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幼少期:冒険者組合編 ※手直し中
冒険者組合森霊種支部
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エルピス達が懐かしの出会いを果たしていたその時、アウローラ達は既に冒険者組合に到着していた。
王国にある冒険者組合とは外見からしてかなり違うが、森霊種の国の冒険者組合も中身自体は大して変わっていない。
クエストを受けるカウンター、適当に張り出されている討伐依頼、飲んだくれた冒険者の姿、どれをとっても灰猫からすれば慣れ親しんだ冒険者組合のままだ。
「僕がクエストを受けに行ってくるよ。エルピスのこのカードを見せれば受けられるんだろう?」
「ええ、そのはずよ。最高位冒険者のカードって便利ね」
近くの席に座っておくわよ、そういったアウローラに対してうなずくとニルはカウンターへ向かっていく。
エルピスから身分証と同じく渡された最高位冒険者の証だが、あれ一つでも身分証としては十分に機能するほどの効果を持つ。
「僕のカードは他人に使わせたりできないし、最高位はやっぱり特別扱いされてるよね」
「そういえば灰猫はどのランクなの?」
「銅から始まって銀、金、白銀、金剛石、オリハルコン、ヒヒイロカネ、最高位ってなってる中の金剛石だね」
「そんな感じになってたのね、冒険者組合のランク分けって。金剛石ってどうしたらなれるの?」
「特別どうってことはないけど、飛竜くらいは倒せないとダメかな」
灰猫がいった条件を聞いて、アウローラは案外簡単なのではないかと思いかけ、即座に思考を切り替える。
アウローラもおそらくは飛竜程度ならば倒せるが、本来はそう簡単な話でもないのだ。
エルピスの指導と生まれ持ってのものでアウローラは現在戦術級までの魔法を打てるから勝てるが、それ以下の魔法攻撃は飛竜相手にはろくなダメージを当てられない。
その鱗は並みの剣では傷一つつかないし、ブレスなどまともにくらえば対策をしていないと即死する。
エルピスが龍種と遊び感覚で戦っているのを見ているから感覚がくるっているが、龍種はこの世界においてもかなりの上位種。
その幼少期に当たる飛竜は十分な強敵だ。
そんな飛竜に勝てるのだから、金剛石もかなりの強さであることがわかる。
アウローラが認識を改めているとふと風が吹き、いつの間にか近くの席にフェルが腰かけていた。
「エルピスさんはどこに?」
「エルピス様ならエラと二人で宿の確保に行ってるわ」
「なるほど。それにしてもあれほどうまく気配を隠す人、初めてです。やっぱりエルピスさんは面白いですね」
「あら、あなたでもやっぱり分からないのね」
「森霊種が周りに多すぎますね。彼らの影響でかなり精霊が乱れてるのに、エルピスさんがさらに乱してるから何が何だかわかりません。僕でこれですから、多分 森霊種にはエルピスさんの顔すらおぼろげにしかわかってないでしょうね」
「エラがこの国に来ても何も言われていない理由もそれね。これだけ精霊が乱れてると目で見るしか判断する方法がないし、見た目だけで言えばあの子、かなり 森霊種寄りだもの」
妖精神であるエルピスはその場に存在するだけで周囲の精霊を活性化、掌握することができる。
権能を使っていなくともそれは例外ではなく、意識的にではなかろうと周囲の精霊に多大なる影響を及ぼす。
今回もそれが原因で悪魔であるフェルは探知を邪魔され、エラの事を見た人々はエラのことを森霊種だと勘違いを起こしている。
一般の人間に被害はないのかと聞かれれば、精霊が元気になっているおかげで魔法の威力なども上がるのでむしろ利益しかない。
エルピスの意思次第でどうにでもなるが、今のところ誰にも迷惑はかかっていないのだった。
「そこら辺の詳しい事情はまた今度聞くとして、何のクエスト受けるの? あの子なんか奥の方に連れてかれていたけど」
「また面倒ごとはいやだねぇ。迷宮攻略はあと半年はいいよ」
「どうやら魔物討伐のようですね、いま話が終わったようです。いくつか紙を持ってこっちにきてますし」
「よくわかるわね、もしかして透視でもできるの?」
「厳密には違いますが、超能力の類は一通り使えますよ、たぶんエルピス様もエラもそこの悪魔もできますよ」
