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青年期:法国
道端の女神
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魔界から飛び出て二日。
日数としてはそれほど経過していないが、エルピスの作り出した魔法の馬はとてつもない速度で地平線を走り続けていた。
魔界には基本的に整備された道というのは存在しない。
まず街同士の交流がなく、次にあったとしても短距離間の物々交換が主流であるため道を作る必要性がないのだ。
その為に魔界は多種多様な種族が存在するが、魔界で暮らしている種族全てを知っている人間は殆どいない。
交渉中しか外に出てこない種族や、己の持つ領域から一切出てこない種族などは途方もない年月を生きる始祖種であるフェルですら知らないもの達もいる。
余談はこれくらいにするとして、どちらにせよ信じられないほどに広い魔界という空間を二日で駆け抜けたのが午前のこと。
それからいくつか魔界に入る際の難所を超えたエルピスは法国へと向かう街道を走らせていた。
「こうして馬車での移動は久しぶりですね」
心地よい風に身を包まれながら気持ちよさに目を細めてそんな事を口にしたのは、妖精神の力を使っているからか緑の髪色になったエラである。
権能に侵食された形でエラの髪色は変化したのだが、それは森妖種の特有な性質として付近の魔力に応じた色に変化するという特性を持つからである。
一般的に緑や金色という成分を森妖種が持つのは自然や太陽光が持つ魔力に影響されるからであり、妖精神の特性に常時権能を使用中であるエラが侵食されるのは仕方のないことであるとも言えた。
感情に浸るエラの言葉に対して疑問を投げかけるのは荷台で落ち着きのないレネスである。
「移動は楽だがなぜ走っていかないんだ? そちらの方が早く着くだろうに」
「今回に関してはゆっくりと行った方が良いんですよ、アウローラを助けたいならそうしないと行けないんです」
「それは影から聞いたのか?」
「そうですよ」
影から聞いたのかと聞いてきたレネスに対して、エルピスは振り返ることなく首を縦に振る。
そもそもからして二日前馬車で移動しようとした時にエラに説明する時ついでに説明しなかったのが悪いのだが、自分だって創生神に言われていなければ急いで法国に向かっていると言いたいエルピスであった。
責任感を感じ、その責任感に体を潰されそうになっていたエラがいまこうして風に身を任せられているのは、単にエルピスがエラに対して自分を信じる様に懇切丁寧にお願いした結果に過ぎない。
「とりあえず目標は法国の首都だけれど、法皇とあったらその後は?」
「もちろん法国にいる神様とやらを探しにいくよ。首に縄かけてでもアウローラのところまで連れていかないと」
正直な話法国の神がどうやってアウローラを助けるのか、その方法すらエルピスは知り得ないがそれでいいのだと信じてセラの言葉に力強く言葉を返す。
もちろん二つ目の手段を用意した方が良いのだろうが、現状アウローラの傷の原因が破壊神の権能によるものらしいという程度の知識しかない以上、最も頼りになるのはそれと敵対していた創生神の言葉である。
それでなくともエルピスは自分の権能に押しつぶされない為にも法国の神に合う必要があるのだ、どちらにせよという話でもある。
「確か法国の神とは昔会ったことがあるがなかなか面白い人だった、事情を説明すればついて来てくれると思うぞ」
「師匠が昔って言うくらいだから相当昔の話なんでしょうね」
「レディの年齢に関しての話はあまりするべきじゃないぞエルピス」
牙を剥き出しにして威嚇するレネスに対して、エルピスは少し困った様な顔をしながら頭を下げる。
感情を自覚していなかった頃のレネスの威嚇も冷徹な怖さがあったが、いまのレネスの威嚇は怒りの感情も相まって命の危険を感じずにはいられない。
「怖いんで威嚇しないでくださいよ悪かったですって、ところでニルはまだどこか行ってるの?」
とっとと話を切り替えようとエルピスが出した話題はこの場にいないニルの事。
自分が眠っている間別の地域へと移動していたのはセラから聞いて知っていたが、いつもならば他の地域に行く際にはちょうどよく帰ってきていたところだ。
だが魔界から出て少し経ったというのにいまだにニルがやってくる様な気配はなく、エルピスはどうしたのかとセラに問う。
「あの子も最近は本当に大忙しだから。でも昨日は一回帰ってきてたと思うんだけど」
「言われてみれば寝てる最中に部屋に誰かが来たような気はする」
「大方忍び込んだんでしょうね、最近あの子が何をしているかは私も知らないけれどきっと必要なことなのよ」
必要な事だと言われればそれ以上にエルピスが言及することはない。
魔界にいるアルヘオ家に関係する人間に対して、ニルがもし帰ってきたら自分達は法国に向かったと伝える様頼んである。
入れ違えになっている可能性も考慮すれば、法国についた頃には会えるだろうというのがエルピスの大体の予想である。
会話も一旦終わり少しの間なんとも言えない時間が流れ、ふと思い出したようにエラが口を開いた。
「そういえばずっと気になってたんだけどセラとニルって姉妹なの?」
「正確に言うと姉妹ではないわね。生まれも違うし同じ親に育てられたわけでもない。
ただ司るものの関係で私とニルは同じような性質を持つから、分かりやすく姉妹を名乗っているだけよ」
詳しい話はエルピスも知らないが、ニルは創生神側にも破壊神側にも付いていなかった野良の神。
それに対してセラは創生神の身近に仕えていた創生神側のNo.2であり、関係性といえばそれだけに終わる様なものである。
ただ彼女達は両者共に愛をその神としての性質として保持しており、同系統の神として分かりやすく順位を決めた結果がいまというわけである。
ちなみに愛の神はもちろんセラやニル以外にも多数存在し、天界でセラが抜けた穴を必死に埋めているのはそんな愛の神達であったりするのだ。
「ちなみにどっちがお姉さんなの?」
「強い方が姉よ。いまのところ私はニルに一度も負けていないから、ずっと姉のままね」
「不思議な姉妹関係もあるもんだね」
実際のところ勝率としてはそれほどセラとニルの戦闘は差をつけられているわけではない。
勝利回数的にセラの方が上位という扱いにはなっているが、ニルがセラに勝利するということもないわけではないのだ。
そんな話をしながらエルピス達が法国へと向かって馬車を進めてどれくらい時間が経っただろうか。
天高く登っていた太陽はいつのまにか地平線へと沈み始め、夜こそ訪れていないものの周囲は徐々に薄暗くなってきていた。
