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ホンモノと複製
第54話・ノストラザマスの大予言
しおりを挟む―――ネプチューン神殿―――
僕達は今、魔王城にいた。ここは、ネプチューン神の作ったの元海底神殿である。
「エルか?そっちはどうだ?そう、そうなんだ。じゃぁ、エルはプリンを連れてコリータへ行けるか。お菊は魔王城に来てくれる?うん、そう。よろしく。あ、コリータまでは転移魔陣を……」
ネプチューンがしつこく聞くので、お菊ことマザードラゴンを魔王城に呼んだ。
「マリン?あぁ、今大丈夫?エルとプリンがね。うん、そう。で、リンとアカシアをサウスタンへ向かわせてくれる?転移魔陣でエルたちが……なんだって!わかった。お菊が到着次第向かう。とゼシカをウェスタンに。うん。あ、あと、念のためにドムドさんに……」
「……のぉ、アリスよ。あの御人は一人言を言う病なのか?」
「ズズズ……うむ、あやつは痛いやつなのじゃ」
聞こえてるぞ。
「レディはここでお菊が来るのを迎えてくれるかい?カエデは一緒にウェスタン城に行ってほしい」
「ウェスタンに?」
「ふぅ。イスタン帝国がまた挙兵したらしい。しかも魔物や亜人も含む編成だ。で、このタイミングでウェスタン国王が倒れた」
「またやっかいなタイミングじゃの」
「僕とアリスとカエデはお菊が着き次第、ウェスタンに向かう。向こうでゼシカ達と合流する予定だ。カエデにイスタン帝国の偵察をお願いしたい」
「旦那様、わしも加勢しなくても良いのか?」
「いや、レディはここにいてくれ。と、出来ればこの城にサキュバス達を呼んで1度掃除しようか。ははは……」
「わかった。ネプチューン神様は天界へ帰られるのか?」
「どうしようかのぉ。今さら帰っても、居場所がないかもしれんしのぉ、それにマザーを置いては帰れないのぉ」
優柔不断!?
「そういえば、あの大岩戸は何のために作られたんだ?」
「おぉ、そこに部屋があるじゃろ?そこの部屋はわしとマザーの寝室でな。寝室から西の洞窟までの散歩用の地下道じゃ。さしずめ、大岩戸は裏口じゃな」
「へ、へぇ……そうなんだ……」
『あんなに頑張って開けて来たのに裏口なんだ』レディも僕と同じ表情を浮かべてる。
「お菊が来るまで少し休むよ。夜にはウェスタンに出発する」
「わかり申した。夕食を何か調達しておこう」
「レディありがとう。よろしくね」
僕は客間のちょっとホコリっぽいベッド横になる。すぐに眠気に襲われ意識が無くなった……。
―――異次元空間アリスの部屋―――
「うぅ……あれ?夢?ここはアリスの部屋か?」
「よぅきたな。そこの若いの」
毎回、誰設定なの。
「今回のプリンの件、世話になった。かたじけない」
珍しくアリスにお礼を言われた。そしてきりんがいつもの様にお茶を淹れてくれる。
「なぁ、アリス。神の子を6人集めると魔法結界が出来るんだよね?その……世界が滅ぶ前にとかって言ってた」
「うむ。ハルトがガッコウで死んだ後、数年もしないうちに世界は滅んだ。未曾有の危機は数百年、数千年単位でやってくるのじゃ。それを防ぐためにハルトをこの世界に復活させた。経本の最後のページにその予言はある……」
「あぁ、あの絵本の」
「うむ。よく聞けよ――」
そう言うとアリスは経典の最後のページを開く。
『1999の年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる。アンコロモチの大王を復活させるために』
「ノストラザマスの大予言じゃねぇか。もう大分、過ぎてるだろうよ」
「そうじゃろうか?わしの予想では隕石が降って……」
「ズズズ……」
お茶をすするきりんが微笑んでる姿を見ながら意識が遠のいていった。
―――ネプチューン神殿客間―――
「うぅ……」
なぜか寝起きが悪い。ノストラザマスの夢を見ていたような錯覚がする。
「……旦那様、旦那様。もうすぐ到着します。魔物はいないのでございますか?」
「あぁ、お菊か。お疲れ様、魔物は大丈夫だ。2階の王広間に来てくれる?」
「わかりました」
外から羽ばたく音がする。さて、ネプチューンに挨拶してから行くか。
僕は客間を出て、王広間へと向かう。
「ぎゃははは!ネプチン!ネプチン!」
「アリス様!ネプチンは失礼かと!ぷっ!」
「もう何でも良いわ!ガッハッハッハ!」
お花畑でピクニックしてる風景が見える……。
「ネプチンって何だよ……皆、お菊が来たよ」
「旦那様、お待たせしました。妾に会わせたい人とは!?え?まさか……ネプチンっ!?」
「いや、あんたもネプチン呼びかいっ!」
「マザーか?本当にマザーか?」
「はい……何とご無沙汰か!生きてまた会えるとは……!」
泣き出すお菊を抱きしめるネプチン。
「実は呪いを受けた後、我を忘れサウス山にて死ぬ間際でした。それをハルト殿に救われ……」
「そうじゃったのか!しかし先程、ハルト殿を旦那様と言ってなかったか?!」
「あれは冗談です」
「それならいい」
信じるの早いな。
「感動の再会の所を悪いんだけど、もう1つあってね」
「何じゃ?まだ何かあるのか?」
「ネプチンとお菊はその昔、夫婦?だったんだよね?たぶんだけど、その間に産まれた子供は神族系人魚族と竜族のハーフ。まぁ、数百年だからはっきりした証拠は無いけど……たぶんレディとカエデは子孫だよ」
『なんじゃとっ!!』
3人共しゃべり方が同じだし。カエデは何となくわかっていたか。そんなに驚かない。
「ついでにレディと竜族のリンは親戚かもしれないね」
「なんじゃとっ!!」
「……ザザ……ハルト殿、ハルト殿。ゼシカさんが今、転移魔陣で出立されました。エルさんも戻られてプリンさんもご無事です」
「マリン、わかった。転移魔陣の魔力補給を頼む。ウェスタン国王を転移させる」
「わかりました。用意しておきます。では」
「それでは行ってくるよ。レディ、お菊、ここは頼んだ。攻めてくる者もいないだろうけど」
「旦那様、気をつけての。私のお腹の子も無事を祈っておる」
「そなた!身ごもって……!?」
「めでたいのぉ。婚姻の準備を……」
「行ってきまーす」
僕とアリスとカエデは、きりんに乗ってネプチン城を後にした。
ウェスタン王国に向かう最中にも日は暮れ、夜空に月が昇る。
「……月子よ」
「どうした?アリス」
空に浮かぶ月を見てアリスがつぶやく。
「……いや、何でもない。さて!いっちょやったるか!」
「おぉ!」
こうして僕達はまた新たな試練に立ち向かうのであった。
―第4章完―
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