「なにそれチートじゃないの。人間が不利すぎる気がするのよねこの世界、灰猫もそう思わない?」
「その人間より不利な僕らにそれ言う? まだレベルで能力もらったりできる分強いじゃんか」
人間も灰猫の種族である獣人も、十分この世界において強い種族ではあるが、せいぜいが中堅と言ったところだ。
最上位の悪魔や天使、森霊種と窟暗種のハーフである混霊種、神の称号を持つ神人には勝てるはずもない。
そもそもの基本スペックに差がありすぎるのだ。
セラの言った通り少ししてこちらにやってきたニルは、両手に持ち切れないほどたくさんの依頼を持ってこちらのテーブルに近づいてくる。
それだけで周りの冒険者がザワザワするが、もうエルピスと居てこういう反応は慣れたので誰も何も言わない。
「お帰りニル」
「ただいま。クエストいっぱい受けてきたよ!」
「上機嫌ね? どうしたの?」
「それがね義姉さん、エルピスの事をいっぱい褒められちゃってね、それが嬉しかったんだ」
「義姉さんっていうのは辞めなさいって何度言えば分かるの。それは良かったわね」
なんだかんだ仲のいいセラとニルを見ながら、アウローラはこれがエルピスが好きな女の子像なのかと冷静に分析する。
ニルの行動は全てエルピスが好意的に思う行動だというのは本人から聞いていたので、つまりはいま目の前で満面の笑みを浮かべるニルの姿もエルピスからすれば可愛く映るのだろう。
確かに目の前でにっこりと笑顔を浮かべるニルは可愛いし、エルピスが好意を抱く気持ちもわかる。
ーーというより誰が見てもどう見ても可愛いのだが。
同じ女として敗北感を感じるが、エルピスの好みがその場その場で変わっていくのはアウローラもいろいろと聞いてよく知っている。
焦らなくてもそのうち機会が回ってくると自分に言い聞かせて、机の上に置かれた紙を適当に手に取り内容を見た。
「なになに、『合成獣の討伐』『盗賊討伐』『魔獣の討伐』その他いろいろ。討伐系の依頼ばっかりね」
「うん、倒す方が楽だし採取系は僕あんまり好きじゃないからね」
「私もニルも、育てたり壊したりするのは得意なんだけど見つけるのは苦手なのよね。その点で言えばおそらくフェルの方が上手よ」
「まさか天使であるあなたからそんな事を言われるとはね。確かに採取は得意ですよ、まぁ人並みですが」
「僕的には討伐系の方が良かったし、パーティーのメンツ的にもこういう系がちょうど良いんじゃないかな」
「確かにそうね、稼げるなら手っ取り早くしたいし」
手作業で一つ一つちまちまと物を集めるのは性に合わない人間ばかりが集まっているこのパーティーでは、おそらくまともに作業できるのはエラと灰猫、あとフェルくらいのものだろう。
だがその三人も必要ならばやるが、率先してするほど好きなわけではない。
ならば効率よく稼げて楽に終わる魔物討伐の方が向いている。
「じゃあパーティー二つに割りましょうか、人数も多いし」
「なら弱い組と強い組で分けようよ。下手に混ぜて足引っ張っても悪いし」
「灰猫がそう言うなら、私と灰猫にエラで行く?」
「それでも私達的には構いませんが、もし何かあったときように誰か一人強いのが居た方が良いのでは?」
「なら僕が行きますよ。一応これでも悪魔なのでサポートは得意ですし」
弱い者と強い者で別れろと言われたら、少しくらいは不満が出てもおかしくないと思ったが、特に誰も文句を言わずにスムーズに物事は進んでいく。
冒険者にとって最も必要とされる、自己の実力を客観的に判断すると言うことが全員できているのはこのパーティーの強みだ。
フェルがサポートとして付いてきてくれるのならば万が一何かがあった場合でもエルピス達が駆けつけてくるまでの時間は確実に稼げると思うので、かなり心強い。
「ならそれで決定ね。エラとエルピス様はたぶんまだ時間もかかるでしょうし、その間にいくつか依頼をこなして来なさいな。私の方もやっておくわ」
「セラとニルは2人で大丈夫なの? 万が一なんかあったときとか」
「私を誰だと思ってるのアウローラ? これでもニルやエルピス様より強いのよ?」
「えっ? 本当に?」
「マジよ。なんなら今度手合わせしてみる?」
「遠慮させてもらうわ、命がいくつあっても足りなそう」
「ふふっ、冗談よ。それじゃあまた後で落ち合いましょう」