「……なぁエルピス、その出逢うはずの人とはまだなのか」
「師匠仙桜種とは思えないくらいに気が短いですね、まだ三日しか経ってませんよ」
「そうは言うがなぁ?」
のんびりとしているエルピス達とは対照的に、レネスは法国に近づけば近づくほどに落ち着きをなくしていく。
基本的にレネスは隠し事が下手だ。
本人はいたって冷静に努めて会話にも一才の漏れがない様に気を遣っているのだろうが、隠し事をしているとすぐに顔に出る悪い癖がある。
これは単にレネスが感情を隠すということが下手だからであり、そんなレネスに対してエルピス達が違和感を抱くのは無理もない。
最初の頃は見逃していたセラだったが、ついには気になったのかレネスに対して問いただし始める。
「なぜそんなソワソワしているのかしら。もしかしてあなた昔法国で何かした?」
「一度法国の神と会った事は話しただろう?」
「あーいいや、やっぱりいいです師匠話さないでください」
セラの質問に対してもはや逃れられぬと考えたのか、己の胸の内を明かそうとしたレネスをエルピスは静止する。
先程までは気にする様なそぶりをしていたエルピスが途端にそんな事を言い出して驚くレネスだったが、エルピスからしてみれば話初めからろくな事にならなそうな話を耳に入れておきたくない。
全力で拒否するエルピスだったが、そんなエルピスをみていると何故かレネスも話したくなってくる。
言い渋っていた態度が一変し、途端にレネスは攻勢へと転じた。
「いやいや、そう言わずに話を聞いてくれエルピス。どうせだったら一緒に罪を被ろうじゃないか」
「嫌ですよ! どうせ自業自得でしょ!?」
話もしていないというのにどうせ自業自得だとは酷い言い草だと思いつつ、己のいままでやってきた事を考えるとう強くも反論できないレネス。
なんとかこうにか上手いこと言えないかと思案してみるが、残念なことに事実は一つ限りなので嘘をつかないのだとすればレネスは自分にとって不利な情報を口にするしかなかった。
「まぁ一応話しておくとだな、諸事情があって法国の神とは一度戦闘した事があるんだ。
だからあまり信者の前には顔を出したくはない」
「もしかしてだけどレネスを置いてきた方が良かったんじゃ?」
「いまからでもフェルと入れ替えにいくか」
「ちょ、待ってくれエルピス! 大丈夫だから! 今回は大人しくするから!」
よく冗談を口にするエルピスだが、今回ばかりは本気で口にしていると仙桜種の本能に告げられてレネスは途端に焦り出す。
法国の神がどう思っているかは別として、その神を信じているものが神と敵対した存在に対して良い反応を示すとはとてもではないが思い辛い。
もちろんレネスと法国の神の戦闘はそれなりに昔のことだった様なので目撃者というのももはや寿命を迎えているだろうが、口伝によって仙桜種は見つけ次第即刻敵として扱う様に言い伝えられていてもおかしな話ではなかった。
転移魔法を準備し始めるエルピスに対して本気で抵抗するレネスだったが、そんな二人を止める様にしてセラが小さく言葉を発する。
「エルピス、前から人が来るわよ」
「俺が相手するからセラは周りの警戒をお願い。エラはタイミング見計らって出てきて、師匠は絶対に顔出さないでね」
「仕方がないか」
レネスを送り返す事を一旦中止してまでエルピス達がすれ違う人間にここまでの警戒を見せるのは、魔界から法国へ向かう道筋とはいえすれ違う人間がここまでただの一人も居なかったことにある。
普通ならば商人や魔界出身の者など多少の交通はあるはずの道が、今日に限って何故か丸一日誰ともすれ違わなかった。
エルピスはこれが創生神による操作であると考えているが、だとすればこの道で初めてすれ違う人間は創生神の言っていた人物である可能性が高い。
協力してくれるのであれば良いが、これがこちら側に敵意を持つ存在──例えば先程話に上がったばかりだがレネスに恨みを持つ人間──だった場合は戦闘になる可能性も考慮するべきだろう。
そうして前からやってきたのはフードを被った人物と、十人程度の重装備の兵士達。
前から歩いてくる人物の顔を見ようと目を凝らしたエルピスだったが、フードを深くかぶり体のラインを消す様な服装をしているせいで性別も種族も分かりそうにない。
多少はリスクを背負うべきかと考えたエルピスは、ひっそりと武器を取り出していつでも抜ける様に側に置きながらフードの人物に声をかける。
「こんにちは、どうかされましたか?」
「は、はい! どうかしたっすか!?」
帰ってきた声は女性のもの、扱っている言語からして人間だろう。
馬車の上から見下ろす形になっている為声が届く距離にいてもその姿は分からないが、その身体からは相当な戦闘慣れしている人物特有の気配を感じる。
ただ道ゆく冒険者、というわけではなさそうである。
護衛されている辺りから商人という線も十分に考えられるが、エルピスの持つ収納庫の様な能力を持っていたとしても馬車も使わずに歩いているのは常識的ではない。
止められた女性の方はと言えば驚いたのかあわあわとしており、エルピスはその一挙手一投足に気をつけながら再び言葉を重ねた。
「女性がこんな時間帯に一人でこんなところを歩いていたので、てっきり迷子にでもなっているのかと思いまして」
「一人? 何言ってるっすか、周りにはこんなに兵士の人が沢山……」
「人形ですよねそれ。魔力による操作には見えないので技能を使っているんでしょうか? 珍しい能力ですね」
エルピスが視線を向けた先には武器を構える鎧達がいたが、その中にあるのはなんらかの力の塊であり生きた人間ではない。
いままだ戦ってきた中では機聖種が最も近いだろうか。
魔力的な反応は感じられないのでおそらくは技能やそれに類する能力によるものだろうが、随分と珍しい能力を持つ人間もいたものである。
「初見でこれを見破った人は初めてっすよ。何しに聖都まで?」
聖都とは法国の首都である大都市であり、エルピス達が聖都に向かうと思われているのはいまいる道の先にある街が聖都だからだろう。
初見で兵士達の秘密を見破られ事に驚きの雰囲気を漂わせつつ、フードの人物はエルピスへと投げかけた質問に対してエルピスは素直に答える。
「呼び出されたのと怪我人の回復が目的ですね。わりと一般的な回答になってしまってすいません」
「それに関しては仕方ないっす、あんな街それくらいじゃないと行かないっすから」
なんとも含みのある言い方に一瞬怪訝そうな表情を浮かべてしまうエルピスだが、すぐにそれを隠して手を一つ叩く。
「そうだ! もしよかったら人助けだと思って道案内をしていただけませんか?
