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第4章 冒険の始まり

採取します

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不思議であった。
分からなくなった篤郎を、自然に足が動いて行っているのだ。探す訳でもないのに、大体の方角は分かっていたので方角には歩いていた。それが突然に走り出して、気が付いたら篤郎が森の中に居たのだ。因みに、血が飛び散った場所なのに、者は居ない。

「アツロウさん?」

「お、来たよ!うん、使えるねー。迷わなかっただろ?」

「えぇ、何故か足が動いたわ。」

「よしよし。さぁ、採取を始めるか。」

「はぁ。」

篤郎はマトックを肩に担いだ。

「聞きたいんだけど、アツロウさん。」

「なに?」

「何の採取をするのか、分かりますよね?」

掘る動作をしながら、

「えっと、薬草かな。」

「・・・・動きと言葉があってないけど。」

エミーの的確な突っ込みが入る。

「で、薬草ってどれを集めるの?」

「はっ?」

「えっと、ファミー草だけど。」

「知らん。」

「へっ?」

「分からん。」

「えっ?」

「見たことがない。」

「はっーぁ!?馬鹿ですか、あんた馬鹿ですか!」

いつの間にか剣道の素振りの動作をしている篤郎は、

「そんな薬草を聞いた事ないからなー。」

「な、舐めてる?!冒険者を舐めてるよ?!」

「うるさいなー。」

「下見する前に、どんな物なのか調べるとかあるでしょ!」

動きを止めた篤郎は、

「いや、エミーが居るから大丈夫でしょ?」

その言葉にエミーはなんとも言えない顔をした。暫く篤郎の顔を見てから、静かに探し出した。そして、一輪の白い花を見つけて篤郎の前に出した。

「これ。」

篤郎はファミー草を受け取り、匂いを嗅いだりし、花を触ったりしていた。

「な、これでポーションとか作るの?」

疲れたエミーは放心状態で答えた。

「えっ、あぁ、作るよね。」

「ふーん。なっポーション頂戴。」

エミーはベルトから一本の筒を篤郎に渡した。篤郎も受け取ると、即座に蓋を開けて臭いと味を確かめていた。

「うげっ!不味!何を考えている?!」

悪態をつくと、篤郎は強く語り出した。

「ナイブー草を使うなんて、あり得ない!最低でも、ヘミニー草を混ぜろよ!罰ゲームなポーションやし、乾燥と蒸留と混成もしてないから草の臭さが残ってんのよ!えっ、この時代って遅れてるの?馬鹿な世界なの!」

びっくりしたエミーに詰め寄る篤郎。

「えっ。」

「何だよー、製造とかやらなあかんの?作るの?えー、臭いのにー。」

ぶつぶつと言う篤郎にエミーは、

「どうしたの?大丈夫?」

と、声をかけたが、

「そうだ、エミー!」

「ひゃい!?」

「薬屋を紹介して。」

「へっ?」

「知り合いぐらい、居るでしょ?」

「えぇ、居るけど。」

「よし、OK!集めるぞー!」

そこから篤郎は薬草を集め出した。というか何かしら草を取っていた。それは毒草も混じっており、茸も取っていた。
エミーは見ていた。少し離れた所で。
良く見ていると、篤郎はマトックを中心に採取している。採取も根から綺麗に取って消していた。
唖然となりながら、見ているしか無かった。
篤郎の力は知っていたが、良く良く思い返しても荷物を手にしてなかった。

「あっ。」

特異な篤郎を再確認していた。
エミーは剣士である。戦士と違い目が良いのだ。よって見抜く事には抜群である。そして、目が良いから色々な事にも目利きが利くのだ。
サーベルタイガーが二匹が、木々の間から篤郎に飛び掛かった。
武器のマトックは後方にあるので、手は届かない。絶体絶命な、その場面をエミーはゆっくり見ていた。
殺られた。
と、思っていた。
サーベルタイガーの鼻の頭から水で覆われた。放物線を描きながら水に覆われて空中に浮いていたのだ。二匹のもがく姿を、声を出せない状態で見ていた。やがて息絶えた様に動きを止めると消えてしまったのである。

篤郎は、サーベルタイガー等を気にせずに薬草を取っていたのだ。敵を見ないで魔法を展開させる事は出来るのだろう?その前に詠唱を唱えていないのは?

エミーは篤郎への疑問が増えてしまった。
だが、疑問を聞く為にはデュースが居なければならない。
魔法を使えるデュースによる意見がなければ、目の前で起こっている出来事を説明出来ないのだ。
この日、篤郎は冒険者ギルドに戻ることはなかったが、モンスターを狩った数は異常だ。薬草の採取も異常であった。エミーの疲れは異常であった。
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