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第1章 転生しました!

キャンプ二日目

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朝は何時もどうりに起床。素早くシュラフを片付けて、朝靄の中で湯を湧かす。夜明け近くでは木は湿気ってしまうので簡易コンロを使います。珈琲を水筒に入れて、背負子を背負い山を登ります。頂上に登り、岩肌に腰を降ろして朝日を待ちます。見るも大事ですが、カメラにも納める予定です。明らむまで珈琲を飲み、時を待ちます。人様に見られると困りますが、朝日を見に頂上とか登る人は私意外にいません。ま、居たら中止でしたが。

都会よりも空気が澄んでいて、肺に入れると冷たく気持ち良いです。朝日が登っきた様に天が赤くなります。望遠をセットしたデジタルカメラを構えて連続でカメラを走らせます。一枚の為に何万枚も撮るので、後の確認作業が大変ですが、夏休みの課題に使えるので、一石二鳥と言えるでしょう。
日が登りきるまでをカメラに納めて、下山しました。帰って朝食ですから。

朝ご飯の後の6時半には、洗い物を纏めて武術の稽古です。今回は剣術と体術の型をします。休憩を挟んでキビキビやります。
10時までして汗を拭いてから着替えて、勉強道具を持ってコテージに行きます。
キャンプだからと言って勉学を疎かに出来ない、エリートさん達と合流しての勉強会です。
それでも十分あれば到着ですが、コテージが凄い事になってました。同年代の方々がコテージの周辺をたむろっています。登山、キャンプ客とは明らかに違う出で立ちなのが笑えます。
無視してコテージに入って行きます。

「き、来たー!あっ君遅いよ!」

文雄が怖がりながら駆け寄ります。なんで?

「もう、怖くて朝ごはんを抜いたよ。外に怖い人も居るみたいだし。もうさ、会長が勉強会に変更して、あっ君が来るまで凌いでいたよ。」

偉い事になっているのやら。

「会長さん達は?」

「二階の部屋だよ。」

二階に上がって、文雄の誘導で部屋に入る。ま、がり勉達が鉛筆を走らせるのは良いが、鬼気迫るのはちょっと違う。

「荒木会長、厚木会長、遅くなりました。」

「ん、あぁ。き、今日は帰るのだ。いや、直ぐに帰ろう!」

「荒木君!そうね。帰りましょう!」

「いや、二泊三日でしょう。」
「きみ~!あんな者達が居て此処に入れると思うのか!」
「そうよ!バイクの音はうるさいし、野蛮な方々が多くて嫌です!」
「「会長~!」」

情緒不安定な状態は外のやんちゃさん達ですか。

「分かりました。此方で何とかしましょう。勉強を続けて下さい。カレーは?」

「無くなっちゃたよ、あっ君。」

竹下がベロを出して報告してくる。こいつ、いや、こいつらかな。食いしん坊共め。

「食材の準備をしておいてくれ。昼は遅れるかもしれないが。」

静かに部屋を出て行く篤郎と、現実から目を背けた生徒会達と、ご飯の心配をしている二人に別れる。
のんびりと、外に出れば暴走族達に当然見つかる。しかし、暴走族達は篤郎を見ると一斉に、

「よ、用事を忘れていた!」
「「俺も!」」

とバイクに飛び乗り逃げていった。逃げ去ると庄内高の不良達が残る。と言っても篤郎の噂も知らないのだが、

「お、お前が二年の藤並かぁ?ちょっと、面かせ。」

往年のチンピラ映画の展開で、篤郎は驚いていた。もう、大名行列になって移動だ。大人よりも子供な感じだ。日本では二十歳で成人=大人だが、働く最小は15、6歳からになる。高校を行かなければ働くとなる。先進国なら普通だが、後進国では違う所が多い。本当に日本は平和だ。普通なら怖がる方が良いのだろう。不良や、弱い者虐めを平気で出来る奴らは弱い。怖さを分からないから集団で強さをだす。集団だから殺す事を平気で出来るのは、罪を共有できると勘違いするからだろう。
プッ、篤郎は笑ってしまう。