「私たちも行きましょうか」
机の上から数枚紙を手に取ったセラは、薄く光ったかと思うと光の粒となってどこかへ消えていく。
先程ここに来た時のフェルと同じ雰囲気を感じることから、おそらくは悪魔や天使特有の移動方なのだろう。
原理自体は分からないが、人間であるアウローラには本来なら理解もできない高度な技が使用されていることだけはなんとなく分かった。
机の上に雑に置かれた紙を腰のポーチに入れて、アウローラも灰猫達を引き連れて目的の場所へと向かうのだった。
王国にある冒険者組合とは外見からしてかなり違うが、森霊種の国の冒険者組合も中身自体は大して変わっていない。
クエストを受けるカウンター、適当に張り出されている討伐依頼、飲んだくれた冒険者の姿、どれをとっても灰猫からすれば慣れ親しんだ冒険者組合のままだ。
「僕がクエストを受けに行ってくるよ。エルピスのこのカードを見せれば受けられるんだろう?」
「ええ、そのはずよ。最高位冒険者のカードって便利ね」
近くの席に座っておくわよ、そういったアウローラに対してうなずくとニルはカウンターへ向かっていく。
エルピスから身分証と同じく渡された最高位冒険者の証だが、あれ一つでも身分証としては十分に機能するほどの効果を持つ。
「僕のカードは他人に使わせたりできないし、最高位はやっぱり特別扱いされてるよね」
「そういえば灰猫はどのランクなの?」
「銅から始まって銀、金、白銀、金剛石、オリハルコン、ヒヒイロカネ、最高位ってなってる中の金剛石だね」
「そんな感じになってたのね、冒険者組合のランク分けって。金剛石ってどうしたらなれるの?」
「特別どうってことはないけど、飛竜くらいは倒せないとダメかな」
灰猫がいった条件を聞いて、アウローラは案外簡単なのではないかと思いかけ、即座に思考を切り替える。
アウローラもおそらくは飛竜程度ならば倒せるが、本来はそう簡単な話でもないのだ。
エルピスの指導と生まれ持ってのものでアウローラは現在戦術級までの魔法を打てるから勝てるが、それ以下の魔法攻撃は飛竜相手にはろくなダメージを当てられない。
その鱗は並みの剣では傷一つつかないし、ブレスなどまともにくらえば対策をしていないと即死する。
エルピスが龍種と遊び感覚で戦っているのを見ているから感覚がくるっているが、龍種はこの世界においてもかなりの上位種。
その幼少期に当たる飛竜は十分な強敵だ。
そんな飛竜に勝てるのだから、金剛石もかなりの強さであることがわかる。
アウローラが認識を改めているとふと風が吹き、いつの間にか近くの席にフェルが腰かけていた。
「エルピスさんはどこに?」
「エルピス様ならエラと二人で宿の確保に行ってるわ」
「なるほど。それにしてもあれほどうまく気配を隠す人、初めてです。やっぱりエルピスさんは面白いですね」
「あら、あなたでもやっぱり分からないのね」
「森霊種が周りに多すぎますね。彼らの影響でかなり精霊が乱れてるのに、エルピスさんがさらに乱してるから何が何だかわかりません。僕でこれですから、多分 森霊種にはエルピスさんの顔すらおぼろげにしかわかってないでしょうね」
「エラがこの国に来ても何も言われていない理由もそれね。これだけ精霊が乱れてると目で見るしか判断する方法がないし、見た目だけで言えばあの子、かなり 森霊種寄りだもの」
妖精神であるエルピスはその場に存在するだけで周囲の精霊を活性化、掌握することができる。
権能を使っていなくともそれは例外ではなく、意識的にではなかろうと周囲の精霊に多大なる影響を及ぼす。
今回もそれが原因で悪魔であるフェルは探知を邪魔され、エラの事を見た人々はエラのことを森霊種だと勘違いを起こしている。
一般の人間に被害はないのかと聞かれれば、精霊が元気になっているおかげで魔法の威力なども上がるのでむしろ利益しかない。
エルピスの意思次第でどうにでもなるが、今のところ誰にも迷惑はかかっていないのだった。
「そこら辺の詳しい事情はまた今度聞くとして、何のクエスト受けるの? あの子なんか奥の方に連れてかれていたけど」
「また面倒ごとはいやだねぇ。迷宮攻略はあと半年はいいよ」
「どうやら魔物討伐のようですね、いま話が終わったようです。いくつか紙を持ってこっちにきてますし」