聖都までの道のりも含めてここら辺の地形には疎いもので、もちろんお礼はさせていただきます」
「あー……いや残念っす、ちょっと用事があって自分法国からでないといけないんっす」
「そうですか……いえ、それでしたら引き留めてしまい申し訳ありません」
なるべく自然にしたつもりではあるが、初対面の人間に対して出来る対応はこれくらいが限界であろう。
無理に引き留めることもなく送り出したエルピスに対して、レネスが本当に良かったのだろうかと疑問を投げかける。
「いいのかエルピス、さっきの女性が探していた人物ではないのか?」
「どっちかわからないけど無理に引き留めてもついてきてくれなかっただろうから、正直どうにもならないんじゃないかな。
もう少しこの国にいるつもりの人だったらどうにでもなったかもしれないですけど」
どの様な理由があって法国から離れたいのか定かではないが、夜に入ろうという時間帯にも足を止めることなく進むほどなのだから相当にこの国から出なければならない用事があるのだろう。
先程の人物であればおそらく野盗に襲われたところで問題なく対処できるだろうし、だとすればこれ以上エルピス達が何か彼女に関われる場所というのはない。
もしかすればここで出会った事により後々どこかでフラグが立つ可能性も考えられるし、無理に追いかける必要はないだろうというのがエルピスの最終的な判断だった。
「ふむ、そう言うものなのか。だが彼女は結構重要な人物だと思うぞ?」
「知ってるんですか? 師匠さっきの人のこと」
「知ってるも何もあれは法国の第一皇女──」
レネスが皇女の名前を口にしようとしたその時。
魔力ではない何かに吹き飛ばされて馬車が数メートルほど空に飛ぶ。
まるで巨大な物体にぶつけられた様にして吹き飛ぶ馬車よりも先に回避行動を取っていたエルピス達は、背後で轟音を立てながら跡形もなく砕け散った馬車を横目に地面へと降り立った。
突然の攻撃に対して驚きはしたものの全員無傷で避け切ることができたのは、何も手加減してもらったわけではなく単純に乗っていたメンバーの戦闘能力が故である。
明らかな殺意を持って為された行動に多少の危機感を覚えつつ、エルピスは腰に刀を括り付けてこの状況を作り出した人物に非難の声を上げた。
「人の馬車ぶっ壊すなんて随分なことしますね!」
「仕方がないっすよ、自分だってこんな事はしたくなかったっす。怪我だけで済ませるんでなるべく動かないでほしいっす」
「ちょ、急に一体なんなんですか!」
怪我だけで済ましたいのであれば先程の攻撃は随分とオーバーなものだった様に思える。
そんなエルピスの思考をよそに、第一皇女らしい人物が操る兵士達はエルピスに向けて剣を振るう。
レネスやその背後にいるエラ、セラを狙わないのは位置的な問題ではなく脅威と見做されていないか女性を傷つけるのに抵抗があるのか。
どちらにせよ十人がかりで切り付けられたエルピスは、壊して関係が悪化するのを嫌い操られる鎧からの攻撃を障壁で受け止める。
「聖都に向かう人に見られるとちょっと面倒なことになるんっすよ、だから自分が法国から抜けるまでは眠ってもらわないと困るっす」
「そう言われてもこっちも大事な用事があって向かうから邪魔されると困るんですよ。見なかったことにする、じゃあ無理なんですよね?」
「もちろんっす。隠密作戦は失敗したっすけど目撃者が0人ならおんなじようなもんっす」
なんという暴論だ。
隠密とはなんなのかと問いただしたくなるところだが、敵の攻撃が止むことはなく会話はどうにも難しそうである。
「じゃあ仕方がないですね」
なるべく穏便に済ませたかったが戦闘になってしまったのでは仕方がない。
戦闘開始からかなりの時間が経ってようやくそう割り切ったエルピスがほんの一瞬刀を抜くと、操られた鎧達は途端に糸が切れた様にその動きを止める。
レネスの動体視力を持ってしてギリギリ視認可能なその一撃は、あえて力任せにした横に払う様にした一撃であり、兵士達の体は腰の位置で綺麗に分断されて上体が音を立てながら地面に落ちる。
人間であれば確実に致命傷であるそれを見て、悲鳴を上げたのはもちろんそれを操っていた第一皇女だった。
「なっ! なんっすかその動き!?」
「自己紹介が遅れました。英雄と龍人の息子であり最高位冒険者、龍帝のエルピス・アルヘオです。まだやりますか?」
「も、申し訳なかったっす!」
戦況が不利であると見れば先程までの毅然とした態度はどこへやら、五体を地面に投げ出してこれでもかと頭を地面に擦り付けているその姿はどこからどう見ても被害者である。
こちら側が攻撃されたのではないのかと言いたくなるエルピスだったが、そんなエルピスの呆れた雰囲気にこれでは足りなかったのかと胡麻を擦り始める始末。
「いやぁエルピスさんも人が悪いっす。もっと早く言ってくれたら武力行使なんてバカな真似しなかったっす」
「名前を知られて困るのはお互い様ですね、失礼ですがお名前をお伺いしても?」
「ヴァイスハイト・ケファ・アリランド、ハイトちゃんって呼んでもらえると光栄っす!」
フードを外して素顔を晒したハイトは慣れた空気でポーズを取りながら自己紹介を終える。
綺麗な黒い長髪を三つ編みにし、顔の半分を覆わんばかりの巨大な丸眼鏡の先には綺麗な黒い瞳が写っている。
一目見た時の率直な感想は学級委員長、風紀委員でも別に構わないがどちらにせよなんらかの趣味が影響していそうな服装をしていることは間違いない。
その整った顔に日本人的な感性として受け入れやすいその容姿は、もしエルピスがエラ達と出会うことがなければもしやと思うには十分である。
そんなエルピスの気配を感じ取ったのかセラとレネスから洒落にならない一撃が飛び、頭と腰を押さえながらエルピスはハイトへと言葉を返す。
「よろしくお願いしますハイトさん。それで失礼ですがここであったのも何かの縁、法国から脱走しようとしている理由をお伺いしても?」
「脱走じゃないって言いたいっすけど…まぁそうっすね。聞いちゃったらもう関係ないは無しっすよ?」
「もちろんです。セラ、悪いけど周辺の警戒お願いね」
関係性を持ってくれるのであれば元よりそれを目的として来たのだから願ったり叶ったり。
エルピスの呼びかけに対して魔法の構築を始めたセラを横目に、レネスが自分にも出来るのにと歯噛みしている。
「私がやろうかエルピス?」
「師匠はそのまま顔隠してその場から一歩たりともう動かないで」
「エラちゃん、助けてくれぇ」
「そんな情けない声出してないでいまいう事を聞いていればそのうち自由に動かせてもらえますよ」
障壁を貼るのであれば正直どちらでも良いのだが、レネスが法国にいたという事自体をなるべく隠したいエルピスはセラにお願いしたのだ。
セラもそれを分かっているからこそ手を止める事なく作業を進めると、いくつかの魔法的な力が発動され周囲は完全にセラの認知下におかれる。