「おめー、余裕だな!その余裕が何時まで持つかな?」

「いや、すまない。うん。プッ。すまん、すまん。」

「し、死にたいらしいな!」
「やっちまえ!」
「おらあぁぁ!」

四人が襲い掛かってきた。蹴りを繰り出すが、それよりも篤郎は速く動き、映画の様に四人が吹き飛ばされた。

「「「えっ!」」」

残りの三人の後ろに廻ると二人を手刀を入れて気絶させる。

「ふむ、弱いな。これなら、昼食は少し気合いを入れなくてはいけないな。」

最後の不良は腰を抜かしてへたり込む。もう、逃げる事が出来ない。

「な、なんだよ!お前が悪いんだろ!何でこんな事をするんだよ。」

泣きべそをかく、不良。

「何で?お前らが俺を襲うからだろ。俺が悪い?いや、お前らが悪いだろ。」

不良の頭を力を入れて掴むと、右の拳を振り上げる。

「俺に敵対したのだから、覚悟をきめろ。」

「嫌だ、俺は悪くない、わ、悪く、ぎゃー!」

篤郎の拳は不良の鼻先で止まったが、不良は気絶してしまう。そして、ジョロロロロ・・・・
その場に不良達を置いて、連れられた場所から、のんびりと現れる篤郎を見て、同年代達の表情が変わった。

「そうだ。君たち、勉強の邪魔をするなら、ね。」

拳を鳴らして、笑顔を同年代達に向けた。その笑顔を見てしまったモノは青白い顔を縦に振っていた。

篤郎がコテージに戻った瞬間に大勢の同年代達は帰り支度を始めていたのだ。数分後に食材を手にした篤郎が現れて料理を始めると、帰り支度のスピードが速くなった。
のんびりと昼の段取りを鼻歌混じりにしている篤郎と、急いで帰る同年代達の姿で、コテージは静かになっていた。
チキンライスを作っていると、不良達がいそいそと帰って行った。
これで静かに出来るなと思いながら料理を進めた。

「竹下!文雄!料理を取りに来てくれ!」

の言葉に出てくる二人は、静かになったのを驚いていた。

「何があった、あっ君。」
「何もないぞ、出来た!竹下、スープを入れて。文雄はオムライスも出来たから持って行って、応援を呼んで。」
「「はい。」」

直ぐに文雄は出来立てのオムライスを2つ持つと、コテージに入って行った。

「あっ君、大丈夫だった?」

「ん?怪我も汚れてもいないぞ。」

「ははは、何かしたの?」

「してないって。それよりも竹下のオムライスは小さいのでいいな。」
「おおーい、止めて!」
「嫌な事を言う人は量を減らします。」
「わー!言いません、言いません。」
「ならば、入れたスープを持って行け。」
「了解しました!」

何かと首を突っ込む竹下を抑えて、配膳を頼めたようだ。その間にコテージから料理を取りに来た。文雄が出てきたので、

「文雄。オムライスはもう無いが、スープは残っているから、鍋を持って行け。俺はテントに戻るよ。」
「えっ!」
「一時間したら戻るから。頼んだぞ。」

そう言って篤郎はコテージから離れた。恥ずかしいよりも詮索される方が困るからだ。文雄は恥ずかしいと捉えていたが。
テントに戻ってから、慌てて筒を開く。
昨晩の焚き火にくべた竹だ。勿論、料理をしていたから慌てて戻ったのだが、一つ目の竹筒は野菜が入っていたのは無事だったが、肉が入った竹筒は狐に持ち去られていた。

「やはりやられたか。」

蒸した野菜を噛りながら、聖進と凰価の人気に感心もしていた。
ま、格好良い顔立ちでは無いが、美女達の中にいるから良いか。
篤郎にはトラウマがある。竹下雪絵に言われた言葉に、『あっ君が女なら完璧だけど、男だから恋愛対象に上げれない。家事と料理が出来た時点で無しだよ。』とある。だが、世の中にはこんな男を好きになる女もいるだろう。とは思ってはいる。
学生時代の恋愛は無駄と感じてしまう出来事だった。

ある程度の片付けをして、晩の準備だけする。
夜は早く戻る様にしたい。山菜の天ぷらを作りたいからだ。出来れば、多く集めたいと考えていた。そして、山を駆けて行った。

夕方に篤郎がコテージに現れた頃に、ビーチバレーを女子達が楽しんでいた。文雄を探してコテージに入ると愕然としたのだ。
昼食の皿や鍋が置いたままになっていたのだ。なんだか篤郎は、お手伝いさんをしてたようだ。
取り敢えず、鍋に皿を入れて流し場に現れても、誰も声を掛けてこない。洗っても、拭いても誰も手伝いにこない。
ブチキレて鍋に洗い物を入れてコテージに戻り、

