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本章
暗殺と少年
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教会本部からの使者が正式な書簡を手にイルミナティ砦についたのは、魔物との戦いがあった日から三日後であった。
使者は悠然と来たのだが、雰囲気に呑まれて教会に立ち寄る嵌めになる。
「・・・・・・と言うことで、彼女は『聖女』として民衆に広まり、また実績も積みまして、イルミナティでは『聖女』としても申し分がないでしょう。」
ホクホク顔で話すイルミナティ教会のデブリ司祭。辺境な街で信者が少ない所に居る、何の取り柄もないと使者は感じてしまいイライラが募る。
「そうか、回復魔法も出来て人々に奉仕までしている逸材で、聖女と名乗っているとは。」
由々しき事態に頭が痛くなる。
彼ら使者の目的はイルミナティ砦からエイトを連れ出し、イルミナティから離れた所で暗殺をする事である。
死ぬ前に調査をする事になってしまうが、本部に知られる前に殺さないと自分達の命はない。
殺す為に家族を人質にされてしまっていた。
それも失敗をしたらになるが、失敗などあり得なかった。
暗部暗殺エリート部隊。
聖女様の直轄であり、個人のレベルも110を超えているのだ。
“無敵の部隊”と言う名があるくらいだ。
「そうなのですが、民衆から付いた通り名ですよ?彼女は一度も宣言はしてませんが。」
「!分かっておる!その子に会いに行く!」
憤然と外に出て馬車に乗り込む。
「出せ。」
の声で動き出す。
デブリ司祭はニコニコとした顔で見送りをしていた。
「やっと、成果が出来たが、本部に良い印象を付けてくれるかな。」
まだ、実情も知らないが、本部へ自身の権限において、学園に入学させれる一名を初めて使ったのである。理由は二つある。一つ目はエイトを哀れみ後ろ楯になること、二つ目は実績を作りこの街から鞍替えを希望するためである。
この街から逃げ出したいのが本音である。
教会をないがしろにするイルミナティが嫌いなのだ。此処から出て信者が多い村に移動出来れば良いと思っていた。
彼は自分の思惑と違う動きがあることを知らない。
「取り敢えず街の情報が必要だ。」
「時間が短いですが、集めましょう。」
「砦も頼む。」
影が消えてしまい馬車には使者が残っていた。
馬車は砦に着くのだが、歓迎してる様でしていない兵に迎えられる。
会話もなく、上官達が待つ部屋に通される。
ただし貴族育ちの上官は流民の引き渡しには関心がないし、教会にも関心がない為、この場には居ない。
「遥々お越しくださいましたな、書簡を。」
「はい。それで少女は?」
挨拶も抜きで書簡を渡しながら聞いた。
「ちっ、本物か。」
すかさずノックが聞こえた。
「なんだ!」
扉が再び開き、エイトが現れた。
「何で貴女が!」
「呼ばれる手間を惜しみました。使者殿、エイトでございます。」
「あぁ・・・・・・」
使者は驚いていた。
殺す対象が、こんなにも優雅で可憐で凛としている存在とは、と感じていた。自責の念も含めて、自答をしてしまう。
良いのかと。
家族も知り合いも教団も忘れてしまいながらの自答である。
自問ではない。
殺す事は、教会も教団も決定事項である。
自分以外の事なら教会の為に何でも出来る。
我が子を我が妻を我が家族を差し出すのに躊躇いもないが、この子には直ぐに出来なかった。
もしかして、と思ってしまうが、
(教会を揺るがす存在ですよ。)
と頭に響いた。
(人生を教会に捧げたのに壊せない。)その通りだ。長年、教えを学び教皇様に可愛がられて来たのに、地位や名誉を捨てる覚悟はない。
(壊す危険人物)は殺さないととダメだ。
意識を戻し、元の顔に戻った。
「では。書簡の通り彼女を学園に連れていきます。」
「しかしですな、まだ・・・・」
「分かりました。荷物もありませんから直ぐに行けますよ。」
その凛とした姿に惚れ惚れしている上官達と、殺意が混じった使者と分かれてしまう。
殺気を抑えながらエイトに向かい、
「では、出立しましょう。」
「えっ?」
「はい。皆様、大変にお世話になりました。失礼します。」
「えっ?えっ?」
使者とエイトが並んで出ていったのだ。
「「「ええー!」」」
上官達の衝撃は凄まじかったが、エイトの制止も叶わず出ていったのだ。何も出来ないと張れたらヤバくなりそうと考えてしまい、出るのが遅れて扉のノブに手をかけた。
「ん?」
「どうした?早く開けろ。」
上官がノブを回すが扉は開かなかった。
「何故だ!鍵も無いのに開かないのは、変だぞ!」
「俺に変われ!むう!あ、開かない?!」