「すいません、それで話とは?」
「いま法皇、つまり自分の父上がぽっくり逝きかけてる話は知ってるっすか?」
「耳にはしていますよもちろん。私が呼び出されたのもその父上にですから」
法王が危篤状態に入ってからかなりの年月が経過しており、もはやその状況は大きな街にいる人間であれば誰でも知っている様な状況だ。
事実確認をする様に問いかけたハイトに対してエルピスが知っていると返すと、ハイトは興味深いことを口にした。
「それがおかしいんっすよ、法皇はいま重度の病に犯されて常に法国の中でもとびきりの回復術師が数人単位でつきっきりじゃないとまともに喋ることもできない状況っす。
ペンを使って字を書くなんて──ましてやエルピスさんに会って話すなんてとてもじゃないけどできないっす」
回復魔法を使える術師が数人単位でつきっきりにならなければいけない状況と言われ、エルピスの頭の中に最初に浮かんだのは森妖種の国で瀕死になった自分の事だ。
会話どころか意識すらなかったあの時のことを思えば、確かに法王が似た様な状況だとすると少々違和感は残る。
「誰かに代筆を頼んだ可能性は?」
「手紙を見せてもらってもいいっすか?」
「どうぞ」
収納庫から取り出した手紙をエルピスが手渡すと、ハイトは上から下まで吟味する様に眺める。
「神印が押されてる時点でその可能性はないっす。これが押してある以上書いたのは法皇の血筋の人間だけっす、神様とそう言う契約なのでこれに関しては絶対っす」
「そうなってくると私を呼び出しているのは法皇、つまりハイトさんのお父上ではないと?」
「そうっす。いま協会では法皇の代わりに長男であるゲリシンが指揮を取ってるっすけど、この字はあいつの字っす。
権力者としては最低最悪の人間っす。あのまま法都に居たら何されてたかわかったもんじゃないっす」
心底嫌そうな顔をしながらそう言ったハイト。
エルピスの記憶が確かであればゲリシンとは次期法皇とも呼ばれ、幼い頃は各国を渡り歩いていた人物である。
性格は比較的温厚、というのは世間一般からの評価であり、かつてセラから渡された資料には狡猾で油断のならない人物であると記されていた。
法皇が倒れてからは実質的な最高権力者でもあるらしかったが、名前を出されてもエルピスの中では顔が浮かび上がってこなかった。
「そう言えばエルピス、世界会議の場所にいた男ではないか?」
「ああ、あいつか。嫌なやつっぽい顔はしてたなそういえば」
「ほんっとやなやつっすよ、そう言うわけで私はこのまま法国を出たいと思うっす」
「出てから当てはあるんですか?」
「ないっす! ただ世界中の教会を回ってゲリシンに対抗する勢力を作る予定っす」
対抗する勢力と言えば聞こえはいいが、ようはクーデターを引き起こすために人員を集めるという事だろう。
法国という国は四大国の一つだけあって広大で、だからこそ様々な考えが散乱しており確かに現体制に不満を持つものも多くいる事だろう。
だが法皇から目をつけられないように気をつけつつ反撃の準備を始めようと思えば、それこそ数十年単位の大きな作戦になることは避けられない。
平時ならばそれでも問題はないだろうが、しかし残念ながら人類種に残されている時間というのはそう長くないのだ。
「残念ですけどそれは無理ですね」
「な、なんでっすか!?」
「あと三年で戦争が始まるので。世界会議で議論もしましたし、知っているものかとばかり」
戦争についての詳しい話は世界会議の場において必要だと思えないほどの時間をかけて行われたのだ。
それなりに立場のある人物であればある程度は会議の内容を知っていておかしくないし、法国の第一皇女ともなれば知っていなければおかしい程である。
だがハイトはエルピスの言葉に対して恥ずかしそうに頭を掻きながら自分の言葉に説明を入れる。
「いやぁ法国は基本的にそう言う戦争系の話は国内じゃ全然しないっすから、忘れてました。そうなってくると困ったっすね」
計画の頼りとして最も大切だったのは時間であり、それを失ってしまったハイトはどうしたものかと頭を悩ませる。
状況は積みというわけではない、ただ時間が無くなっただけで他の要素を考えればいいだけだからだ。
だがそうしたところで最善の一手が潰れた痛みが薄れるわけではない。
なんとか次の一手を探そうと頭を悩ませるハイトに対して、さながら神の啓示の如くエルピスは囁く。
「そういえば第二皇女と第三皇女の居場所は知っていますか? 知り合いなのでまだ法国に居るなら助けてあげたいんですが」
「ペトロとフィーユを知ってるっすか!? 自分も二人の居場所が分からなくて困ってたっす。去年くらいから情報封鎖されて外の事は何も分かんないんで困ってたんす」
自体は一変し、可能性によっては想定していた最善のものよりもより良い結果を得られそうだとハイトは笑みを浮かべる。
昨今の情勢にこそ詳しくはないものの、ハイトは法国の神からエルピスの強さについて既に聞き及んでいた。
時代が時代であれば戦神にすらなれる可能性があると言われたエルピス、それを戦力として扱えるのであればもはや割り切っていた姉妹の救出という可能性にも手が届く。
「アウローラが居れば第二皇女のペトロさんの方は何とかわかったかも知れないけれど……確か彼女年齢的に既に学園は卒業してるよね?」
「私が見た書類だと帝国に行ってたはず。エルは帝国でそれっぽい人見た記憶ある?」
「ないけどそうなってくるとちょっと話が噛み合ってきたかも知れないかな」
ハイトが頭の中で姉妹救出の算段を立てる中、また別の視点からエルピスも聖都で何が起きているのか予想を立てていた。
今回自分を聖都に呼びつけたのはゲリシンで間違いなく、創生神が目の前の彼女と引き合わせたことからも揉める事になるだろうとエルピスは考えている。
創生神が何を企んでいるのかは知らないが、おそらくペトロも帝国の第一皇女と共に法国内部に運ばれただろうと予想を立てると、ゆっくりとだが確実に今回の件に必要な人間が集められているのを感じられた。
だとすれば第二皇女であるペトロだけではなくおそらくは──
「フィーユは多分まだ王国に居ると思うっすけど…」
「これだけ計画的に作戦を組んでるのなら、おそらく居ないでしょうね。既に手中に抑えられてると考えた方が自然です」
「そうっすね……」
最初は見捨てるつもりであっても、助けられる可能性が生まれたので有ればそこに欲を生み出してしまうのが人という生き物である。
相手が欲しがるものを自分が持っている時、これ以上簡単な交渉の状況はないだろう。
「ハイトさん、改めてで申し訳ありませんが提案させてください。聖都を案内してもらえませんか? 代わりに二人の皇女の安全確保はこちらで行います、それにクーデターのお手伝いも」
「本当っすか!?」
「法国の神には用事があるので、その前に障害があるのなら退けなければいけませんし、知り合いは助けたいですから」
