かみのこはる〜裏参道のモノノ怪物語

 春夫がまだ小さい頃。近所の神社でいつものように遊んでいた。同級生でもあり、神社の娘でもある希子は春夫を見つけて声をかける。

「おぉい!はるくん何してるのぉ?」
「ん?のこちゃん。今ね、池の中に何か見えて……」
「鯉じゃない?」
「いや、何か光った気がしたんだ」
「あっ!お父さんが言ってた。この池は参拝客がお金を投げ込むんだって。それじゃない?」

 神社の裏手にある池は鯉にちなんで「恋人が結ばれる池」として当時はちまたで有名だった。休日ともなると参拝客が列をなしている時もあった。平日のその日は人気もなく、セミの声だけが聞こえる。
 学校はちょうど夏休みだった。春夫は宿題を終わらせ、神社の境内で自由研究にとカブトムシを探しに来ていた。

「ほら、そこ。さっき光った様に見えたんだけど」
「どこ?のこには見えないよ。ねぇ、本当に――」
「お……おい……お前は誰だっ!!!」
「え?急に何!?はるくん!どうしたの!!ねぇ!」

 それは太陽の光が反射する池の湖面に立っていた。この時、それは春夫にしか見えていない。

『……お主、わしの姿が見えたのかぇ?』

 それは真っ白な装束を着て、髪も真っ白、目は赤く、長い舌が特徴的だった。
 春夫は驚きのあまり声が出ない。尻もちを着き震え始める。何も見えていない希子は春夫と池を交互に見るが何が起きているのかわからない。

「ちょ!はるくん!しっかりして!!ねぇ!」

 その時、突然春夫の足が引っ張られ池の方へと引きずられる――

2023.7.20〜
24h.ポイント 0pt
0
小説 192,695 位 / 192,695件 児童書・童話 3,604 位 / 3,604件

あなたにおすすめの小説

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。童話パロディ短編集

ご当地アイドルなんか、余裕だし!

りりぃこ
児童書・童話
有名プロデューサーによるアイドルオーディションを楽しみにしていた小学六年生の牧村コノハ。しかし田舎への引っ越しにより、そのオーディションは断念するしか無かった。 しかし、引っ越し先で、ボーイッシュな同級生の爽香から、ご当地アイドルのオーディションに誘われる。 爽香と、上がり症の中学生・小波と共にオーディションに合格したコノハは、ご当地アイドルとして、当初の予定とは少し違う、地元密着型のご当地アイドルとしての道を進んでいくことになる。 表紙 イラストACより

【完結】僕らのミステリー研究会

SATO SATO
児童書・童話
主人公の「僕」は、何も取り柄のない小学校三年生。 何をやっても、真ん中かそれより下。 そんな僕がひょんなことから出会ったのは、我が小学校の部活、ミステリー研究会。 ホントだったら、サッカー部に入って、人気者に大変身!ともくろんでいたのに。 なぜかミステリー研究会に入ることになっていて? そこで出会ったのは、部長のゆみりと親友となった博人。 三人で、ミステリー研究会としての活動を始動して行く。そして僕は、大きな謎へと辿り着く。

ひみつを食べる子ども・チャック

山口かずなり
児童書・童話
チャックくんは、ひみつが だいすきな ぽっちゃりとした子ども きょうも おとなたちのひみつを りようして やりたいほうだい だけど、ちょうしにのってると  おとなに こらしめられるかも… さぁ チャックくんの運命は いかに! ー (不幸でしあわせな子どもたちシリーズでは、他の子どもたちのストーリーが楽しめます。 短編集なので気軽にお読みください) 下記は物語を読み終わってから、お読みください。 ↓ 彼のラストは、読者さまの読み方次第で変化します。 あなたの読んだチャックは、しあわせでしたか? それとも不幸? 本当のあなたに会えるかもしれませんね。

1,ストックホルムのイルカさん 

egakukokoro
児童書・童話
長編物語 序章 音楽会が開かれる教会にいろいろな生き物が集まりそれぞれの物語がはじまります。

神奈町の怪奇話

榊原夢
児童書・童話
神奈町に住む小学5年生の女の子、吉野良子(よしの りょうこ) 良子はお化けが見える。 見えるが、別に仲良くなろうとも嫌っているとも違い、とくに関わりなく過ごしてきた。 しかし最近、神奈町に変な事が起き始める。 『児童無気力症候群』 小学生を中心にある日突然、無気力になってしまうのだ。 ちょうどこの病が流行り出した時に転校してきた立川達也(たちかわ たつや)いわく、妖怪の仕業だとか…。 お化けが見えるからと、良子はこの事件に巻き込まれていく。

母は強し! 三途の河原で、鬼と戦うのだ

ウサギテイマーTK
児童書・童話
間違ってあの世に行きかけた、母小雪の無双話。

こんこん神様の預かりもの

すだもみぢ
児童書・童話
10歳の雄介はお祭り帰りにスーパーボールをぶつけてお社を壊してしまった。 それが縁でそこに住んでいた妖怪の『こんこん』と知り合う。 こんこんはもう少しで付喪神になることができる妖怪だったはずだが、何かのきっかけで自分がなんの妖怪だったかも思いだせなくなっていた。 雄介のせいで家もなくしてしまったこんこんは、そのまま雄介が預かることになる。 しかしこんこん達、妖怪たちのことは「誰にも知られてはいけない」らしい。 彼らを信じなかったり疎んじたりする人に存在を知られると、力が弱くなってしまうから。 雄介はその約束を守って、こんこんの本体を見つけることができるのだろうか。 人の住む世界と人ならざる『物』の住む世界。 妖怪や神様と友達になる、少年のひと夏のお話。 ※不定期更新