皮紙を取り出すと、ハイザックに渡した。ハイザックは中身を見ようとしたが、蝋と押し印がしていた。
「分かりました。このまま送りましょう。連絡は何処に?」
「ホルラと言う店に居る。」
「分かりました、アツロウ様。」
ハイザックは頭を深く下げていた。ヨルデも同じ様に下げ、タタンテとカレーラも続いた。
篤郎は部屋を、ギルドを去っていった。
「ハイザック殿、こちらの商品はどうなさいますか?」
ヨルデが聞くと、ハイザックは、
「前の瓶は製造方法も薬剤ギルドも知っているので、今の所は扱えます。後は会頭次第ですね。」
「それは残念です。」
「もし、引き続き取引されるのでしたら、アツロウ様に嫌われる事をしないで下さい。敵に回られたら、私どもの商会も全力で潰しますので。特にカレーラさん、闇討ちとか止めて下さいよ。」
びっくりしていたカレーラは、汗をかきながら、
「そ、そんな気はありません。」
「ヨルデ会頭も、頼みましたよ。」
「分かっております。後であの事を教えておきますので。」
「広めないで下さいよ。」
「はい。私も妻になら良かれと思いますので。」
二人は視線だけを合わせてから、
「ふふふふふふっ。」
「「あはははははははははははっ。」」
と笑い合い、商談は終わった。
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