「助かるっす! そう言う事なら話は早いっす!」
速い話が互いの利害関係の一致である。
エルピスとしてはハイトを同行させる事によって得られるなんらかのメリットを享受するため、ハイトとしてはエルピスという強い武器を手にする事でクーデターを成功させるため。
お互いの利害が一致した状況で結ばれた契約というのは、他の契約に比べて強固なものである。
懐からいくつかの紙を取り出したハイトは、それを無造作に地面の上へと並べ始める。
「それは?」
「出来るだけ集めた情報っす! とりあえず都市の位置から──」
思い立てば吉日、なんて言葉をどこかの誰かが口にしていたのを思い出す。
ハイトが取り出した情報の量は尋常なものではなく、エルピスは沈んでいく太陽とハイトの顔を見合わせながら今日は野宿することを覚悟するのだった。
日数としてはそれほど経過していないが、エルピスの作り出した魔法の馬はとてつもない速度で地平線を走り続けていた。
魔界には基本的に整備された道というのは存在しない。
まず街同士の交流がなく、次にあったとしても短距離間の物々交換が主流であるため道を作る必要性がないのだ。
その為に魔界は多種多様な種族が存在するが、魔界で暮らしている種族全てを知っている人間は殆どいない。
交渉中しか外に出てこない種族や、己の持つ領域から一切出てこない種族などは途方もない年月を生きる始祖種であるフェルですら知らないもの達もいる。
余談はこれくらいにするとして、どちらにせよ信じられないほどに広い魔界という空間を二日で駆け抜けたのが午前のこと。
それからいくつか魔界に入る際の難所を超えたエルピスは法国へと向かう街道を走らせていた。
「こうして馬車での移動は久しぶりですね」
心地よい風に身を包まれながら気持ちよさに目を細めてそんな事を口にしたのは、妖精神の力を使っているからか緑の髪色になったエラである。
権能に侵食された形でエラの髪色は変化したのだが、それは森妖種の特有な性質として付近の魔力に応じた色に変化するという特性を持つからである。
一般的に緑や金色という成分を森妖種が持つのは自然や太陽光が持つ魔力に影響されるからであり、妖精神の特性に常時権能を使用中であるエラが侵食されるのは仕方のないことであるとも言えた。
感情に浸るエラの言葉に対して疑問を投げかけるのは荷台で落ち着きのないレネスである。
「移動は楽だがなぜ走っていかないんだ? そちらの方が早く着くだろうに」
「今回に関してはゆっくりと行った方が良いんですよ、アウローラを助けたいならそうしないと行けないんです」
「それは影から聞いたのか?」
「そうですよ」
影から聞いたのかと聞いてきたレネスに対して、エルピスは振り返ることなく首を縦に振る。
そもそもからして二日前馬車で移動しようとした時にエラに説明する時ついでに説明しなかったのが悪いのだが、自分だって創生神に言われていなければ急いで法国に向かっていると言いたいエルピスであった。
責任感を感じ、その責任感に体を潰されそうになっていたエラがいまこうして風に身を任せられているのは、単にエルピスがエラに対して自分を信じる様に懇切丁寧にお願いした結果に過ぎない。
「とりあえず目標は法国の首都だけれど、法皇とあったらその後は?」
「もちろん法国にいる神様とやらを探しにいくよ。首に縄かけてでもアウローラのところまで連れていかないと」
正直な話法国の神がどうやってアウローラを助けるのか、その方法すらエルピスは知り得ないがそれでいいのだと信じてセラの言葉に力強く言葉を返す。
もちろん二つ目の手段を用意した方が良いのだろうが、現状アウローラの傷の原因が破壊神の権能によるものらしいという程度の知識しかない以上、最も頼りになるのはそれと敵対していた創生神の言葉である。
それでなくともエルピスは自分の権能に押しつぶされない為にも法国の神に合う必要があるのだ、どちらにせよという話でもある。
「確か法国の神とは昔会ったことがあるがなかなか面白い人だった、事情を説明すればついて来てくれると思うぞ」
「師匠が昔って言うくらいだから相当昔の話なんでしょうね」
「レディの年齢に関しての話はあまりするべきじゃないぞエルピス」
牙を剥き出しにして威嚇するレネスに対して、エルピスは少し困った様な顔をしながら頭を下げる。
感情を自覚していなかった頃のレネスの威嚇も冷徹な怖さがあったが、いまのレネスの威嚇は怒りの感情も相まって命の危険を感じずにはいられない。
「怖いんで威嚇しないでくださいよ悪かったですって、ところでニルはまだどこか行ってるの?」
とっとと話を切り替えようとエルピスが出した話題はこの場にいないニルの事。
自分が眠っている間別の地域へと移動していたのはセラから聞いて知っていたが、いつもならば他の地域に行く際にはちょうどよく帰ってきていたところだ。
だが魔界から出て少し経ったというのにいまだにニルがやってくる様な気配はなく、エルピスはどうしたのかとセラに問う。
「あの子も最近は本当に大忙しだから。でも昨日は一回帰ってきてたと思うんだけど」
「言われてみれば寝てる最中に部屋に誰かが来たような気はする」
「大方忍び込んだんでしょうね、最近あの子が何をしているかは私も知らないけれどきっと必要なことなのよ」
必要な事だと言われればそれ以上にエルピスが言及することはない。
魔界にいるアルヘオ家に関係する人間に対して、ニルがもし帰ってきたら自分達は法国に向かったと伝える様頼んである。
入れ違えになっている可能性も考慮すれば、法国についた頃には会えるだろうというのがエルピスの大体の予想である。
会話も一旦終わり少しの間なんとも言えない時間が流れ、ふと思い出したようにエラが口を開いた。
「そういえばずっと気になってたんだけどセラとニルって姉妹なの?」
「正確に言うと姉妹ではないわね。生まれも違うし同じ親に育てられたわけでもない。
ただ司るものの関係で私とニルは同じような性質を持つから、分かりやすく姉妹を名乗っているだけよ」
詳しい話はエルピスも知らないが、ニルは創生神側にも破壊神側にも付いていなかった野良の神。
それに対してセラは創生神の身近に仕えていた創生神側のNo.2であり、関係性といえばそれだけに終わる様なものである。
ただ彼女達は両者共に愛をその神としての性質として保持しており、同系統の神として分かりやすく順位を決めた結果がいまというわけである。
ちなみに愛の神はもちろんセラやニル以外にも多数存在し、天界でセラが抜けた穴を必死に埋めているのはそんな愛の神達であったりするのだ。
「ちなみにどっちがお姉さんなの?」
「強い方が姉よ。いまのところ私はニルに一度も負けていないから、ずっと姉のままね」
「不思議な姉妹関係もあるもんだね」
実際のところ勝率としてはそれほどセラとニルの戦闘は差をつけられているわけではない。
勝利回数的にセラの方が上位という扱いにはなっているが、ニルがセラに勝利するということもないわけではないのだ。