「よくわかるわね、もしかして透視でもできるの?」
「厳密には違いますが、超能力の類は一通り使えますよ、たぶんエルピス様もエラもそこの悪魔もできますよ」
「なにそれチートじゃないの。人間が不利すぎる気がするのよねこの世界、灰猫もそう思わない?」
「その人間より不利な僕らにそれ言う? まだレベルで能力もらったりできる分強いじゃんか」
人間も灰猫の種族である獣人も、十分この世界において強い種族ではあるが、せいぜいが中堅と言ったところだ。
最上位の悪魔や天使、森霊種と窟暗種のハーフである混霊種、神の称号を持つ神人には勝てるはずもない。
そもそもの基本スペックに差がありすぎるのだ。
セラの言った通り少ししてこちらにやってきたニルは、両手に持ち切れないほどたくさんの依頼を持ってこちらのテーブルに近づいてくる。
それだけで周りの冒険者がザワザワするが、もうエルピスと居てこういう反応は慣れたので誰も何も言わない。
「お帰りニル」
「ただいま。クエストいっぱい受けてきたよ!」
「上機嫌ね? どうしたの?」
「それがね義姉さん、エルピスの事をいっぱい褒められちゃってね、それが嬉しかったんだ」
「義姉さんっていうのは辞めなさいって何度言えば分かるの。それは良かったわね」
なんだかんだ仲のいいセラとニルを見ながら、アウローラはこれがエルピスが好きな女の子像なのかと冷静に分析する。
ニルの行動は全てエルピスが好意的に思う行動だというのは本人から聞いていたので、つまりはいま目の前で満面の笑みを浮かべるニルの姿もエルピスからすれば可愛く映るのだろう。
確かに目の前でにっこりと笑顔を浮かべるニルは可愛いし、エルピスが好意を抱く気持ちもわかる。
ーーというより誰が見てもどう見ても可愛いのだが。
同じ女として敗北感を感じるが、エルピスの好みがその場その場で変わっていくのはアウローラもいろいろと聞いてよく知っている。
焦らなくてもそのうち機会が回ってくると自分に言い聞かせて、机の上に置かれた紙を適当に手に取り内容を見た。
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だがその三人も必要ならばやるが、率先してするほど好きなわけではない。
ならば効率よく稼げて楽に終わる魔物討伐の方が向いている。
「じゃあパーティー二つに割りましょうか、人数も多いし」
「なら弱い組と強い組で分けようよ。下手に混ぜて足引っ張っても悪いし」
「灰猫がそう言うなら、私と灰猫にエラで行く?」
「それでも私達的には構いませんが、もし何かあったときように誰か一人強いのが居た方が良いのでは?」
「なら僕が行きますよ。一応これでも悪魔なのでサポートは得意ですし」
弱い者と強い者で別れろと言われたら、少しくらいは不満が出てもおかしくないと思ったが、特に誰も文句を言わずにスムーズに物事は進んでいく。
冒険者にとって最も必要とされる、自己の実力を客観的に判断すると言うことが全員できているのはこのパーティーの強みだ。
フェルがサポートとして付いてきてくれるのならば万が一何かがあった場合でもエルピス達が駆けつけてくるまでの時間は確実に稼げると思うので、かなり心強い。
「ならそれで決定ね。エラとエルピス様はたぶんまだ時間もかかるでしょうし、その間にいくつか依頼をこなして来なさいな。私の方もやっておくわ」
「セラとニルは2人で大丈夫なの? 万が一なんかあったときとか」
「私を誰だと思ってるのアウローラ? これでもニルやエルピス様より強いのよ?」
「えっ? 本当に?」
「マジよ。なんなら今度手合わせしてみる?」
「遠慮させてもらうわ、命がいくつあっても足りなそう」
「ふふっ、冗談よ。それじゃあまた後で落ち合いましょう」
「私たちも行きましょうか」
机の上から数枚紙を手に取ったセラは、薄く光ったかと思うと光の粒となってどこかへ消えていく。
先程ここに来た時のフェルと同じ雰囲気を感じることから、おそらくは悪魔や天使特有の移動方なのだろう。
原理自体は分からないが、人間であるアウローラには本来なら理解もできない高度な技が使用されていることだけはなんとなく分かった。
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