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第3章 バイシュ国の内乱

迫り来る脅威。

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リヒッテット侯爵は高揚した朝を迎えた。
久方ぶりに妻を抱き、二十歳頃の感覚の様に感じれた。裸で窓を開け、此れからの時代を考えれたからだ。
昨日の夜に親派の貴族達、国の半分の貴族が此方に着いたのだ。こんな嬉しい事はなかったと言えば嘘になる。新しい国、自分の国の初めての討伐が起きるからだ。47年も生きての初の高揚とも云えた。
朝の息吹を感じながらの深呼吸をして、服を着だした。陣地を確保する為の行軍を始める為に。

リヒッテットは軽い朝食を食べて、直ぐに出陣の為の衣装に着替え出していた。部下にも命令している。屋敷を出て、牢馬車が止まっていた。
リヒッテットは近付くと、

「おはよう、リザリアくん。新しい国の最初の仕事だ。」

「な、なにを、するの。」

水も最低限しか与えてなかったリザリアは弱っていた。リザリアの声を聞いたリヒッテットは、

「元国王に反逆の鉄槌を落とすのだ。」

「はっ。むり・・・よ。はは。」

「無理か。そうだ、知って要るか、バイゼル・クラッチと言う男を?」

「ば、い、ぜ、る?ま。まさか。」

「はははは。知っているか、冒険者のSを!あれが我が手駒に入ったのだ!暴虐のバイゼルが、はははははは!」

「ま、まっ・・て。」

「その目で逆賊達が死ぬ所を見るんだな!行くぞ!」

リヒッテットは、馬に跨がり走らせた。兵士達も遅れない様に走り出した。

「ゼウント・・・さま。」

リザリアは枯れ果てた体から涙を流していた。

リヒッテットが出陣して直ぐに屋敷に賊が入ったのだが、出た後を知り屋敷を後にした。高速に逃げた賊を捕らえる事は出来なかった。
賊のその速さはリヒッテット軍の後方を捉えて、一人づつマトックで殴られた。たちまち、後方が混乱して、リヒッテットには早馬が追い掛けていた。

リヒッテットは昼近くまで、馬を走らせていた。なにやら兵達が着いて来なくなったと知らせが来たからだ。

「なに、男が一人襲ってるだと?!」

リヒッテットの領地で反乱行為は考えれないし、軍に襲い掛かる賊とも考えられないからだ。しかも千の軍に一人で襲い掛かるなど狂気の沙汰でしかないのだから。

「少し、軍を止めよ。其奴を連れてこい!」

リヒッテットは馬から降りた。すぐさま簡易の天幕をはられ、リヒッテットは椅子に座った。

「バカな男だ。」

のんびりと昼をと考えてもいた。
その頃、後方では百の歩兵と50の騎士が倒れていた。倒れた者は死んだ訳でも無いが、武器で叩かれて倒れていた。
最初は馬鹿な盗賊程度に考えていたのに、そのマトックで叩かれた兵は倒れたままで、起き上がりもしなかったのだ。
鎧を着ているのに、叩かれてよりも殴られた様に倒れた。何にも出来ずに倒れたのだ。見ていた兵は訳が分からなかった。マトックの先でも後でも無く、横で殴られてるだけで人が倒れていくのだ。
言葉にしたら、

ガン、「うげっ!」ボコッ、「ぐえっ。」バシッ、「うえぇー!」ボコッ、「ぐっえぇ!」バシッ、「ぐぅ!」

の文字で埋め尽くされる。
例えるなら、もぐら叩きの様に叩かれている。165cmの篤郎が170cmオーバーの男達をマトックで叩いているのだ。抵抗もしないで一撃で倒れるのだ。
いつしか、兵が進み出した。逃げる様に進みだしたのだ。
青ざめた伝令がリヒッテットに報告に来たのは、お茶が入ってリヒッテットに渡した時だ。

「リ、リヒッテット様!賊が襲って来ます!」

「あはははは。賊は一人だろ、捕まえるのに手こずるのなら、殺してしまえ。」

「ち、違います!既に三百の兵がやられております!どうかお逃げ下さい!」

「リューゲルトに使者を、バイゼルを呼べ。おい、馬を!」

リヒッテットは馬に乗ると、リザリアを見て、

「ふふ、景品を取られたら意味がないからな。進むぞ!」

リヒッテットは馬を走らせた。逃げる気持ちは無かったが、不安は心の隅にあったのだが、それよりも、高揚感が勝っているので嫌な考えはなかった。
ゆっくりでは無く、全速力で馬を駆けている。

「ぼちぼち、体も温まったしそろそろいくか。」

今まで流れる様な動きだったのが、動きに誰も着いていけなくなっていた。そして殴られて倒れてる事が、人にぶつかる二次被害で倒れ出していたのだ。
一人とかではなく、4・5人巻き込まれるのだ。文字も、

バキッ、バキバキバキバキバキ「うげっ!」「だわばー!」ドカッ、バキバキバキバキバキバキバキ「がぁ!」「どわー!」ドコッ、バキバキバキバキバキバキバキ「ごぉ!」「ぐぇ!」

と擬音が凄い事になっていた。
リヒッテット軍も悲鳴が涌いてしまって、ほぼ逃げ惑う状態になる。1日でリヒッテット侯爵軍が壊滅していたのだった。
但し骨折や心に傷が残っただけで、死人は一人として出ていない。

「むー、もう少し試さないといけないな。柄を長くするかな?」

篤郎は戦場で悩みながら歩いていた。しかし、既に周りは敗戦状態で、色んな場所に病人を収容する場所を作り、急いでデェンゲルの町などに治療の救援を走らせていた。
マトックの柄を考えてた篤郎は、戦場と違うものになっていたのだが、至って真面目に考えていたのだ。

「あ、リヒッテットは逃げたよな。後を追うか。」

蹄の痕跡を確認しながら篤郎は消えて行った。
そしてこの戦いは西南部の貴族達が進行中に、王に寝返る結果となるのだった。
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