そんな話をしながらエルピス達が法国へと向かって馬車を進めてどれくらい時間が経っただろうか。
天高く登っていた太陽はいつのまにか地平線へと沈み始め、夜こそ訪れていないものの周囲は徐々に薄暗くなってきていた。
「……なぁエルピス、その出逢うはずの人とはまだなのか」
「師匠仙桜種とは思えないくらいに気が短いですね、まだ三日しか経ってませんよ」
「そうは言うがなぁ?」
のんびりとしているエルピス達とは対照的に、レネスは法国に近づけば近づくほどに落ち着きをなくしていく。
基本的にレネスは隠し事が下手だ。
本人はいたって冷静に努めて会話にも一才の漏れがない様に気を遣っているのだろうが、隠し事をしているとすぐに顔に出る悪い癖がある。
これは単にレネスが感情を隠すということが下手だからであり、そんなレネスに対してエルピス達が違和感を抱くのは無理もない。
最初の頃は見逃していたセラだったが、ついには気になったのかレネスに対して問いただし始める。
「なぜそんなソワソワしているのかしら。もしかしてあなた昔法国で何かした?」
「一度法国の神と会った事は話しただろう?」
「あーいいや、やっぱりいいです師匠話さないでください」
セラの質問に対してもはや逃れられぬと考えたのか、己の胸の内を明かそうとしたレネスをエルピスは静止する。
先程までは気にする様なそぶりをしていたエルピスが途端にそんな事を言い出して驚くレネスだったが、エルピスからしてみれば話初めからろくな事にならなそうな話を耳に入れておきたくない。
全力で拒否するエルピスだったが、そんなエルピスをみていると何故かレネスも話したくなってくる。
言い渋っていた態度が一変し、途端にレネスは攻勢へと転じた。
「いやいや、そう言わずに話を聞いてくれエルピス。どうせだったら一緒に罪を被ろうじゃないか」
「嫌ですよ! どうせ自業自得でしょ!?」
話もしていないというのにどうせ自業自得だとは酷い言い草だと思いつつ、己のいままでやってきた事を考えるとう強くも反論できないレネス。
なんとかこうにか上手いこと言えないかと思案してみるが、残念なことに事実は一つ限りなので嘘をつかないのだとすればレネスは自分にとって不利な情報を口にするしかなかった。
「まぁ一応話しておくとだな、諸事情があって法国の神とは一度戦闘した事があるんだ。
だからあまり信者の前には顔を出したくはない」
「もしかしてだけどレネスを置いてきた方が良かったんじゃ?」
「いまからでもフェルと入れ替えにいくか」
「ちょ、待ってくれエルピス! 大丈夫だから! 今回は大人しくするから!」
よく冗談を口にするエルピスだが、今回ばかりは本気で口にしていると仙桜種の本能に告げられてレネスは途端に焦り出す。
法国の神がどう思っているかは別として、その神を信じているものが神と敵対した存在に対して良い反応を示すとはとてもではないが思い辛い。
もちろんレネスと法国の神の戦闘はそれなりに昔のことだった様なので目撃者というのももはや寿命を迎えているだろうが、口伝によって仙桜種は見つけ次第即刻敵として扱う様に言い伝えられていてもおかしな話ではなかった。
転移魔法を準備し始めるエルピスに対して本気で抵抗するレネスだったが、そんな二人を止める様にしてセラが小さく言葉を発する。
「エルピス、前から人が来るわよ」
「俺が相手するからセラは周りの警戒をお願い。エラはタイミング見計らって出てきて、師匠は絶対に顔出さないでね」
「仕方がないか」
レネスを送り返す事を一旦中止してまでエルピス達がすれ違う人間にここまでの警戒を見せるのは、魔界から法国へ向かう道筋とはいえすれ違う人間がここまでただの一人も居なかったことにある。
普通ならば商人や魔界出身の者など多少の交通はあるはずの道が、今日に限って何故か丸一日誰ともすれ違わなかった。
エルピスはこれが創生神による操作であると考えているが、だとすればこの道で初めてすれ違う人間は創生神の言っていた人物である可能性が高い。
協力してくれるのであれば良いが、これがこちら側に敵意を持つ存在──例えば先程話に上がったばかりだがレネスに恨みを持つ人間──だった場合は戦闘になる可能性も考慮するべきだろう。
そうして前からやってきたのはフードを被った人物と、十人程度の重装備の兵士達。
前から歩いてくる人物の顔を見ようと目を凝らしたエルピスだったが、フードを深くかぶり体のラインを消す様な服装をしているせいで性別も種族も分かりそうにない。
多少はリスクを背負うべきかと考えたエルピスは、ひっそりと武器を取り出していつでも抜ける様に側に置きながらフードの人物に声をかける。
「こんにちは、どうかされましたか?」
「は、はい! どうかしたっすか!?」
帰ってきた声は女性のもの、扱っている言語からして人間だろう。
馬車の上から見下ろす形になっている為声が届く距離にいてもその姿は分からないが、その身体からは相当な戦闘慣れしている人物特有の気配を感じる。
ただ道ゆく冒険者、というわけではなさそうである。
護衛されている辺りから商人という線も十分に考えられるが、エルピスの持つ収納庫の様な能力を持っていたとしても馬車も使わずに歩いているのは常識的ではない。
止められた女性の方はと言えば驚いたのかあわあわとしており、エルピスはその一挙手一投足に気をつけながら再び言葉を重ねた。
「女性がこんな時間帯に一人でこんなところを歩いていたので、てっきり迷子にでもなっているのかと思いまして」
「一人? 何言ってるっすか、周りにはこんなに兵士の人が沢山……」
「人形ですよねそれ。魔力による操作には見えないので技能を使っているんでしょうか? 珍しい能力ですね」
エルピスが視線を向けた先には武器を構える鎧達がいたが、その中にあるのはなんらかの力の塊であり生きた人間ではない。
いままだ戦ってきた中では機聖種が最も近いだろうか。
魔力的な反応は感じられないのでおそらくは技能やそれに類する能力によるものだろうが、随分と珍しい能力を持つ人間もいたものである。
「初見でこれを見破った人は初めてっすよ。何しに聖都まで?」
聖都とは法国の首都である大都市であり、エルピス達が聖都に向かうと思われているのはいまいる道の先にある街が聖都だからだろう。
初見で兵士達の秘密を見破られ事に驚きの雰囲気を漂わせつつ、フードの人物はエルピスへと投げかけた質問に対してエルピスは素直に答える。
「呼び出されたのと怪我人の回復が目的ですね。わりと一般的な回答になってしまってすいません」
「それに関しては仕方ないっす、あんな街それくらいじゃないと行かないっすから」
なんとも含みのある言い方に一瞬怪訝そうな表情を浮かべてしまうエルピスだが、すぐにそれを隠して手を一つ叩く。
「そうだ! もしよかったら人助けだと思って道案内をしていただけませんか?