扉の前で叩いたり叫んだりしたのだが、扉は開かないし叫び声も届かなかった。扉が開いたのはエイトが砦でも街も通り過ぎた頃であった。
「「「エイト様ー!」」」
その声は砦の中で響いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
馬車に乗り込むまで誰にも会わずにエイトを乗り込ませたのは、上々のことである。
砦の中で会わなかったら、街でも騒ぎにもならなかったのだ。
主が我々の行動が正義の行いだと言ってるかのようだ。
止められず、妨げられずに街から離れたのは最大にして最高のシチュエーションでしかない。
しかないのだが、問題があるのだ。
影からの連絡がなかったのだ。
「すみません、学園に入るのに何か必要な事はありませんか?」
エイトからの質問が来たのは良いが、どうせ死ぬ前の話として話をしてみた。
「あぁ、一応は教会からの召喚なので、余り目立たない方が良いが要らない称号を貰ったのでそうは行くまい。取り敢えず下でに居ることと、称号の話をしないことをお薦めするな。必要な物は学園から出して貰うので、心配する事はない。寧ろ編入なのだ。注意すべきお方がいる。その、お方は聖女様候補生なのだが、聖女の付き人で次の聖女に着かれるお方だ。」
「聖女って決まってるのですね。」
「そうだ、決まっている。私も噂として聞いた話だが、聖女様の隠し種らしい。(何の話をしているんだ俺は?)逆らえば教会から、怨まれる程度で終わらない。(話してはならぬ!)イルミナティも安全でおれるか・・・・・(話すな!)教皇が父親との噂もあるからな。」
「噂ですよね?」
「噂である。」
エイトは静かに受け答えしていたが、使者は言ってはいけない事をいってしまったのだ。その為に顔は白くなり汗を流している。
言葉は平然とした口調なのに、何故言えない事を言ったのだろうと、自分が信じられなくなってしまった。
「では、学園はどのような雰囲気ですか?」
「その子が牛耳っているよ。決して関わるなと言いたい。」
「優しいのですね。」
「優しい?私が優しいかね?もうすぐ死んでしまう貴様が私を?」
「私が死ぬのですか?」
「そうだ!殺される運命なのだよ!」
「では、その定めを乗り越えたら認めますか。」
ニッコリと笑い、使者を見ていた。
その目を見た使者は恐れた。
多分、私の知る記憶はここまでだ。
この後は知らない。
使者は悠然と来たのだが、雰囲気に呑まれて教会に立ち寄る嵌めになる。
「・・・・・・と言うことで、彼女は『聖女』として民衆に広まり、また実績も積みまして、イルミナティでは『聖女』としても申し分がないでしょう。」
ホクホク顔で話すイルミナティ教会のデブリ司祭。辺境な街で信者が少ない所に居る、何の取り柄もないと使者は感じてしまいイライラが募る。
「そうか、回復魔法も出来て人々に奉仕までしている逸材で、聖女と名乗っているとは。」
由々しき事態に頭が痛くなる。
彼ら使者の目的はイルミナティ砦からエイトを連れ出し、イルミナティから離れた所で暗殺をする事である。
死ぬ前に調査をする事になってしまうが、本部に知られる前に殺さないと自分達の命はない。
殺す為に家族を人質にされてしまっていた。
それも失敗をしたらになるが、失敗などあり得なかった。
暗部暗殺エリート部隊。
聖女様の直轄であり、個人のレベルも110を超えているのだ。
“無敵の部隊”と言う名があるくらいだ。
「そうなのですが、民衆から付いた通り名ですよ?彼女は一度も宣言はしてませんが。」
「!分かっておる!その子に会いに行く!」
憤然と外に出て馬車に乗り込む。
「出せ。」
の声で動き出す。
デブリ司祭はニコニコとした顔で見送りをしていた。
「やっと、成果が出来たが、本部に良い印象を付けてくれるかな。」
まだ、実情も知らないが、本部へ自身の権限において、学園に入学させれる一名を初めて使ったのである。理由は二つある。一つ目はエイトを哀れみ後ろ楯になること、二つ目は実績を作りこの街から鞍替えを希望するためである。
この街から逃げ出したいのが本音である。
教会をないがしろにするイルミナティが嫌いなのだ。此処から出て信者が多い村に移動出来れば良いと思っていた。
彼は自分の思惑と違う動きがあることを知らない。
「取り敢えず街の情報が必要だ。」
「時間が短いですが、集めましょう。」
「砦も頼む。」
影が消えてしまい馬車には使者が残っていた。
馬車は砦に着くのだが、歓迎してる様でしていない兵に迎えられる。
会話もなく、上官達が待つ部屋に通される。
ただし貴族育ちの上官は流民の引き渡しには関心がないし、教会にも関心がない為、この場には居ない。