「文雄いるか!」

と、大声で呼んでいた。が、

「うるさいぞ、藤並。勉強の邪魔をするな。」

の声に、

「俺はお手伝いに来たのではない!勝手にしろ!」

と篤郎はコテージを出ていった。当然、女子達は呆然と篤郎を見送っていた。
当然、怒った篤郎はテントを片付けて移動した。山の奥に消えて行ったのだ。普通の登山道を進まず、滅多に人が通らない場所を選んでの移動だ。

しばらくして、お堂を見つけた。朽ち果てた感じもするが、まだ建物としての存在はあった。珍しい物を発見したと、カメラを取り出して撮影を始めた。お堂の中を見たくて開けたのだが、そこには石しかなかった。石を取り出して眺めると、不思議な事に絵が刻まれていた。その絵を見て、篤郎は驚いていた。
紋章陣の出来損ないである。文字も間違っているし、紋様も意味がなっていない。例えるならば、トランシーバーの通話が出来ない感じだ。当然、魔力も無いのだから使える訳がない。もし使えても、出来損ないだから一言声を送って終わりである。
はたっと気が付いた。
出来損ないの紋章陣が、何故石に刻まれていたのか?
文字も違うから、元の世界と違うのだが、似すぎていたのだ。
興味に負けて篤郎は石を布でくるんでリックに締まった。
帰宅してから研究が出来るなと喜んでいた。
そして、元の位置に帰って行ったのだ。
戻ってから、テントを張り直して、火を起こし天ぷらを作っていた。大量とは成らなかったが、山菜と野菜がメインの天ぷらが出来た。
火から鍋を外して食べようとすると、

「あっ君いた!皆こっちだよ!」

と竹下が叫んでいた。

「やらんぞ。」

と、山菜を食べると、竹下が詰め寄り、

「あっ君、天ぷらだよね?一人は無いよね。」

と食い意地を出して来た。
他の生徒会達も揃い、此方を見る。

「この天ぷらは俺の晩飯だからな。」

と、篤郎は竹下から天ぷらを死守していたが、何個か取られて食べられてしまう。

「あっ君の天ぷら~。旨いよ~。」
「ごくっ。あっ君!俺にも一口!」
「やーめーろー!」

その姿に厚木会長が笑い、呼応するように女子達も笑っていた。荒木会長だけはため息をついていたが。
笑い声で、篤郎は動きを止めたが、竹下と文雄は天ぷらを口に頬張っていた。
一頻り、笑い終わると厚木会長が、

「藤並君、お昼はありがとう。そして、ごめんなさい。洗い物もせずに遊んでしまって。私達は怖い人達に立ち向かえず、手伝いも出来なかったのに、昨日から本当にすみませんでした。」
「「「すみませんでした。」」」

二人のグールは放って置いて、生徒会の謝罪を受け取った。

「そうか。でも手を貸しすぎたようだ。主体は君たちだ。今晩の料理は君たちで作ってくれ。」

「待ってよ、あっ君!私の料理を私が食べろと!?」
「そうだ!雪絵の料理を俺達に食べさせるのか?!」

「ふー。君たちの中で料理を出来る者は?」

誰も手を上げない。

「おいおい、包丁位持った人は?」

誰も手を上げない。
気間づい雰囲気が流れ出した。

「嘘だろう。」

篤郎は驚愕していた。まさか日本で料理を作った人がいないとは。

「厚木会長?」
「私は作った事が・・・・」

「浅水副会長?」
「勉強してたから・・・・」

「鈴木副会長?」
「包丁も持ったことないから・・・・」

「轟木書記長?」
「ごめん!」

「藤本書記長?」
「無理・・・・」

「山田庶務は?」
「経験がない。」

「藤木会計!」
「以下同文!」

「荒木かい」
「私に期待されても困る!」

「文雄。今晩の献立は?」
「えーと。」
「私知ってる!ステーキにパンとポタージュスープ!」

竹下が張り切っていた。
篤郎は壊滅的な未来しか予知が出来なかった。

「文雄、此処から移動するわ。少し手伝え。」

それからテントをまた片付け。出した物をリックに入れて、背負子を背負うと油が入った鍋を持って、

「コテージに戻るぞ。」

で、戻って行った。
その後、夜の20時から料理を始めて、終わったのが22時。片付けを入れても22時半。皆をコテージに戻すと、篤郎はテントを建てた。
こんなに無駄な1日は無かったとも思っていた。

24時に就寝をした。
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