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第1章 転生しました!

キャンプ終了?

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少し遅めの目覚めになった。もう、既に5時過ぎだ。寝坊が無い訳ではない。遅くなれば当然遅くなる。
シュラフの中でそう思っていた。

森の中からコテージの近くにテントを張った。生徒会の者達がコテージに入ったのも見た。そして、無防備に寝てしまったのは俺だ。
だから何で、竹下と文雄が俺の左右で寝ているのだ?しかも抱き枕のようにして。
小学生迄は竹下とも寝ていたが、こんなに寝相が悪くないなっている。文雄は安定した寝相だ。
お陰で、ファスナーを下げる事が出来ない。逃げれない状況は始めてである。キャンプは何度も経験があり、寝相が悪い文雄もシュラフで転がる程度で酷くはないが、シュラフがないとこんなに悪いとは思っていなかった。ましてや竹下まで居るのは引いていた。このテントで何をしたかったのかを勘ぐってしまう。
ともかく篤郎は逃げれるタイミングを図っていた。寝坊が嫌と言うよりも、今の状況が嫌なのだ。こんな状況を見られたら、
シャ!
「雪絵居る・・・・の。」

ライトで顔は分からないが、声は藤木会計だ。目があったのだろうか、状況を正しく見て欲しい。

「きゃー!けだものー!」

うん、見ていないな。安定した寝ている二人。
藤木会計は声を挙げてコテージに入って行く。下手に弁解出来ない状況だ。安心なのは文雄が居ることだろう。
騒音がコテージから聞こえる。

「不純異性交遊の現行犯だと!」
「誰と誰ですか!」
「こっちです!」
「「「キャー!」」」

バタバタバタ、シャ!

「た、竹下さんと田渕!」
「真ん中は藤並君?」
「何にをしてるの!」
「うむ、出来れば竹下と文雄を退けてくれないか?」
「「えっ?」」

「見ての通りこれでは私は動けないから。」
「「はっ!」」
「起きなさい、雪絵!」
「田渕!起きろ!」

うるさい中で何とか引き離してくれた、厚木会長と荒木会長であった。しかも厚木会長により、コテージに連行されて事情聴取される。

「で、何で雪絵さんを連れ込んだのですか?」
「何で犯人なんだ。」
「貴方以外に誰が貴方のテントに連れ込むのですか!」

ヒートアップする厚木会長。

「ほう、シュラフに入っていた私が連れ込むですか?文雄もいたのですが?」
「そ、それは。」
「それは簡単だ!私が放り込んだ!」

荒木会長が意気揚々と割り込んできた。

「えっ?貴方がしたのですか?」
「そうだ。寝相が酷くて藤並君のテントに入れたのだ。お陰で良く眠れたよ。あはっはっはっはっ。」
「じゃ、雪絵は?」
「あ、あの。」

おずおずと轟木書記長が手を上げた。

「何か知っているの、由美?」
「あの、夜中に雪絵がトイレに行ったままでした。」

「「えっ?」」

「先ほどの叫び声で目が覚めた時、雪絵が隣に居なくて、もしかしたらと思ったんですけど。」

「なら、私の疑いが晴れるな。」

コテージに戻っても寝ている二人に拳骨を落とす。
ごん。ごん。

「「いた~い。」」
「起きろ。」

二人は頭を押さえていた。自分達が怒られている事さえ解っていない。当然、何で怒っていているのか分からない、ただ分かったのは篤郎に殴られた事である。

「痛いだろ、あっ君!」
「そうよ!女の頭を叩くのは駄目なんだよ!」

「うるさい。」
「雪絵さん。」

「なに?」

「貴女は藤並君のテントで寝てたのよ!」

「あっ君のテント?」
「そう、何で俺のテントに居た。」
「あっ君。」
「なんだ?」
「ご飯。」ぐぅー。

皆は緊張した面持ちで居たが、竹下の発言できょとんとし、お腹が鳴ったのを聞くと、笑いだした。
皆が笑う中で篤郎だけが呆れていた。何故なら竹下の発言が本当の事を言っているからだ。

「もう、雪絵ったら。」

で、もうこの話の決着がついた。
篤郎は既に別な事を考えていた。それは、朝昼用で多目にご飯とおかずを作る事だ。何にしようか考えてしまうようだ。
篤郎は食材を抱えて炊事場に行く。当然、他も各自の用事をしだしていた。竹下は皆が離れると篤郎の跡を追って外に出たが、テントを見付けてそのまま入って行った。二度寝は確実だ。

「さて。何を作るかな?」

テントでシュラフに潜った竹下をため息をつき放置しながら、箱を取る。箱には調味料が入っている。勿論、箱と言っても特別な冷凍箱である。それを炊事場に持って行き。料理を始める。
トマト入りのオムレツを朝食用に少し甘めに、昼用にネギ入りの玉子焼きには塩を入れる。
朝昼用にサラダも着ける。メインは油の入った鍋を取り出しておく。鶏肉を使った唐揚げだ。野菜も揚げて置けば良い。
そして、その匂いに釣られて、大食娘が現れた。
実は竹下雪絵は柔道部に根ちっこく勧誘される程の武術家だ。本人はラクロス部に所属しているので、頑なに断っている。それ程の逸材なのは、篤郎が関わっていた。