「遥々お越しくださいましたな、書簡を。」
「はい。それで少女は?」
挨拶も抜きで書簡を渡しながら聞いた。
「ちっ、本物か。」
すかさずノックが聞こえた。
「なんだ!」
扉が再び開き、エイトが現れた。
「何で貴女が!」
「呼ばれる手間を惜しみました。使者殿、エイトでございます。」
「あぁ・・・・・・」
使者は驚いていた。
殺す対象が、こんなにも優雅で可憐で凛としている存在とは、と感じていた。自責の念も含めて、自答をしてしまう。
良いのかと。
家族も知り合いも教団も忘れてしまいながらの自答である。
自問ではない。
殺す事は、教会も教団も決定事項である。
自分以外の事なら教会の為に何でも出来る。
我が子を我が妻を我が家族を差し出すのに躊躇いもないが、この子には直ぐに出来なかった。
もしかして、と思ってしまうが、
(教会を揺るがす存在ですよ。)
と頭に響いた。
(人生を教会に捧げたのに壊せない。)その通りだ。長年、教えを学び教皇様に可愛がられて来たのに、地位や名誉を捨てる覚悟はない。
(壊す危険人物)は殺さないととダメだ。
意識を戻し、元の顔に戻った。
「では。書簡の通り彼女を学園に連れていきます。」
「しかしですな、まだ・・・・」
「分かりました。荷物もありませんから直ぐに行けますよ。」
その凛とした姿に惚れ惚れしている上官達と、殺意が混じった使者と分かれてしまう。
殺気を抑えながらエイトに向かい、
「では、出立しましょう。」
「えっ?」
「はい。皆様、大変にお世話になりました。失礼します。」
「えっ?えっ?」
使者とエイトが並んで出ていったのだ。
「「「ええー!」」」
上官達の衝撃は凄まじかったが、エイトの制止も叶わず出ていったのだ。何も出来ないと張れたらヤバくなりそうと考えてしまい、出るのが遅れて扉のノブに手をかけた。
「ん?」
「どうした?早く開けろ。」
上官がノブを回すが扉は開かなかった。
「何故だ!鍵も無いのに開かないのは、変だぞ!」
「俺に変われ!むう!あ、開かない?!」
扉の前で叩いたり叫んだりしたのだが、扉は開かないし叫び声も届かなかった。扉が開いたのはエイトが砦でも街も通り過ぎた頃であった。
「「「エイト様ー!」」」
その声は砦の中で響いていた。
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馬車に乗り込むまで誰にも会わずにエイトを乗り込ませたのは、上々のことである。
砦の中で会わなかったら、街でも騒ぎにもならなかったのだ。
主が我々の行動が正義の行いだと言ってるかのようだ。
止められず、妨げられずに街から離れたのは最大にして最高のシチュエーションでしかない。
しかないのだが、問題があるのだ。
影からの連絡がなかったのだ。
「すみません、学園に入るのに何か必要な事はありませんか?」
エイトからの質問が来たのは良いが、どうせ死ぬ前の話として話をしてみた。
「あぁ、一応は教会からの召喚なので、余り目立たない方が良いが要らない称号を貰ったのでそうは行くまい。取り敢えず下でに居ることと、称号の話をしないことをお薦めするな。必要な物は学園から出して貰うので、心配する事はない。寧ろ編入なのだ。注意すべきお方がいる。その、お方は聖女様候補生なのだが、聖女の付き人で次の聖女に着かれるお方だ。」
「聖女って決まってるのですね。」
「そうだ、決まっている。私も噂として聞いた話だが、聖女様の隠し種らしい。(何の話をしているんだ俺は?)逆らえば教会から、怨まれる程度で終わらない。(話してはならぬ!)イルミナティも安全でおれるか・・・・・(話すな!)教皇が父親との噂もあるからな。」
「噂ですよね?」
「噂である。」
エイトは静かに受け答えしていたが、使者は言ってはいけない事をいってしまったのだ。その為に顔は白くなり汗を流している。
言葉は平然とした口調なのに、何故言えない事を言ったのだろうと、自分が信じられなくなってしまった。
「では、学園はどのような雰囲気ですか?」
「その子が牛耳っているよ。決して関わるなと言いたい。」
「優しいのですね。」
「優しい?私が優しいかね?もうすぐ死んでしまう貴様が私を?」
「私が死ぬのですか?」
「そうだ!殺される運命なのだよ!」
「では、その定めを乗り越えたら認めますか。」
ニッコリと笑い、使者を見ていた。
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多分、私の知る記憶はここまでだ。
この後は知らない。
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