聖都までの道のりも含めてここら辺の地形には疎いもので、もちろんお礼はさせていただきます」
「あー……いや残念っす、ちょっと用事があって自分法国からでないといけないんっす」
「そうですか……いえ、それでしたら引き留めてしまい申し訳ありません」
なるべく自然にしたつもりではあるが、初対面の人間に対して出来る対応はこれくらいが限界であろう。
無理に引き留めることもなく送り出したエルピスに対して、レネスが本当に良かったのだろうかと疑問を投げかける。
「いいのかエルピス、さっきの女性が探していた人物ではないのか?」
「どっちかわからないけど無理に引き留めてもついてきてくれなかっただろうから、正直どうにもならないんじゃないかな。
もう少しこの国にいるつもりの人だったらどうにでもなったかもしれないですけど」
どの様な理由があって法国から離れたいのか定かではないが、夜に入ろうという時間帯にも足を止めることなく進むほどなのだから相当にこの国から出なければならない用事があるのだろう。
先程の人物であればおそらく野盗に襲われたところで問題なく対処できるだろうし、だとすればこれ以上エルピス達が何か彼女に関われる場所というのはない。
もしかすればここで出会った事により後々どこかでフラグが立つ可能性も考えられるし、無理に追いかける必要はないだろうというのがエルピスの最終的な判断だった。
「ふむ、そう言うものなのか。だが彼女は結構重要な人物だと思うぞ?」
「知ってるんですか? 師匠さっきの人のこと」
「知ってるも何もあれは法国の第一皇女──」
レネスが皇女の名前を口にしようとしたその時。
魔力ではない何かに吹き飛ばされて馬車が数メートルほど空に飛ぶ。
まるで巨大な物体にぶつけられた様にして吹き飛ぶ馬車よりも先に回避行動を取っていたエルピス達は、背後で轟音を立てながら跡形もなく砕け散った馬車を横目に地面へと降り立った。
突然の攻撃に対して驚きはしたものの全員無傷で避け切ることができたのは、何も手加減してもらったわけではなく単純に乗っていたメンバーの戦闘能力が故である。
明らかな殺意を持って為された行動に多少の危機感を覚えつつ、エルピスは腰に刀を括り付けてこの状況を作り出した人物に非難の声を上げた。
「人の馬車ぶっ壊すなんて随分なことしますね!」
「仕方がないっすよ、自分だってこんな事はしたくなかったっす。怪我だけで済ませるんでなるべく動かないでほしいっす」
「ちょ、急に一体なんなんですか!」
怪我だけで済ましたいのであれば先程の攻撃は随分とオーバーなものだった様に思える。
そんなエルピスの思考をよそに、第一皇女らしい人物が操る兵士達はエルピスに向けて剣を振るう。
レネスやその背後にいるエラ、セラを狙わないのは位置的な問題ではなく脅威と見做されていないか女性を傷つけるのに抵抗があるのか。
どちらにせよ十人がかりで切り付けられたエルピスは、壊して関係が悪化するのを嫌い操られる鎧からの攻撃を障壁で受け止める。
「聖都に向かう人に見られるとちょっと面倒なことになるんっすよ、だから自分が法国から抜けるまでは眠ってもらわないと困るっす」
「そう言われてもこっちも大事な用事があって向かうから邪魔されると困るんですよ。見なかったことにする、じゃあ無理なんですよね?」
「もちろんっす。隠密作戦は失敗したっすけど目撃者が0人ならおんなじようなもんっす」
なんという暴論だ。
隠密とはなんなのかと問いただしたくなるところだが、敵の攻撃が止むことはなく会話はどうにも難しそうである。
「じゃあ仕方がないですね」
なるべく穏便に済ませたかったが戦闘になってしまったのでは仕方がない。
戦闘開始からかなりの時間が経ってようやくそう割り切ったエルピスがほんの一瞬刀を抜くと、操られた鎧達は途端に糸が切れた様にその動きを止める。
レネスの動体視力を持ってしてギリギリ視認可能なその一撃は、あえて力任せにした横に払う様にした一撃であり、兵士達の体は腰の位置で綺麗に分断されて上体が音を立てながら地面に落ちる。
人間であれば確実に致命傷であるそれを見て、悲鳴を上げたのはもちろんそれを操っていた第一皇女だった。
「なっ! なんっすかその動き!?」
「自己紹介が遅れました。英雄と龍人の息子であり最高位冒険者、龍帝のエルピス・アルヘオです。まだやりますか?」
「も、申し訳なかったっす!」
戦況が不利であると見れば先程までの毅然とした態度はどこへやら、五体を地面に投げ出してこれでもかと頭を地面に擦り付けているその姿はどこからどう見ても被害者である。
こちら側が攻撃されたのではないのかと言いたくなるエルピスだったが、そんなエルピスの呆れた雰囲気にこれでは足りなかったのかと胡麻を擦り始める始末。
「いやぁエルピスさんも人が悪いっす。もっと早く言ってくれたら武力行使なんてバカな真似しなかったっす」
「名前を知られて困るのはお互い様ですね、失礼ですがお名前をお伺いしても?」
「ヴァイスハイト・ケファ・アリランド、ハイトちゃんって呼んでもらえると光栄っす!」
フードを外して素顔を晒したハイトは慣れた空気でポーズを取りながら自己紹介を終える。
綺麗な黒い長髪を三つ編みにし、顔の半分を覆わんばかりの巨大な丸眼鏡の先には綺麗な黒い瞳が写っている。
一目見た時の率直な感想は学級委員長、風紀委員でも別に構わないがどちらにせよなんらかの趣味が影響していそうな服装をしていることは間違いない。
その整った顔に日本人的な感性として受け入れやすいその容姿は、もしエルピスがエラ達と出会うことがなければもしやと思うには十分である。
そんなエルピスの気配を感じ取ったのかセラとレネスから洒落にならない一撃が飛び、頭と腰を押さえながらエルピスはハイトへと言葉を返す。
「よろしくお願いしますハイトさん。それで失礼ですがここであったのも何かの縁、法国から脱走しようとしている理由をお伺いしても?」
「脱走じゃないって言いたいっすけど…まぁそうっすね。聞いちゃったらもう関係ないは無しっすよ?」
「もちろんです。セラ、悪いけど周辺の警戒お願いね」
関係性を持ってくれるのであれば元よりそれを目的として来たのだから願ったり叶ったり。
エルピスの呼びかけに対して魔法の構築を始めたセラを横目に、レネスが自分にも出来るのにと歯噛みしている。
「私がやろうかエルピス?」
「師匠はそのまま顔隠してその場から一歩たりともう動かないで」
「エラちゃん、助けてくれぇ」
「そんな情けない声出してないでいまいう事を聞いていればそのうち自由に動かせてもらえますよ」
障壁を貼るのであれば正直どちらでも良いのだが、レネスが法国にいたという事自体をなるべく隠したいエルピスはセラにお願いしたのだ。
セラもそれを分かっているからこそ手を止める事なく作業を進めると、いくつかの魔法的な力が発動され周囲は完全にセラの認知下におかれる。
「すいません、それで話とは?」
「いま法皇、つまり自分の父上がぽっくり逝きかけてる話は知ってるっすか?」
「耳にはしていますよもちろん。私が呼び出されたのもその父上にですから」
法王が危篤状態に入ってからかなりの年月が経過しており、もはやその状況は大きな街にいる人間であれば誰でも知っている様な状況だ。
事実確認をする様に問いかけたハイトに対してエルピスが知っていると返すと、ハイトは興味深いことを口にした。