「唐揚げの匂いです。」

目がキピーンと光ると、竹下は唐揚げに向かって一直線に走り出した。唐揚げを揚げたトレーから奪おうと、唐揚げに触ろうとした瞬間に、篤郎の箸が竹下の腕を掴み投げ飛ばしていた。飛ばされた竹下は猫の様に回転して着地。また、襲いかかる。
篤郎は慣れたもので、大量の唐揚げを守りながら、綺麗に揚げる。襲っても竹下を投げ飛ばし、油から揚げカスを救い、新しい唐揚げを投入する。竹下は玉子焼きやオムレツにも手を出すが、瞬時に篤郎に投げ飛ばされるのだ。
飯の攻防だが、凄まじい事である。実はキャンプで遭難をしたことがある。竹下の我儘での遭難だったが、篤郎の狩猟力が凄くて飢えは無かったが、本能的に奪う事に長けたのだろう。その後のキャンプで、篤郎が朝食を作ると竹下が襲うとなってしまった。家ではそんな行動は一切ないのだが、篤郎が朝食を作るとバーサークになるのだ。
捌くのにも慣れてしまった篤郎は涼しい顔で料理を続けた。やがてコテージから鈴木副会長が出てきてそれを見ると、

「ギ、ギャー!」

の叫び声を挙げて、コテージから又全員集まった。
篤郎と竹下の攻防に唖然としていたが、文雄は笑いながら言う。

「またやってるよ。あぁ、安心してください。あれは病気が発動しただけで、朝食で呼べば元に戻りますから。」

「凄いね。あの子あんなに動けるんだ。」

「荒木会長。あれはキャンプで篤郎が朝食を作ると発動するだけで以外では起こりません。それにあの動きを余裕に捌く篤郎が育てた結果です。」

「そ、そうなの。大丈夫なんだよね?」

「はい。」

文雄のハッキリした態度が良かったのか、生徒会達は安心したようだ。それよりも、

「出来た料理を運んでくれないか?」

の、篤郎の言葉に文雄を筆頭に運び込まれる。二人の攻防は続いていたが。唐揚げの二度揚げも終わり、篤郎は最後と言わんばかりに竹下を投げ飛ばしてコテージに戻った。
飯盒も揃ったので文雄が、

「雪絵~、朝ごはんだよ~。」

「はーい。」

と意識が戻った竹下が無事に玄関から入ってきた。半信半疑の生徒会達は、竹下が本当に正気になり戻った事に、更なる驚いていた。
その後は、朝飯を食べ終わってから、昼食の準備をしてから洗い物を洗った。出した食器などは轟木書記長や藤本書記長が直してくれた。
終わったらテント等を片付けてか下山の準備をしてから、コテージに入った。10時過ぎに下山すればバスに間に合う予定だ。
準備がではなくて主発が出来たらだか。
竹下と文雄はギリギリにしか動けないから、他がうまく行けばと考えていた。
二階より凰価女性人が降りてきた。
篤郎に対して興味も沸かないのだろう。背が高い訳でもなく、不細工の部類の顔だちだ。キャンプは出来たが普通高校の生徒だ。エリートと一般人との意識が帰る事によって強く現れていた。
それは、聖進の生徒もそうであった。
10時10分を回った頃に厚木会長と竹下が降りてきた。

「あっ君、おまたー!あれ、文雄は?」

続けて文雄達が降りてきた。

「済まない、田渕を待っていたら遅れた。」
「みんな、ごめん!」

「全員揃ったな。忘れ物はないな?」

おどけた態度の文雄を無視して、篤郎が指示しだした。
当然、不満があったが予定時間を過ぎていたので、誰も文句を言わず頷いた。

「荒木会長は管理事務所に、他は外に出ましょう。」

皆は軽い装備なのに、一人だけ重装備なのを冷静に見られていた。最初の頃の様な視線を篤郎に投げ掛けていた。
篤郎にはその視線は効かなかったが。
管理事務所から戻ってきた荒木会長が渋い顔をして戻ってきた。

「藤並君。」
「ご苦労様です、荒木会長。では、下山しましょう。」
「ちょっと待ちたまえ、藤並君。」
「何でしょうか?」

「管理事務所の近くにバス停があるのだが?」

「ええ、ありますが?」

「下山する意味が無いようでは?」
「えー!バス停があるの?」
「何で歩いて下山なのよ!」
「だから、キモイのよ。」

「と言いますと。」

「我々はそこのバスに乗って帰る。」

「そうですか。では、私はこれで。」

「あぁ。」

「「あっ君!」」

「またな。俺は元の予定通りにさ。」

篤郎はそのまま、森へと消えた。
生徒会達はバス停に向かって歩き出した。

「さ、野蛮人は消えたし帰ろうか。」
「本当に一般人は嫌でしたわ。」
「お風呂に入りたいですね、会長。」
「本当に大変なキャンプでした。」

「あっ君。」
「帰ったら謝ろうな。」

竹下と文雄は自分達が誘った為に酷い目に合わせた幼なじみに、申し訳ない気持ちであった。

「置いて行くぞ。」

荒木会長の声に彼等は従った。
彼等は知らない。何故、篤郎が山を下山をするのかを。
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