「それがおかしいんっすよ、法皇はいま重度の病に犯されて常に法国の中でもとびきりの回復術師が数人単位でつきっきりじゃないとまともに喋ることもできない状況っす。
ペンを使って字を書くなんて──ましてやエルピスさんに会って話すなんてとてもじゃないけどできないっす」
回復魔法を使える術師が数人単位でつきっきりにならなければいけない状況と言われ、エルピスの頭の中に最初に浮かんだのは森妖種の国で瀕死になった自分の事だ。
会話どころか意識すらなかったあの時のことを思えば、確かに法王が似た様な状況だとすると少々違和感は残る。
「誰かに代筆を頼んだ可能性は?」
「手紙を見せてもらってもいいっすか?」
「どうぞ」
収納庫から取り出した手紙をエルピスが手渡すと、ハイトは上から下まで吟味する様に眺める。
「神印が押されてる時点でその可能性はないっす。これが押してある以上書いたのは法皇の血筋の人間だけっす、神様とそう言う契約なのでこれに関しては絶対っす」
「そうなってくると私を呼び出しているのは法皇、つまりハイトさんのお父上ではないと?」
「そうっす。いま協会では法皇の代わりに長男であるゲリシンが指揮を取ってるっすけど、この字はあいつの字っす。
権力者としては最低最悪の人間っす。あのまま法都に居たら何されてたかわかったもんじゃないっす」
心底嫌そうな顔をしながらそう言ったハイト。
エルピスの記憶が確かであればゲリシンとは次期法皇とも呼ばれ、幼い頃は各国を渡り歩いていた人物である。
性格は比較的温厚、というのは世間一般からの評価であり、かつてセラから渡された資料には狡猾で油断のならない人物であると記されていた。
法皇が倒れてからは実質的な最高権力者でもあるらしかったが、名前を出されてもエルピスの中では顔が浮かび上がってこなかった。
「そう言えばエルピス、世界会議の場所にいた男ではないか?」
「ああ、あいつか。嫌なやつっぽい顔はしてたなそういえば」
「ほんっとやなやつっすよ、そう言うわけで私はこのまま法国を出たいと思うっす」
「出てから当てはあるんですか?」
「ないっす! ただ世界中の教会を回ってゲリシンに対抗する勢力を作る予定っす」
対抗する勢力と言えば聞こえはいいが、ようはクーデターを引き起こすために人員を集めるという事だろう。
法国という国は四大国の一つだけあって広大で、だからこそ様々な考えが散乱しており確かに現体制に不満を持つものも多くいる事だろう。
だが法皇から目をつけられないように気をつけつつ反撃の準備を始めようと思えば、それこそ数十年単位の大きな作戦になることは避けられない。
平時ならばそれでも問題はないだろうが、しかし残念ながら人類種に残されている時間というのはそう長くないのだ。
「残念ですけどそれは無理ですね」
「な、なんでっすか!?」
「あと三年で戦争が始まるので。世界会議で議論もしましたし、知っているものかとばかり」
戦争についての詳しい話は世界会議の場において必要だと思えないほどの時間をかけて行われたのだ。
それなりに立場のある人物であればある程度は会議の内容を知っていておかしくないし、法国の第一皇女ともなれば知っていなければおかしい程である。
だがハイトはエルピスの言葉に対して恥ずかしそうに頭を掻きながら自分の言葉に説明を入れる。
「いやぁ法国は基本的にそう言う戦争系の話は国内じゃ全然しないっすから、忘れてました。そうなってくると困ったっすね」
計画の頼りとして最も大切だったのは時間であり、それを失ってしまったハイトはどうしたものかと頭を悩ませる。
状況は積みというわけではない、ただ時間が無くなっただけで他の要素を考えればいいだけだからだ。
だがそうしたところで最善の一手が潰れた痛みが薄れるわけではない。
なんとか次の一手を探そうと頭を悩ませるハイトに対して、さながら神の啓示の如くエルピスは囁く。
「そういえば第二皇女と第三皇女の居場所は知っていますか? 知り合いなのでまだ法国に居るなら助けてあげたいんですが」
「ペトロとフィーユを知ってるっすか!? 自分も二人の居場所が分からなくて困ってたっす。去年くらいから情報封鎖されて外の事は何も分かんないんで困ってたんす」
自体は一変し、可能性によっては想定していた最善のものよりもより良い結果を得られそうだとハイトは笑みを浮かべる。
昨今の情勢にこそ詳しくはないものの、ハイトは法国の神からエルピスの強さについて既に聞き及んでいた。
時代が時代であれば戦神にすらなれる可能性があると言われたエルピス、それを戦力として扱えるのであればもはや割り切っていた姉妹の救出という可能性にも手が届く。
「アウローラが居れば第二皇女のペトロさんの方は何とかわかったかも知れないけれど……確か彼女年齢的に既に学園は卒業してるよね?」
「私が見た書類だと帝国に行ってたはず。エルは帝国でそれっぽい人見た記憶ある?」
「ないけどそうなってくるとちょっと話が噛み合ってきたかも知れないかな」
ハイトが頭の中で姉妹救出の算段を立てる中、また別の視点からエルピスも聖都で何が起きているのか予想を立てていた。
今回自分を聖都に呼びつけたのはゲリシンで間違いなく、創生神が目の前の彼女と引き合わせたことからも揉める事になるだろうとエルピスは考えている。
創生神が何を企んでいるのかは知らないが、おそらくペトロも帝国の第一皇女と共に法国内部に運ばれただろうと予想を立てると、ゆっくりとだが確実に今回の件に必要な人間が集められているのを感じられた。
だとすれば第二皇女であるペトロだけではなくおそらくは──
「フィーユは多分まだ王国に居ると思うっすけど…」
「これだけ計画的に作戦を組んでるのなら、おそらく居ないでしょうね。既に手中に抑えられてると考えた方が自然です」
「そうっすね……」
最初は見捨てるつもりであっても、助けられる可能性が生まれたので有ればそこに欲を生み出してしまうのが人という生き物である。
相手が欲しがるものを自分が持っている時、これ以上簡単な交渉の状況はないだろう。
「ハイトさん、改めてで申し訳ありませんが提案させてください。聖都を案内してもらえませんか? 代わりに二人の皇女の安全確保はこちらで行います、それにクーデターのお手伝いも」
「本当っすか!?」
「法国の神には用事があるので、その前に障害があるのなら退けなければいけませんし、知り合いは助けたいですから」
「助かるっす! そう言う事なら話は早いっす!」
速い話が互いの利害関係の一致である。
エルピスとしてはハイトを同行させる事によって得られるなんらかのメリットを享受するため、ハイトとしてはエルピスという強い武器を手にする事でクーデターを成功させるため。
お互いの利害が一致した状況で結ばれた契約というのは、他の契約に比べて強固なものである。
懐からいくつかの紙を取り出したハイトは、それを無造作に地面の上へと並べ始める。
「それは?」
「出来るだけ集めた情報っす! とりあえず都市の位置から──」
思い立てば吉日、なんて言葉をどこかの誰かが口にしていたのを思い出す。
ハイトが取り出した情報の量は尋常なものではなく、エルピスは沈んでいく太陽とハイトの顔を見合わせながら今日は野宿することを覚悟するのだった。
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